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いつか忘れてしまうから日記 | 「変わっている」の基準てなんだ

11/24 sun 平凡なひとなんていないよ


早朝発。 弟のひでくんに最寄りのJRまで送ってもらう。

えらい早い時間だが、「俺は時差ぼけでどうせ起きている」と言うので甘えた。来日直後だし時差ぼけは事実だろう。とは言え、わたしに気を遣わせないための方便かもしれない。LAから来て寒い寒いと震えている彼に、日本の早朝の気温は楽しくないはずだ。言葉数は少なくぶっきらぼうに見えるが、とても優しいひとだ。

行きの車であれこれランダムに話す。別れ際ギリギリまで。正解もなく結論もくっきりとは出せない種類の話は同じ空間で過ごすからこそできる。LINEじゃむずかしいよね。アメリカ暮らしのせいか生来のものか、ひでくんはわたしにない合理的な考えを生み出すシャープな頭脳を持つ。頼もしい。


母とひでくんin芦屋
いつもナイスな家族旅を企画してくれる

彼は30年近くカリフォルニアに住んでいるけれども、年に2回ほど日本に滞在する。日本でも仕事をしている(らしい)(動きが多すぎて家族も詳細を把握していない)彼がいてくれると、たとえ問題が起きても、わたしだけで抱えなくていいときもちが楽になる。タフな野犬みたいなひとなのだ。

彼は小学生の頃から数十km先まで自転車で「冒険」に行ったりしていた。やたら高いところによじ登ったり、河原で何かをぶんぶん振り回していたりした。いつでも遠くに飛び出して行ってしまいそうで、小さい場所に収まらないかんじがあった。彼に日本は狭すぎたのだろう。
ひとが積んでいるエンジンの大きさって基本的には変わらないなと思う。

もうひとりの弟、としちゃんはフィジカルもメンタルもやたら強い外科医だ。冷静でフラットで、どんなひとを前にしても動じない強さを持っている。ブレない、の一言。一見、家族でいちばん常識人に見えるけれど、いちばん変わっているのでは、と思うことも多々ある。(とても褒めている)
あるいは彼らも、わたしを変わっていると思っているかもだけど。

わたしが13歳のときに両親が建てた家のリビングで

しかし、「変わっている」の基準てなんだ。


思うに、じぶんらしさをダバダバ溢れさせているひとは、結果的に「変わっている」扱いになるような。抑えきれない個性が表面化しているひと。

でもほんとは誰だって個性を持っている。
それをダバっと出しているか、控えめにしているかの違い。
ダバっとした弟ふたりにもし他人として初めて出会ったら、変わっていておもしろくて、すきだな、と思うのは間違いない。幸運なことだ。


昨日の夜、母に言った。
「すてきな子どもが3人もいてほんとによかったね。ママ」

エッセイ集『みずのした』にも書いたが、じぶんを含めた人間のことを「すてき」とか、いけしゃしゃあと言っちゃうあたり、母の子育ては大成功したと言える。自己肯定感ってやつを育ててくれたのだろう。同じ母業の先輩としてもいいね!と思う。

父と中川3姉弟
服が!服のセンスが!どうした!笑

(わたしのグリーンのセットアップは地域のマラソン大会で入賞した賞品。にしてもだ!)

新宿から松本へ


ヒサシさんと合流。今日もおしゃれだ。

編集者の猪飼尚司氏(ヒサシさん)と二人三脚で作り上げた『みずのした』の巡業ツアーも回を重ねた。全国いろいろ訪ね歩き、今回は松本の栞日さんに呼んでいただいたのだ。

しばらく会えていなかったので近況報告。仕事のこと、家族のこと。明るい彼と並んでぽんぽん言葉を交わすだけでたのしい。

ヒサシさんは『みずのした』発刊にあたり、編集ばかりか出版社まで立ち上げてくれた

彼もフィジカルも精神も強い、実に頼りになるひとだ。
頼りになるひとに助けられ、生きている。

わたしたちを乗せた特急あずさが出発した。しばらくすると、デッキで気分がわるくなった方がいるようだった。職員の男性が慌てて処置に走っていく。制服が真新しい。だいじょうぶか。その様子を遠くから見ているだけで、わたしは胸がぎゅっと詰まる。

ただでさえ、なんとなく元気がない彼が車内販売をしている姿が心配だった。仕事楽しめてるかなぁと。またもや、よけいなお世話発動である。
手伝いたいくらいだ。でも迷惑だろう。

ヤキモキするわたしの隣、通路側で様子がより見えるであろうヒサシさんは、ちっとも心を揺らしてはいないように見える。大変だ、と言いながらもクールにコーヒーを飲む。対してわたしは、ずっとつらい。なんなら泣きそうだ。わたしが胸を痛めたって涙したところで、何の役にも立たないのだけれど。

車内販売業務に戻った彼を眺め、祈るようなきもち。

・どうか、めげないでね。
・いや、ちがう、めげてもいいよ。
・もしほんとうにつらいなら、他の仕事に変えたっていい。
・そうだよ、若いんだからなんでもできる。
・むりしないでいいよ!

そう伝えたいが、おせっかいなひとに余計なことを言われるのもいやだろうな。
じっと見守る。

クールなヒサシさんとわたし、同じ現象を前にしてもここまで反応が違うことを改めて知る。彼が冷たいというのともちょっと、違う。切り分けがちゃんとできるのだ。じぶんのできることと、できないこと。他者と、じぶん。わたしはその境界線がゆるいから、じゃぶじゃぶと他人のかなしみや苦しみが体内に侵入してくる。

じぶんと違う他者を鏡にしてじぶんを知る

その構造まではわかってるんだけどな。反応を止めることはむずかしい。
おもしろいな。ほんとにひとって、それぞれ。


巡業中の猪飼尚司さんと筆者
最高の相棒


松本に到着。ランチは「アルプスごはん」。

店主の金子健一さんに招いてもらっていたのだ。満面の笑みの金子さんと再会する。ぎっしりと彼が愛するものが詰め込まれた、とても居心地のよい小さな空間。

旅の醍醐味ってこういうこと

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