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燃料デブリ試験的取り出し3g:線量測定の位置、方法が説明と違う。

トラブル続きの福島第一原発2号機燃料デブリの試験的取り出し(既報)について、東京電力は10月31日の会見で、その後の進捗を説明した。

「10月24日にカメラ交換作業が完了。28日に試験的取り出し作業を再開、30日に燃料デブリを把持。今後は、把持した燃料デブリをエンクロージャー内へ引き戻し、燃料デブリの線量を測定する予定です」と。


記者には、デブリを掴んだ記録が動画でUSBで提供された。

原子炉内部に挿入されるテレスコ装置に取り付けられた4台のカメラによる動画(東京電力ホールディングス株式会社)より(二つの黄色の円を筆者加筆)。小円中央に5mmのグリッパに挟まれたデブリが映っている。大円中央に映る異質なモノの下から取り出された。カメラ故障を起こす前に、どれを取り出すか目星をつけるためにデブリを掴んだことが分かっており、その際に目印を置いたのかと10月31日会見で尋ねた。東電は否定したが、どうしても異質なモノがここにあるように見えてしまう。

7月「エンクロ内で20cm離れたところから測定」

7月25日の中長期ロードマップ会見では、デブリから20センチ(cm)離れたところで測定を行ない、24mSv/h以下なら取り出すが、24mSv/h超なら原子炉に戻す旨を説明していた(既報)。(さらに線量計はエンクロージャー内にあると筆者はぶら下がり取材で確認した。)

10月会見中「エンクロ外、1mから測定、20cm換算」に変化

10月31日の会見の中でもそう答え始め、「ちょっとすみません」と説明が変わった。その箇所(動画1時間52分目あたり)の概略を書き起こしておく。

2024 年10月31日東電会見動画(いずれリンク切れする)より。1時間52分目あたりで
「線量計につきましては、エンクロージャー内の上部に設置してございます」と
回答中の広報担当(右から2人目)。直後に「ちょっとすみません」と訂正した。

朝日新聞福地記者:先程来、20cmの距離でエンクロージャー内で線量率を測るということなんですけど、これは天井付近とか側面とか、どういう場所に線量計を置いて、そこから20cmの距離まで、エンクロージャーの中でテレスコを引き戻したときにちょうど20cmの位置に線量計があるということなんですか?
東電広報(桑島氏):線量計につきましては、エンクロージャー内部の上部に設置してございます。(隣から資料を差し出され)・・・あ、ごめん、すみません。少々お待ちください・・・・すみません。本日お配りしている資料の7ページ目をご覧いただきたいと思います・・・・。はい。ここにですね、上の左の図に「側面ハッチ」とある、ここの右に少し縦長になっているところがあると思いますが、ここに線量計を設置するというものでございます。

記者:そうすると、エンクロージャーの外にあるんですかね。線量計って。
東電広報エンクロの外になりますね。外に置いて測定するというものです。

記者:デブリから線量計の間に鉄板(エンクロージャーの天井)があるが、遮蔽されたりというのは特にないんですかね。
広報(桑島氏):はい、エンクロージャーの中の鉄板ですけど、かなり薄いものです。ただ、遮蔽効果はそれなりに少しはありますから、それを加味した上で評価するといったものでございます。

記者:そうすると20cmの距離ってもしかして、鉄板からではないですか?デブリから20でいいですか?
東電広報:実際ですね、この、あの線量計を置く位置というのは1mぐらい離れておりますけれども、20cm離れた線量に換算をするといった操作がございますので、いままで20cm線量等量と言わせていただいております。(その後の会見中に「20センチ線量等量」という表現は間違えだと訂正した)。

記者:そうすると、週明けに測るという話だったが、エンクロージャーの中にテレスコが完全に戻った時には自動的に線量計そのものの値は出てくると思うが、週明けとおっしゃったので、スイッチをいれなければ線量計の記録はわからないのか?
東電広報:線量計につきましては現在、設置されているというものではございませんで、線量を測るときに持って行って、そこに設置するといったもの。
(略)すぐ針が動いてというのをイメージされているかもしれないですが、ここに置く線量計は積算型の線量計ですので、何時間か置いて1時間あたりの線量を見るといったものでございます。

