寧静
日本が誇る世界遺産、奈良の東大寺大仏殿。
確か修学旅行で来ている。三十年近く前か…。
あの頃は、例えどんなに巨大な大仏が目の前にあったとしても、お目当ての誰それ君の方が〝神〟に思えた時代。
「今こっち見た!」
「気のせいよ。」
などとキャーキャーする事こそが最重要事項だった。
時を経て再び目にした本尊の仏像。その威風堂々たる佇まいは今更ながらに圧倒される。
微かに開かれた優しい目。胸元開けて意外とセクシーね…。(失礼!)
柔らかそうに見える右の掌は慈愛に満ち満ちている。
表情はとても美しく、無のようで決してそうではない寧静の笑みを湛えていた。
千年以上もの長い時を超え、一体どれ程の願いを受け止め続けて来られたのだろう。静かな感動が心を巡る。
天に光り輝く偉大な大仏様の眼下で、自分の小ささと宇宙の大きさ思いながら、気がつけは我も誘われる寧静の境地へ。
「寧静」(ねいせい)・・・世の中が平穏なこと。心が安らかで落ち着いていること。