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短期のアルバイト

短期のアルバイトは意外に若い人が多いと知った。もしくは60歳以上の女性。
わたしぐらいの年代は少ない。考えたら、40代はちょうど子どもの手が離れるかわりにお金がかかるようになって、パートタイムやフルタイムで働く人が多いからだと思う。(違うかもだけど)
16年前はまだ働いていないお母さんも多くて、公園に行ったり、誰かの家に行ったりしていたけど、今はもう違うんだろうなぁ。

黙々と作業をする職場なので、基本的には私語はできない。
他のアルバイトの人がどんな人なのかわからないし、年齢も不明。わたしもどう思われているのかわかったものじゃない。でも若い人は若いので、たぶん合っていると思う。自分よりは確実に若い人。
そんな中で可もなく不可もなく働く。いいも悪いもない。
段ボールでときどき手を切ったり(紙で手を切るとなんであんなに痛いんだろうね)、金づちでうっかり指を打ったり(草履の裏を直すのに)したときに、はっとする。
痛いという感覚は、どこかに行っている自分を引き戻してくれる。
痛みは他人のものではなく、確実に自分のものだし、痛いという体感覚に人はすぐに反応するようにできている。
痛いなぁと思う。ただそれだけ。
あー、何やってんだろ、わたし。とかそんなことは思わない。
あぁ、痛いなと思うだけ。
いろんなことをあきらめるとこういう感じなのかもしれない。
もともときちんとできるわけではないし、どちらかというとドンくさいし、愚鈍だ。
それでもまぁいいかと思うしかない。自分を許すことでしか進んでいけない。

「かわいいですね、それ」
お昼休憩のとき、テーブルの向かい側から声が聞こえた。その人の視線はわたしのお弁当袋に向いている。あ?わたし?
その人は、「ハリネズミ?」と言った。
わたしのお弁当袋にはハリネズミの絵が描いてある。
「あ、はい」
と答えてわらった。それ以上は何も言えなかった。お箸入れはミッフィーちゃんだし、お弁当箱はきちんと蓋の閉まる保存用のタッパーだし。必ずおやつを2つ入れていって食後に食べ、余った20分で本を読む。
その人は朝もわたしの髪を「かわいいですね」と言ってくれたんだった。
いつも向こうからだなぁ。でもなんでわたしに話しかけてくるんだろう。
今度はわたしからも話してみようかなぁ。名前は覚えた。Fさんだ。

繁忙期でバタバタしている。そのための短期アルバイトなのだ。
もう少し、この何ともいえない居心地に身をゆだねてみる。


#エッセイ #短期 #アルバイト

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