廃炉の優先順序は?最高責任者の考え #1F
2017年に政府が改訂した福島第一原発(1F)の「中長期ロードマップ」では、2021年12月までに燃料デブリ取り出しが開始されるはずだったが、2024年11月現在、その見込みはない。
かろうじて、880トンの溶け落ちた燃料デブリのうち、3g程度が試験的に建屋から出るかどうかという段階だ。
しかし、それは中長期ロードマップで定めたように最優先すべきことなのか。
政府と東電の優先順序は?
通常の原発でさえ、低レベルの放射性廃棄物から片付けを始める(既報)。
福島第一原発で、なぜ最高レベルの燃料デブリを今、取り出そうとするのか。
放射性廃棄物を増加させる地下水の止水が最優先ではないか。
常々、聞きたかったことを、福島第一原発の廃炉の最高責任者である小野明氏に2024年10月31日の会見(動画2時間36分~)で、下手な聞き方で聞いた。
(*1)優先順序を聞いたのであり「何もやるな」とは誰も思わない。「手をこまねく」とはどのような心境で出る言葉か違和感を感じた。(「果敢にやっている」というセルフイメージを裏返した心境か?)
(*2)「後回しにしてきた地下水止水を燃料デブリ取り出しより優先させるべきではないか」とストレートに聞けば良かったが、聞き方を失敗した。
(*3)「今やっているような止水みたいなこと」と小野氏は回答したが、現在は地下水汲み上げ、凍土壁、地表面を覆うフェーシングによる抑制策であり、止水工事ではない。
(*4)チョルノービリ原発事故は1986年だから38年。
(*7)チョルノービリ原発の「象の足」は小野氏が述べたようなセメントで固めたものではなく、事故時に燃料含有物質が溶け落ち、水の中を流れ落ちて塊状のものになったとされる(参考:「チェルノブイリ事故の燃料溶融物(FCM)の現状|後編」(三菱総合研究所原子力安全事業本部 石川秀高、2020.3.3)。
(*5)最終形が分からず進める作業より、地下水止水が先ではないかと聞きたかったが失敗した。
(*6)スリーマイル島原発事故では溶融燃料は原子炉内に止まっていたので、事故の種類が違う。燃料デブリの性状もまったく違う。
なお、(*1)の前に「安全第一」だと小野氏は回答したが、燃料デブリ試験的取り出しは、原子炉脇の高線量環境で70〜80人がかりで短時間づつ分担して行われている。このことに関して、「この間、計画線量や孫請ひ孫うけの作業体制もいちいち誰かが聞かないと答えない。聞けば、手元のメモをもとに答えてくださっている。時間が無駄なので、作業員の安全管理のためにも重要ですから、きちんと計画線量がどれぐらいでその日、どれぐらいだったのかということを表にして公開していただきたいんですが、どうでしょうか」と尋ねたが、広報担当(桑島氏)がいつものように「ご意見として承る」と回答し、隣の小野氏は黙っていた。
作業員たちが、自分たちの安全確保が第一に大切にされていると思えるように、同時に自分を大切に思えるように、被ばく線量は公開した方がよいと私は思う。きちんと線量管理をしている(ことになっている)のだから。
まとめ 中長期ロードマップの改訂で優先順位の付け直しを
この間、東電による世界初の6基同時廃止措置における失敗と対応先を見ていて、中長期ロードマップの改訂によって、優先順位の慎重なつけ直しが必要ではないかと思っている。同時に作業員体制の見直しも必要だ。
今ある以上に汚染物質を増やさない(=汚染物質増加の最大の要因となっている地下水流入の止水)
劣化したり落下したりすると危険なものからの片付ける
より低レベルのものから片付ける
3を進める上で邪魔になるある程度のより高レベルなものの片付け
最後が燃料デブリの取り出し
もちろん、片付けたものの保管と最終処分の工程と形の見える化も必要だ。
しかし、現在は、政府と東電による「中長期ロードマップ」により、燃料デブリの取り出し(第2期)が最優先され、一方で第1期として始めた使用済燃料の取り出しが1号機と2号機で終わっていない。そんな中で数々の「軽微な実施計画違反」(原子力規制委員会の弁)が続いている状況だ。
【タイトル写真】
2024年10月31日東京電力中長期ロードマップ会見にて筆者撮影。
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