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燃料デブリ「24mSv/h」→「0.2mSv/h」の謎

11月5日、東京電力は、福島第一原発2号機から試験的に取り出したデブリは「0.2mSv/h」だったと発表した。11月5日朝8時44分から11時半にかけてエンクロージャー越しに約1メートル離れた距離に積算線量計を置き、2時間程度測定し、「燃料デブリ」から20cmの距離に換算した結果だという。

放射線防護の観点から「24mSv/h」超なら原子炉格納容器に戻すとしていたが、それより桁違いに低く、肩透かしとも言えるレベルだった。3g以下を取り出すとしていたが、重量の測定はこれからだ。


「燃料デブリではないものを拾った可能性は?」

おしどりマコ記者が、約1m離れて20cmに換算したのだから「実測値はもっと低い」と確認した上で、どう測定したのかを質問。広報(高橋氏)は「周りからの線量を拾わない形で(=コリメートして)測定した」が詳細は確認するとした。

さらに「なんらかの瓦礫、燃料デブリではないものを拾った可能性は?」と問われても、「以前の調査で、燃料集合体の一部(上部タイプレート)が確認されており、燃料と炉内構造物が溶けたものが堆積していると考えている」と回答した。

燃料成分を含むと推定

タイプレート」は燃料棒を束ねる部品(下図)で、「以前の調査」とは2018年の調査。

2018年2月1日「福島第一原子力発電所2号機 原子炉格納容器内部調査 実施結果」P7

10月31日の中長期ロードマップ会見の資料では、「ペデスタル床面の堆積物は燃料成分を含むと推定している」とのことで、まだ「推定」に過ぎない。

2024年10月31日「2号機試験的取り出しにて採取した燃料デブリの分析」P2

ちなみに、2018年の2号機 原子炉格納容器内部調査では、今回デブリが採取されたペデスタル(原子炉の土台)内部は7Gy/h(7Sv/h)。ペデスタル外はなぜか10倍高い70Gy/h(70Sv/h)。いずれにしても今回の「0.2mSv/h」は桁違いに低い。

2018年2月1日「福島第一原子力発電所2号機 原子炉格納容器内部調査 実施結果」P8
CDRレールとは制御棒駆動機構を交換するためのレールで、その出入り口「X6ペネ」が、今回の燃料デブリ取り出しの出入り口に使われている。

今後、輸送用ボックス(アルミ製)に収納し、DPTEコンテナ(ポリエチレン製)でグローブボックスまで運び、「輸送物の表面線量・汚染密度等を測定し、法令基準以下であること確認」(資料P3)した後、A型輸送容器に入れて、分析のために1F構外に持ち出される。

4機関で分析、とりまとめに1年

日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗研究所に持ち込まれた後、外観、重量、線量を測定の後、以下の4機関で分析を行う(資料P5)。

  • JAEA大洗研究所(茨城県大洗町)

  • JAEA原子力科学研究所(茨城県東海村)

  • 日本核燃料開発 株式会社(NFD)(茨城県大洗町)

  • MHI原子力研究開 発株式会社(NDC) (茨城県東海村)

分析結果の取りまとめは、JAEA大洗研究所で数か月程度、その他の施設で約1年程度かかる予定だ(下記ハイライト部分)。数グラムの分析に1年!

2024年10月31日「2号機試験的取り出しにて採取した燃料デブリの分析」P2

分析では「未臨界性」(臨界が起きる可能性の有無など)の確認も行われる。

会見最後に「分析の結果、(今回採集したものが)燃料デブリではなくコンクリート瓦礫だったということがわかる可能性もあるか」「燃料がさほどくっついていない瓦礫だったとなったら、それはそれで公表されるのか」と念を押した。「可能性についてはなんともいえない。公表させていただく。どういうものかまずは分析させてください」というのが現時点での広報回答だ。

【タイトル写真】
2024年11月6日東電会見にて筆者撮影

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