落語に関心がないあなたへ!【搗米屋を知ってますか?】
「搗米屋」
「つきごめや」と読みます。
文字通り、米を搗いて精米する商売で、長くて重い杵を足で踏んで玄米を搗き、精米していました。
小言が絶えない大家の幸兵衛さん。
毎朝、町内を回って小言を言うのが日課。
しまいには「まったくなんて天気なんだろうねぇ」と小言の矛先が天にまで向かう。
そんな幸兵衛さんのところへ表通りの空家を借りたいという男が訪ねてくる。
表通りの家は商売人と決まっている。
入ってくるなり「表の店(たな)借りてぇんだけど、(店賃は)いくらでぇ?」ときた。
「誰もお前さんに貸すとは言ってない」とさっそく小言が始まった。
幸兵衛さんによれば、先ず、貸してもらえるかどうかを聞き、貸してもらえるとなって初めて家賃の話をするのが順序というものだと。
そこで、男のことを聞き始める幸兵衛さん。
この男の商売は豆腐屋だという。
子供はいない。
すると幸兵衛さん、「子供ができないような女房とは別れろ」と言って、男を怒らせてしまう。
その後に別の男が訪ねてきた。
先ほどの豆腐屋とは違って礼儀正しく、先ず「表のお店をお貸し願えましょうや」と聞いてきた。
喜ぶ幸兵衛さん。
聞けば商売は搗米屋(つきごめや)だという。
幸兵衛さん、ますます喜び、座布団を出させて中へ通す。
そして、自分の身の上話を始めた。
妻が病で亡くなり、その妻の遺志により、妹と結婚した。
あるころから、その妹が浮かない顔をするようになった。
毎朝、仏壇の扉を開けると、決まって姉の位牌が後ろを向いているという。
姉が自分を恨んでいるに違いないと気に病んで、これも死んでしまう。
この話を聞きながら、搗米屋が「ところで、お店はお貸し願えますんでしょうか」「あの、表の店なんですが…」と何度尋ねても「まあ、お聞きなさいな。お前さんが搗米屋さんだというから話してるんだから」となかなか本題に入らない。
位牌が後ろを向くわけを知ろうと、幸兵衛さん、一晩中まんじりともせずに仏壇を睨んでいた。
何も起こらない。
夜が明け始めたころ。
隣の搗米屋が米を搗き始めた。
「鐘がなるのかよぉ~お、撞木(しゅもく)が鳴るかよ~」
ズシーン。
「鐘と撞木のよ~ぉお、相がなるぅ~」
ズシーン。
その度に位牌がズズッ、ズズッと後ろを向き始める。
夜が明けきって、自分らが起きて、仏壇を拝もうとするときには位牌がきれいに後ろを向いているという。
「ははぁ~」と感心する搗米屋。
ははぁ~じゃないよ。
最初の女房は病だから仕方ないよ。
でも、妹のほうはそれを気に病んで死んじまったんだ。
言ってみりゃ、搗米屋が殺したようなもんなんだ。
だから、搗米屋が来たら酷い目にあわせてやろうと思って、あたしゃ今まで待ってたんだ。
よくぞ来たな!
そこぉ動くな!