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いつか忘れてしまうから日記 1

日記の習慣ってない。

SNSでは日々のことを断片的に書いている。でも日記とは違う。
記録的なものがどこにもないから一度つけてみたいと思っていました。
客観視の役に立つかもしれない。

なにもかも忘れていくじぶんの備忘録として、日記的なるものを書いてみることにしました。瞬間風速はまあまあすごく、しかしオフの日は社会生活不適合者ギリのわたしの、たとえば、今週はこんなかんじ。

みなさまにおかれましては、「世界にはいろんなひとがいるのだなぁ」という生態観察などにお役立ていただけましたら幸いです!


11/18 mon ルーティンなどあったものではない


約束のない日。タスクは山ほどある。やりたいことも。
息子が忘れ物を3度取りに戻ったあと、とうとう登校。時刻は7:45。

こんな朝は大いなる混乱から始まる。

目前に広がる真っ白な1日に興奮しすぎて、どこから始めようかあたふたしてしまうのだ。お茶をいれながら、すでにわたしは大混乱している。

・ああ、本が山積み。懸案の本棚作り、どうにかしたい
(Pinterestで世界中のすてきな本棚にピンを打ちまくる)
・冷蔵庫を開ける。ちょっと!整理しないと!
(そうだ、糠漬けを始めるのだ。52回目くらいの決意)
・noteに書きたいことがたくさんあるんですけど
(おもむろにiPhoneのメモ帳に打ち込み始める。立ったまま。お茶は当然冷めつつある)
・山もジムも行きたいぞ、サイクリングも行きたい
(ああ、時間が)
・そうだ、今週移動の飛行機とホテルも取らないとじゃん
(なにこれ、すごい価格高騰!どういうこと!)
・ああ、もうそろそろ、コーヒーをちゃんと淹れられるようにしたい!
(そうだ、〇〇くんに習おう、LINELINE)

ひどい髪で顔すら洗わず、手当たり次第やり散らす。そしてわたしの午前中はどろりと溶けていく。真夏に放置されたアイスのように。リビングの鏡に映るじぶんに大きく落胆する。乱れ髪はライオンのシェイプ。がお。
がお、じゃない。ひどい。
ぼさぼさの髪でかわいいのは25歳くらいまでだ。たぶん。

これまで、モーニングルーティンを取材させてほしいと何度か依頼を受けたが当然お断りした。麗しいルーティンなどあったものではない。わたしが聞きたい。


結露も拭かないとだ、でもきれいだな
写真を撮る そして拭くのをわすれる


午後、身なりをやっと最低限整え、仕事を片付け始める。今日は何も食べてない。豆乳をあたためて飲む。朝からおなかにいれたものといえばそれだけだ。
時計はすでに14時を指している。どうなってんだ。

でも、ここでじぶんにがっかりしすぎたら負けだ。

「大きな山も一歩から」そうだ。知ってる。その一歩を踏み出すのに6時間もかかっている。どうなってんだ。
だめだ、どうなってんだとか考えてはだめだ。

Hey, Masako, stop blaming yourself.  
そいえば英語最近話してない。サブスクでアプリ落とした記憶。
やだ、毎月4000円も払ってるのにぜんぜん使ってないじゃんよ!
ぐすん。

日が暮れるのがずいぶん早くなった。もう夜だ。


何かに断続的に集中した結果のわたしのデスク
ひどい
充電器が3つあるぞ


11/19 tue 昨日の失敗を生かし、午前中を適切に使いたい

が、義母が気になる。とても気になる。

ひとりで暮らす彼女はちかごろ記憶力等に強い不安があり、思いきって愛知から岡山市に越してきたのだ。急激な環境の変化も相まってか、今日の日付や、じぶんのいる場所がわからなくなったりする。5分前に話したことをすっかり忘れることも少なくない。典型的な認知症の初期症状だ。わたしはこれまで認知症のひとと接したことがなかった。だから毎度動揺する。

今朝出張に行ったトシオに代わり会いに行った義母は一見いつも通りの口調だった。以前のお義母さんが戻ってきた!とうれしく思う。でもすぐ夢みたいなことを話し出す彼女を前にして、時空が歪むような思い。泣きたいが、がまんだ。

