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#3 明治期〜昭和初期の建具を受け継ぎ次世代へ繋ぐ「里山ハレとケプロジェクト」リノベ編


ドキドキが止まらない。いよいよリノベーションモデルも仕上げ段階に入り内装・照明・キッチンなどの住宅設備などの取り付け作業にはいった。
毎日忙しく作業を進行してくれている職人さんやM図建築工房のスタッフ達には感謝でしかない。

ブランドスローガン 「つづく、世界へ」

僕たちは去年、未来の後輩達、お客様にも向けたブランドスローガンをみんなでつくった。
私たちの仕事は建築を生業としている。僕は建築物が好きである。しかし何でもかんでも好きなわけではない。その建築物を使う人や地域の人達から永く愛される建築物が好きである。

倉庫の奥から引っ張り出した一枚板テーブル?

永く建築物を維持していくためには地震や台風から守ってくれる構造(大工の技術・綿密に計画された構造計算)その時代に応じた動線計画に可変性、古くなってからも味が出る外壁材や内装材の素材選定など、勿論デザイン性も大切でありその複雑かつ熱い思い、情熱を持って進めていく事で愛される建築物となる。

「皆から愛される建築物」これは施主だけの価値観や工務店・設計事務所の独りよがりでは成り立たない。打ち合わせに打ち合わせを重ねお互いの希望と提案をすり合わせなが丁寧に時間をかけて頭の中を整理しながら図面を書いていく、そして大工がその図面と施主の思いを組み立て具現化していくそれがM図建築工房の建築スタイルだ。

アプローチのイメージ

建築は自由であり色々な形があって良い、ただ未来に残す大きな責任がある。僕たちが残す建築物は未来人に尊敬される建築であると考える。空き家や住宅解体(粗大ゴミ)ではない。
これは理念にも謳った私たちの思想の本軸でもある。

素材にこだわり設計にもこだわるそして施主の要求にも応える。そのために僕らは日々の勉強と経験を大切にし継続しつづけねばならないし最新の技術も取り入れていくアンテナ力も必要だ。

モールテックスを塗る鬼束さん

「つづく世界へ」


ご家族のために、想いを込めて家をつくる。
その先に、つづく世界を実現するために。それは、家族のつながりがずっとつづく世界。

建てた家が、大切に住み継がれていく世界。
この地域に誇りを持ち、
ずっと住みたいと誰もが思える世界。
そんなあたたかな想いが溢れている、未来。

私たちのつくる家並みが、
1 0 0 年後も豊かさがつづく世界の中で
美しい故郷の景色となっていますように    *hpから抜粋

住宅展示場 https://m-zu.co.jp/haretoke/

今回の「ハレとケプロジェクト」は様々な要素を併せ持つ住宅展示場となる。

・住宅モデルルーム
・家具工房
・店舗建築
・IOT住宅
・里山再生
・地域の交流、防災拠点(すべての建築物耐震等級3)
・技術者(設計、大工、職人)の育成
・移住者向け行動拠点
・古民家改修
・図書の塔

可能性は無限大であるが僕が考える事はただひとつこの「ハレとケ」が未来永劫何百年とこの地でその形をとどめ、地域から大切にされる建築物をどう設計して、どう具現化していくのかである。
日々プレッシャーやさまざまなトラブルと戦いながら進めているが自分の中で50になっても成長させて頂いているという気持ちと仕事に対する情熱や誇りを持たせてくれているプロジェクトに感謝している。

さて細かいことを考え出したらキリがないが、細かいことをまとめ上げていくこともとても重要な仕事だ。
その中でも今回は自分が楽しみにしている事をひとつ紹介したい。マニアックすぎて家族もM図の人達も複雑な反応をしているが僕は喜びで感動している。

M図建築工房の住宅や店舗は機能性、耐震性や断熱性能が良いのは当たり前であり、今現在進行形で一番力を入れているのはデザイン性である内装材や外装材、地味な所を言えば取付金物や気密系部材など設計者、大工が良質な材を選び施工していく、ぜひ施工事例やピンタレスト、Instagramを見て頂きたい。

住宅展示場の基本的存在意義を考えたらお客様から人気のデザインや構造、動線計画を少し盛って大手のハウスメーカーみたいなやり方で展示するのが王道であろう。だが僕たちがやりたいことは只単にかっこいい住宅を並べて見た目だけの評価をもらうのではなく、これからの未来に向けた住宅のあり方、ものを大切にする心、建築の可能性を探求するべきと考えた。

そこにはその家族のストーリー、それぞれの生き方や生活の仕方、考え方などがあるだろう。

そこでリノベーションモデルのコンセプトを「ノスタルジー」とテーマし設計を始めた。元々古い街並みや古民家が好きだというのもあったが2〜3年かけて全国の街を旅した。やはり何百年も残る建築物には共通点がある。

一つ「素材」木材や素材がシンプルではあるが良質なものが使われている。

一つ「美しい」全体的なフォルム特に屋根のバランスが素晴らしい。

そしてもう一つ「建具」である。

地域や農家や商い、時代にもよっても違うが僕は特にこの3つを建築物の美しさの定義としている。

そして今回「ハレとケ」のリノベーションモデルの建具は全て建具職人による造作とした。現代ではどうしても素材(良質木材)の入手難、職人不足、工程の長期化などから工場生産型の建具が主流となっている。私たちM図建築工房が扱う建具も素材やデザイン、メーカーにはこだわっているが現在一つの家で建具職人による造作は1〜2本程度である。

そして今回はノスタルジーのコンセプトの元、明治期〜昭和初期の古い建具を取り揃えている埼玉の「のびる」さんからプロジェクトのイメージにあった建具を仕入れる事ができた。

現在の日本は家も建具もその価値を分析もせず解体し廃棄されてしまっている。「のびる」さんは全国から古い建具を集めわかる限りの情報(年代や地域、素材、製作者)を開示して販売してくれる埼玉県の素晴らしい会社である。今回もこちらからのマニアックな質問にも快く答えてくれてとてもお世話になった。



組子雪隠れ戸 昭和期
堅木 幅広黒枠帯戸 昭和
総欅升格子格子戸 明治期〜大正期
ダイアガラス・ラワン製 昭和初期


総欅格子戸 昭和期 本職の建具屋さんもこれには感動していました

メインとなるリビングと和室の障子戸を昔からお世話になっている佐土原町の丸晶建具さんに依頼。

木材市場で仕入れた木材を使って丸晶建具さんに作ってもらったもらった障子戸


流石に年代ものの建具はソリやねじれ、傷はあります。しかしそれも年代物の証であり歴史でもある。何年も前に先輩達が作った建具を現代の職人達が修繕し整えてまた再利用するとてもロマンがあると思うのは僕だけでありましょうか。

今回僕は近代の最先端の建築技術と古い素材の融合にチャレンジしています。未来の人が喜んでくれるような建築を目指し、また明日現場で作業します。
まだ建築の途中ではありますが時間をかけて自分で設計し、大工仕事をしていると自分の子供のように愛着が増してきています。

本日、どうか無事に完成いたしますように。と国富町の本庄稲荷神社にお参りしてきました。

つづける事は簡単そうで難しいことです。でもその先には何かが必ずあります。そう信じて明日も頑張ろう。

プロジェクト初期の構想案