からあげ屋

バイト先のコンビニの目と鼻の先に、からあげ専門店が出来た。コンビニの人達は、

「からあげとか、チキンが売れなくなるんじゃないか」

と不安の声を上げていた。

僕は、

「逆に売れるのではないか」

と考えた。

たしかにからあげ屋が営業してる時間は、みんな物珍しさと一度は行ってみたいという気持ちから、からあげ屋に押しかけるだろう。
しかしコンビニの売りと言えば24時間営業だ。
からあげ屋が閉店してから、「そういえばからあげ屋出来たな」と帰ってくる人達が、「なんだもう終わりか」のその足でコンビニにやって来る。
すると完全にからあげの口になってるその人達は、必然的にからあげを買って行くのではないか、と僕は考えたわけだ。

コンビニがからあげ屋の取りこぼしたお客さんの受け皿になるのだ。

しかもセブンは今、からあげ棒、揚げ鶏、ななチキ、うま辛チキンと鳥の種類が豊富だ。
そして冷凍のからあげも評判がいい。

これはもうピンチではなくチャンスなのだ。

コンビニの売り上げを上げるには、売れる商品を見極めるのと同時に地域の情報をよく分析出来てるかが重要だ。

運動会がある時はおにぎりが売れる、お祭りがある時はビールやフランクフルトが売れる。
情報を分析して、準備をしておく、地味だけどとても大事なのだ。

僕はみんなが売れなくなるであろうと考えた、揚げ物系や唐揚げの弁当などを潤沢に用意した。
時には無謀とも思える攻めの姿勢が、ビジネスを成功に導くのだろうと実感したのだ。

そしてからあげ屋がオープンして二週間、
コンビニの揚げ物はまったく売れなくなった。

ま、そりゃそうか。