記者:何時間置く?
東電広報:今の計画ですと2時間程度でございます。

記者:リアルタイムでそれは遠隔操作室で拾えるのか、それとも2時間経った時にもう一回線量計を外して確認する必要があるのか。
東電広報:リアルタイムでわかるものではございませんで、また、時間が経ったら人が持ってきてチェックする。

記者:線量計を現地から持ってきて建屋外に持ち出すということか。
東電広報:回収して確認するというもの。

記者:設置の日があって回収の日があってということになりますか?
東電広報:そこはやってみなければわからないところもございますので、基本的に2時間ぐらい置きますので、まぁあの、その日のうちに可能な場合もあると考えてございます。

東電会見動画(1時間52分目あたりから筆者音声起こし)
線量計を置く場所を聞かれて東電広報が「資料の7ページ目」と説明した図。「『側面ハッチ』とある、ここの右に少し縦長になっているところがあると思いますが、ここに線量計を設置する」(広報)。

余談:会見時間が約3時間に及ぶわけ

余談だが、24mSv/hを境にデブリを取り出すか戻すかという重要な判断が介在する作業だが、エンクロ外でデブリから1mぐらい離れた場所から2時間程度測って、20cmの線量率を換算するという数秒もかからない説明を聞き出すために、記者がこれだけ質問をし続けなければならない。

資料には「エンクロ内で線量計測」、絵では外

ちなみに、7月25日資料「2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の準備状況」p3でも、10月31日資料「2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の状況」P3でも同じ図、右側に「エンクロージャ内で構内輸送容器へ線量計測後収納」とある。
時系列に直せば「エンクロージャ内で線量計測後、構内輸送容器へ収納」と読める。左側の絵では確かに線量計が外に描いてある

2024年10月31日 2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の状況 P3の左下

線量計測後収納ではないのか?

この質疑の後、共同通信記者が「エンクロ内で測定だと言っていたではないか」と抗議すると「文字の方は間違っていた」と訂正。筆者も抗議した。

この10月31日会見時には、テレスコ装置はデブリを掴んだまま水平を保っていた。週明けに測定に入るとの説明があった。ところが昨日(週明け前の11月2日に)以下のニュースが流れた。

「燃料デブリを掴んだ装置は(略)2日の午前10時2分に、格納容器の外にある密閉された箱へ移し終えた」(福島中央テレビ)とある。

【お詫びして訂正(11月5日19:20)】

上に引用した「密閉された箱」とは、「エンクロージャ」のことであり、先日、私が誤解したように「運搬用ボックス」ではありませんでした。

そして当初予定された順番通り、週明けの今日、測定が行われた、換算の結果、今回のデブリは、0.12mSv/hだったと今日11月5日の東電会見で口頭で発表された。運搬用ボックスへ入れるのはこれからでした。【お詫びして訂正ここまで】

先程の質疑(書き起こし)のように、エンクロージャー越しの放射線測定では、「遮蔽効果はそれなりに少しはあり」「1mぐらい」離れたところで測定して換算すると、東電広報は、廃炉の最高責任者の隣で回答していた。

〈削除〉これでは測定は、少なくともエンクロージャーの天井運搬用ボックス(アルミ製だと東電は説明)越し(図から判断すればもっと遮蔽物がありそう)であり、そこからの換算値だということになる。〈削除終わり〉作業員の被ばくを考慮して「24mSv/h未満」なら分析に回すということだったが、それがドンブリ勘定に思えてきた。

2024年10月31日 2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の状況 P3の左上

作業の順番について〈整理して訂正11月5日〉

7月25日資料「2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の準備状況」で見ると、エンクロージャー内の線量計にて(図では外の線量計で)測定してから、「運搬用ボックスに燃料デブリを収納」と書いてある。


7月25日資料「2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の準備状況」より

【タイトル画像】

東京電力 2024年10月31日資料「2号機 PCV内部調査・試験的取り出し作業の状況 」P3


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