「まあちゃん、わたしどこにいるんだっけ」
「岡山のおかあさんの新しい家だよ」
「まあちゃんって岡山来たことあるの?」
「そうだね、13年前に引っ越してきたからね」

心細い。はじめての子育てより100倍心細い。
でも、わたしが心細い顔などしたらおかあさんが不安になる。
もうわたしは、じゅうぶんに大人なのだ。

「おかあさん、最近ちょっとわすれっぽいからね。でもだいじょうぶ」
むりやり笑顔を作ったけど、少女のように敏感なおかあさんにバレてないだろか。

トシオは粛々とひとつずつ問題をクリアしていく。判断のつかないものごとを前に無駄に心を揺らさないようにしているのがわかる。全体を見渡し、最良の選択を静かに続けている。彼の俯瞰力に改めて驚く。建築という仕事をしているからか、生来の性質か。賢さをこういったかたちでも使う彼に改めて尊敬の思い。

無駄に慌てたり嘆いたり悲しんだりして、彼の負担を増やしてはいけない。わたしにできることは積極的な支援よりそういう消極的なサポートだ。つまり、「まさこの心のケア」みたいな形で彼のタスクをさらに増やさないということ。
非常になさけないが、そういうことなんだ。

ふと、昨日慌てて取った東京行き飛行機のチケットが気になり確認する。移動予定の翌日のものだった。やはり!あっぶな!わたしの認知もあやしい。

これまでもわたしはチケットを取らないで空港に行ったり、逆区間を取ったり、1ヶ月先を取ったり、なんてことを数えきれないほどやらかしてきた。多忙ということもあるし、単純な確認不足ってのもある。アクシデントを結局なんとかしちゃうっていう力自慢みたいな側面もある。

そうやって「あわてんぼエピソード」を楽しくネタとして笑ってきた。まさこってすごいね、なんて言われちゃったりして謎に得意気だったりした。

でも、ここにきて急に笑えなくなった。
もう、フェイズが変わったのだ。
脳というふしぎで複雑で繊細な装置をわたしたちはみな、無自覚に持つ。


こわれものを頭に乗せて歩く

11/20 wed ただ楽しくて、すきで、という動機

あれれ、風邪っぽい。喉が痛い。
明日から激しい旅の日々だというのに。

風邪というものをあまりひかないので、焦る。じぶんなりの処方箋みたいなものがいまだ、確立されていないのだ。常に場当たりでなんとかしている。そういう態度は風邪に限ったことではない。瞬発力はあるが、知識と経験が積み上がらないのがわたしの特徴だ。
ドヤ顔している場合ではない。そんな特徴でいいのか。

頼りにしている医師に薬を出してもらう。漢方薬とステロイド。ステロイドは出張中に「これはまずい」という時に飲めとのこと。ステロイドって筋肉を肥大させるし、肌荒れも治すし、風邪にも効くのか。冷静に考えるとおそろしい。こんな小さな薬ひとつで。が、そうも言っていられない。

薄ピンクの極小の粒をお守り代わりにパソコンケースにしまう。財布より平面性が保てると思ったのだ。こういうイレギュラーなことをして、どこにしまったか忘れませんように。もうわたしは、じぶんの記憶力を全く信頼していない。

漢方薬をキメて、午後はアトリエでニッティングクラブ。つまり編み物部。ご縁があり、編み物の猛者たちが集う会を主宰している。彼女たちはみな、プロ級(にわたしには見える)の腕を持つひとびと。でも、仕事にするだとか発表するとかじゃなくて、純粋に趣味で編んでいる。超絶技巧のセーターなどを次々と編み上げていく。

わたしがもしあんな腕を持っていたら、つい仕事にしてしまうのではないか。でも、しない。それが、いい。ただ楽しくて、すきで、という動機で凄腕を発揮しているひとの情熱は純度が高く、わたしにはまぶしく映る。

