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原発事故で避難せず「屋内退避」。その運用を考えるチーム会合はじまり。

4月22日、原子力規制委員会の「屋内退避の運用に関する検討チーム」第1回開催。議題は3つだ。
 議題1 原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームについて
 議題2 屋内退避について
 議題3 検討の進め方について


原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム

資料1には構成メンバーあり。

「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」2024年4月22日会合、筆者撮影

屋内退避について

資料2屋内退避については、検討の土台を共有するもの。規制庁が説明した。
以下は要点未満(私の感想まじり)。

  • 原子力災害対策の目的は、「放射線の“重篤な確定的影響を回避又は最小化”するためにあり、“確率的影響のリスクを低減”するための防護措置」だ。

  • 確率的影響は「しきい線量がなく、線量の増加に伴って影響の発生確率が増大すると仮定されている」は原子力災害対策の目的からは外れている。


検討チーム 資料2「屋内退避について」P5
  • (感想)上図右のように、確率的影響は、「しきい線量がなく、線量の増加に伴って影響の発生確率が増大すると仮定(以下の図の点線)」するにとどまっている。先日、地味な取材ノート「累積100mSv以下の固形がん死亡リスク」で紹介した国際原子力労働者研究(INWORKS)のように、累積100mSv以下でも長期的な低線量被ばくで固形がん死亡リスクが増加することを仮定ではなく証明した疫学調査結果は未反映(上図右には、少なくとも、よくセットで書き込まれる「100mSv」という数字が入っていない)。

  • (感想)原発の過酷事故が起きて「緊急事態宣言」が出たあとの人々の当面の行動は、政府から出る「避難」か「屋内退避」の指示に従うか、従わないかのどちらかだ(感想終わり)。ざっくり言えばPAZ(5キロ圏内)からは避難、UPZ(30キロ圏内)は屋内退避するというのが、原子力規制委員会の原子力防災対策指針の考え方だ。

検討チーム 資料2「屋内退避について」P6

検討チームの論点及びスケジュール

今回の検討チームの役割は、「避難」ができるかどうかについて注目することではない。検討チームの論点及びスケジュールに原子力規制庁が示し、出席メンバーからも異論がでなかったように、基本的には「避難」や「屋内退避」の指示を国が出す時の指示の範囲や期間、さらに、屋内退避を指示した後の「解除」、「避難」、「一時移転」に切替える時に考慮すべきことは何かだ。

検討チーム 資料2「屋内退避について」P 10

屋内退避し、その建物が健全であれば、木造家屋で25%の被ばく低減効果、コンクリート建屋で50%の被ばく低減効果があるとしている。ただし、この過酷事故シナリオは、緊急事態宣言から12時間で環境中に放射性物質(Cs-137)が始まるが、福島第一原発事故の100分の1程度である「100TBq」相当にとどまるというもの。

検討チーム 資料2「屋内退避について」P 12

(チーム会合の後、ぶら下がり取材で、たとえば、緊急事態宣言から放射性物質放出まで12時間あるなら、予防原則で、今、逃げておこうと思う人がいることについてはどう考えるのかと尋ねたが、今回、そこは考えない様子)

「屋内退避を実施する際の留意点」として

「屋内退避を実施する際の留意点」としては(「屋内退避について」P 20)、

  1. 屋内退避を実施するにあたっては、事前の十分な準備が求められる。

  2. 屋内退避は、水・食糧や生活用品の備蓄が必要であることから、長期間の継続は不可能である。

  3. また、屋内退避として使用する建物の健全性が維持されている必要がある。

  4. 加えて、電気、ガス等のライフラインが維持されていないと、屋内退避の継続は困難である。

が挙げられた。ところが、内閣府防災から「2点目は備蓄がなければ水は取りに行くとか供給することもある、4点目は、ライフラインの一部、たとえばガスが使えなくても(略)」と質問が出たのには驚いた。

そのほかの気になった質疑

日本原子力研究開発機構の丸山結氏の「建物健全性が維持されているのは、住民が判断するのか。住民判断は難しいのではないか。自治体の防災対応者が巡視して、健全性が維持されていないと判断するのかどうか?」との質問には、規制庁放射線防護企画課湯澤正治課長補佐が、自治体にそのキャパシティはないだろうから「住民が判断」すると回答。

敦賀市の危機管理対策課長からは、「(甲状腺がん対策用の)安定ヨウ素剤の配布。確実な配布、服用について検討に加えていただきたい」と意見が上がった。規制庁からは、「安定ヨウ素剤は、5キロ圏内は事前配布、30キロ圏内は緊急時に配布という、基本的な考え方は変わらないが、シミュレーションの結果を見てから」だ旨の回答で、あくまで住民や自治体任せであることは変わらなさそうだ。

安定ヨウ素剤が事前配布されていたとしても、住民は常にそれを持ち歩いているわけではないし、原発過酷事故が起きるような自然災害(複合災害)が起きて、ただでさえ多用で人数も多くない自治体の職員がわざわざ、安定ヨウ素剤を配布しにいくという非現実性が、原子力規制庁には伝わっていないように思えた。

「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」手前左から
敦賀市の危機管理対策課長、宮城県の原子力安全対策課長

事態の進展の3ケースが想定されているが、どれも新規制基準に基づく重大事故対策が「奏功した」ことを前提にしたケースだ。

ケース1: 新規制基準に基づく重大事故等対策として炉心損傷防止対策(炉心への注水及び除熱など)が奏功し、著しい炉心損傷が生じないケース
ケース2: 著しい炉心損傷が生じるが、新規制基準に基づく重大事故等対策として格納容器破損防止対策(格納容器内の冷却及び除熱)が奏功し、格納容器が破損せず、格納容器圧力に応じた放射性物質の漏えいが生じるケース
ケース3: 著しい炉心損傷が生じるが、新規制基準に基づく重大事故等対策として格納容器破損防止対策(フィルタベント)が奏功し、格納容器が破損せず、フィルタベントを通じた放射性物質の放出が生じるケース

検討チーム 資料3「検討チームの論点及びスケジュール」P 1

ケース1では放射性物質が放出しない。ケース2ケース3は、放射性物質の放出を想定した被ばく線量を「OSCAAR(Off-Site Consequence Analysis code for Atmospheric Release in Reactor Accident -Site)」を仮想の原子炉をモデルにして、シミュレーションしてみるのだと言う。(個々の原発ではシミュレーションを行わないと、ぶら下がり取材で確認。

  • 日本原子力研究開発機構の高原省五氏は、「運用に関する検討ということで使えるものにするということでは、1Fのときにどう行動していたのか、どういう情報が必要だったか。福島事故について整理していただけるのか」と問い、規制庁側はやると回答。

  • 宮城県の復興・危機管理部 原子力安全対策課長からは、能登半島地震での調査結果について質問。内閣府防災から、4月12日に「志賀地域原子力防災協議会作業部会」が開催され調査資料(令和6年能登半島地震に係る志賀地域における被災状況調査(令和6年4月版))は、内閣府の原子力防災のホームページに掲載してあると回答(丁寧な説明は一切なし)。一例として「孤立地区が14ヶ所あり、家屋が倒壊した事例もある」「志賀地域はこれからまとめていくが、孤立地域の解消方法は検討を進めていく」とした。

以上から取材メモから気になったところのみ、ざっと要点未満。
細部が書きかけだが、今日明日は多忙なので、これを逃すと書けない。
あとで完成させるるもり。
(2024年4月24日、出典とキャプションを追加。細部を数箇所修正。)

【タイトル写真】

2024年4月22日「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」の伴信彦原子力規制委員会委員と杉山智之同委員(筆者撮影)

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