「ない」と言って「あった」行政文書の開示手続を原子力規制庁がエネ庁に「移送」
文中「7月28日」を「8月19日」に訂正してお詫びします(2023.2.7加筆)。
今日ほど絶句してワナワナしたことはない。
<まずはおさらい>
NPO法人原子力資料情報室が開示請求をして「ない」と言われた行政文書が、本当は「ある」と暴露され(既報)、やはり「あった」と昨年12月27日に原子力規制庁(以下、規制庁)が記者会見で発表した。明らかにされたのは、原子力規制委員会が昨年10月5日に資源エネルギー庁(以下、エネ庁)から話を聞く以前に、エネ庁と規制庁職員は最低でも7回の「運転期間制限を電気事業法に移管」する相談を行っていたことだ(2022年12月27日規制庁資料)。
その席で規制庁の黒川総務課長は、面談で使われた資料の全リストを作り、「何が開示できるか、できないかも全部整理」して提供すると約束した。
一部だけ公開?エネ庁からの提供資料は口頭で?
丸1ヶ月以上が過ぎ、2月3日の定例ブリーフィングで説明するとの連絡が前日2日に入った。果たして会見に臨むと、黒川総務課長は「一部を公開する」と説明を開始。7回の面談でエネ庁から提供された資料については、「口頭」だけで説明すると言った。
最も呆れたこと
今日、最も呆れたのは、説明をしているように見せかけて、実は、聞かれない限りは説明を省くという手法で情報を隠蔽している点だ。
昨年8月に運転期間を炉規制法から削る条文案を受け取っていた
資料は出せないが口頭で説明するとした中で最も驚いたのは、昨年8月19日7月28日に、エネ庁が、原発の「運転期間」を原子炉等規制法から削除する条文案を持ってきたという説明だ。そのことは、根掘り葉掘り質問する中で、やっとわかった。質問する側に聞き出す力と辛抱強さがなければ、わからない説明だった。それは隠蔽だ。
昨年12月27日の「運転期間の見直しに係る資源エネルギー庁とのやり取りに関する経緯について」では、「原子力発電所の運転期間の見直しに関して、経済産業省として原子炉等規制法を含む束ね法案の検討を開始した旨が伝達」されたと説明していた。
しかし、本当は、「検討を開始」どころか、エネ庁はこのとき、原子炉等規制法から原発の「運転期間」を削除する条文案を持ってきていた。
絶句したこと
2番目に呆れ、絶句したのは、多くの報道者からあった開示請求手続は、エネ庁作成文書についてはエネ庁に移送するという説明だ。12月27日から待たせた挙句に、今日出してくるのかと思いきや、「黒塗りにする部分は文書を作成した機関に判断してもらうのが一番いいから」という。
開示期限の延長→開示手続をエネ庁に移送?
例えば、私はこの件で、12月21日に開示請求をした(*)。本来なら情報公開法(第10条第1項)に基づき、30日以内(1月21日まで)に開示される。
しかし、期限1日前の1月20日に「開示決定の期限の特例の適用」通知を受け取った。情報公開法上は事務処理上の困難などの理由で30日以内なら開示の延長ができる。ところが、今回は「他に処理すべき事務が多く」、特例(第11条)を適用し、可能なところは2月20日まで、残りは3月31日までに開示決定をするという。1ヶ月で開示すべきところ3ヶ月もかけるという通知だ。
それだけで腹を立てていたのに、今日はさらに、記者会見の場で、この開示手続が規制庁から(エネ庁作成文書については)エネ庁の手に渡ると聞かされることになった。キレそうになった。
エネ庁への移送決裁はまだ?
しかも、よくよく聞いてみると、
―開示手続をどうしようかとエネ庁と規制庁が面談をしたのは1月16日。
―移送の最高決裁者は原子力規制企画課長。しかし、今回のことは重要なので原子力規制委員長と規制庁長官にも了承を得た。しかし、決裁のハンコはまだついていない。これからだ。(じゃぁ移送はやめてくださいよ、と叫んでしまった)
―エネ庁への移送を意思決定した日にちは分からない。ウェブサイトに面談録を掲載しているから見てくれればわかる。
そのことが、会見で2時間近く断続的に質問し続けてやっとわかってきた。
しかも、帰宅しながらスマホで掲載されているであろうサイトを探しても、面談録は出てこない。
規制庁の説明は支離滅裂だが、一つだけ明らかなのは、規制庁は原子力推進の行政機関に取り込まれいることだ。
関係する「地味な取材ノート」リンク
■主導権:官僚に握られた原子力規制委員会2022年12月24日
■運転期間:議論開始時の事前打ち合わせ通り2022年12月26日
■隠されていた「内部情報」に関する規制庁弁明 2022年12月28日
■原発規制と推進の一体化:実は5年前から2022年12月31日
(*)12月21日に開示請求をしたのは「原発の運転期間に関連して、2022年8月に原子力規制委員会または規制庁が作成又は取得したすべての資料(メール等電子データを含む)。破棄したものはあればその廃棄録)」。今となってはもう少し長い期間の開示請求をすべきだったと思う。
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