手を動かしながら話していると2時間の会があっというま。専業主婦の方、岡山から出たことがほぼない、と話す方。編む手を休めず、ニッティング猛者たちの人生がぽろぽろとこぼれ落ちる。属性がそれぞれのみんながひたすらに話が止まらない様が、とてもすき。

この会でわたしは実力が底辺レベルというのも気に入っている。仕事ではその場で最年長だったりして無駄に尊敬されるシーンも増えた。そんなことで舞い上がり「えらい人間」になっちまったらおしまいだ。ニッティングクラブでのわたしは、猛者のかたわらで、いつまでも同じセーターをもたもた編んでいる、永遠の初心者マサコでしかない。


今編んでいるセーター
冬じゅうに完成しますよう

編み物を通じてでなければ出会えなかったであろう、あたたかい輪にいれてもらいとてもうれしい。古代から女たちはこうやって、手を動かしながら緩やかにつながりを作ってきたのだろうなと想像する。性別でくくることもないのだけれど。


夫に編んだマフラーを試着
わたしがほしいぞ

11/21 thu  脈絡なんて、なくていい


昼から東京へ。岡山空港は小さな鉄道の駅のようで、とてもすきだ。しかし通いすぎて、特別感は目減りする一方。My行きつけの空港。地上係員の方の顔をたいてい知ってしまっているくらいだ。搭乗券を握りしめるたび胸が踊っていた若い頃の興奮はいまや遠い。

いや、わたしは岡山ー東京線に慣れすぎただけかもしれない。
国際線なら沸き立つはず。沸き立ちたい。


銀座通りを歩くともはや、日本語以外の言語がマジョリティに思える。高級ブランドに行列するひと、わたし(プロだ)と同じ機種の高価なカメラを持つひと(おそらくアマチュアの)。みな、おしなべて高そうな靴を履きバッグを持ち、ハイブランドのロゴの入ったパリッとした服に身を包んでいる。
日本はディズニーランドみたいだと海外の観光客に人気だと読んだ。清潔で楽しくて安全な。その通りだ。複雑なきもち。

すらっとした若いカップルと肩がぶつかり、アクセントのないきれいな英語で謝られた。ついでに道を教え(資生堂パーラーへ行くそうだ)きれいな歯並びで感謝される。中国本土から来たというふたりは態度もファッションも実にスマートだった。これがある種の差別に聞こえないことを願うが、実感として隔世の感がある。
時代はぐいぐいと変わっている。

浅草にある親友の家に宿泊。生後10日から知っている彼女の娘も一緒にまずは火鍋。推しの話、すきな先輩の話。中高一貫の女子校に通う13歳にとって、高校生の先輩は強烈に憧れの存在らしい。目を輝かせノンストップで語り続けている。まだ幼いまぶたに塗られたアイシャドーのラメには希望しかない。
きみはちょっと前まであかちゃんだったのにな。なんて早いんだ。

20代前半からの親友のアヤコとは話すことが山ほどある、戦友みたいな存在。仕事で悩めば真っ先に相談するし、家庭と仕事の両立ってやつについても、ずっと話し合ってきた。子どもたちがこう大きくなってきた今、熱いトピックは親のこと。彼女の親はわたしの親より歳が上ということもあり、対処してきたできごとの経験値がまるで違う。これまで仕事上の無数のトラブルに毅然と向き合ってきた彼女のスキルがここにもばっちり活きている。人生無駄なしだね、ほんとうに。

お互い多忙だから、こう、ダラダラ脈絡なく話すって時間があまりにも貴重。高速で交わすLINEでは、言葉になる前の感情はすくいとれない。要約された近況報告のすきまに落ちていく、きもちのかけらたち。面と向かってできごとを順不同につらつらと並べていくうちに、そこに浮かびあがる未整理のきもちに気づくことってある。スーパー銭湯でのぼせそうになりながら、わたしたちは延々話し続ける。そして満たされる。

脈絡が不要なときって、ある。


アヤコとは一緒にブラジルにも行った

11/22 fri 昨夜をもう一度やり直し、9時間眠ってからまたお会いしたい


昨夜はほぼ眠れず、ひかえめに言って絶不調。

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