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期待している役割を言語化する理由とは

中途採用者。即戦力として活躍できる人と、既存メンバーが教育に労力を割くことになってしまう人の差はどうして生まれてしまうのでしょうか。

前回は、中途採用者であっても事前指導として、自責型思考について教育しておく重要性について述べました。

さて今回は、「中途採用者に期待している役割を言語化する」というテーマでお伝えしていきます。

何を期待して採用したのか、中途採用者にあなたの会社は入社時に伝えていますか。

おそらく多くの会社は「No」という答えになるでしょう。でも中途採用は転職希望者の職務経歴を書類で確認し、面接で人柄を確かめた上で採用します。

そんな過程を経た上で、適材適所を実現するためには、配置する部署を検討することになりますよね。

配属する部署を検討するには、必ず何かしら期待する役割が採用側には浮かんでいるはずです。

ではなぜ、会社は期待する役割を明示しないのでしょうか。

それは、特に明示しなくても困ることはなかったというのが正直なところだと思います。

あるいは本人に伝えずとも、配属先の部門長に経営陣の想いを共有しておけば良いと判断されていることもあるでしょう。

または欠員補充のため、前任者の引継ぎで伝わればいいと考える会社もあると思います。

なぜ、期待する役割を本人に伝えたほうが良いのか

何を評価して採用されたのか、採用された側はわかっていません。そこで、採用した理由や期待する役割を共有されると、「会社に慣れるまで様子を見る」という期間を短縮できる効果があります。

スポーツに例えるとイメージしやすいですよね。試合の途中で選手が交代するときに、起用した意図を監督やコーチから告げられない選手は、試合に慣れるまで考える時間が生じてしまいます。

つまり、役割が明確であればあるほど、迷いがなくなるのです。迷いがなくなれば、本人の主体性を発揮することができます。

これまで培ってきた知見を活かすために、どんな貢献をしたらよいのか明確だからです。

期待する役割は自然には伝わらない

なぜここまで本人に明示することに私がこだわりを持っているのか、事例を共有いたします。

私の前職である学校法人では、年に1度「自己申告書」を提出する機会があります。全国規模ということもあって、経営トップの理事長が全国の社員は何を考えていて、どこに課題を感じているのか把握するための制度です。

他の企業では人事考課表や自己評価シートと呼ばれているものに近いですが、今回お伝えしている「自己申告書」は数値を元にした自己評価や異動希望先を明示する申告書というよりも、過去の1年間のやりがいや今後携わりたい仕事を明示するものになります。

その中で登場する質問の一つに「部門内でのあなたの役割は何ですか」というものがあります。

私はいちメンバーであった若手の頃には、自分に与えられている職務分掌から必死に役割は何だろうと紡ぎ出し、無理やり思いついたことを書きなぐっていました。

あまり疑問も持たずに若手の頃はその質問をやり過ごし、マネージャーとして全員が提出する自己申告書を閲覧できるようになった時に違和感を覚えました。

マネージャーの自分が期待している役割と、メンバーが察している役割に差異があったのです。

その差異が大きければ大きいほど、チームとしての成果につながりにくいという実体験から、私は部下の1人1人に期待している役割を明示する大切さを学びました。

ピグマリオン効果を侮らない

さて前述のように、期待する役割を明示する効果の1つにピグマリオン効果があります。

これは有名な心理学用語なので、ご存じの方も多くいらっしゃると思います。ただ知っていることと実践していることとは異なりますので、あえて引用しておきます。

“他人から期待されることで、その期待に沿った成果を出すことができる効果”

これは彫刻家ピグマリオンが彫った乙女像を愛し続けた結果、神から命を吹き込まれたというギリシャ神話が元になっています。

私は教育業界から経営コンサルタント業に転職後、初めは何で会社に貢献しようか迷った状態でした。

ところが、グループ3社の新卒採用を兼務してほしいという役割を頂いたときに、主体性に拍車がかかったと記憶しています。

期待されているミッションが明確だったからです。結果として、新卒採用において成果につながり、その成果から得たものは組織に貢献できた達成感でした。

何を依頼したら良いのか明確になる

ここまでの話は、期待する役割を明示することで本人にもたらす効果についてでした。これには本人に直接伝える方法と、配属した部署のメンバーの前で本人に伝える方法の2通りがあります。

後者の方法を選択した場合、本人が主体性を発揮しやすくなるだけでなく、周りのメンバーもどんな仕事を依頼したら良いのか明確になる効果があります。

通常であれば、一緒に仕事をしていく中で周囲の人間も得意、不得意がわかるようになり、成果につながる仕事の依頼の確度がだんだんと上がっていくという工程を経ます。

ところが、部署のメンバーの前で期待する役割を伝えると、その「様子見」をする時間を短縮することが可能になるのです。

これまで述べてきた「期待する役割を言語化する」効果についてまとめていきます。代表的な効果は次の3つです。

1)仕事に手を挙げる主体性が生まれる
2)役割を果たすことで達成感を実感する
3)周囲が何を依頼したら良いのか明確になる

いかがでしたでしょうか。中途採用者を配置する上で、なんとなく力を発揮してくれるだろうという曖昧な期待ではなく、あえて期待していることを言語化してみる効果についてご理解いただけたのではないでしょうか。

「採用7割、配置2割、育成1割」という言葉がありますが、配置と育成の間にひと手間を増やすことで、中途採用者が即戦力として活躍する糸口が隠れているかもしれません。

まずはなぜその人を採用したのか、なぜその部署に配属するのか、どんな役割を期待していて、どんな成果をあげてほしいのか、それらの点を言語化することから始めていきましょう。

きっとあなたの会社の中途採用者にも、前述した3つの効果が現れ始めることでしょう。

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教育参謀 本間 正道
Email: playbook.consultant@gmail.com
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正道 ©教育参謀
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