雨の日の望郷
なんともわかりやすい梅雨入りを迎えたなぁと思う。
こんなペースで降って大丈夫だろうかと心配になるほど昼夜問わず雨の音がする。
息子の捕ってきたおたまじゃくしは大きめの水槽に入っている。
ほったらかしの雑草はますます背丈を伸ばす。
洗濯物はどうやっても乾かない。
小さいころ、なめくじを見つけたら塩をこっそり持ち出した。
妹と二人でじっと観察する。
「お姉ちゃん、これ、かたつむりに塩かけたらどうなるんやろ」
「わからん、同じかなぁ」
「だって似てるやん、かたつむりとなめくじ。中身同じちゃうん?」
「きっと同じやろな」
そのあと、どうしたのかは覚えていない。
殻があるのとないだけの違いで、かたつむりは一命を取り留めたような気もする。
お祭りで釣った金魚を川に逃がしたら、流れについていけずすぐに押し流されていってしまった。
拾った雀のヒナはあまり餌を食べずに死んだ。
自分の中に潜む残酷さは、きっとなくなってはいないのだろうと思う。
心の奥に潜んでいるのは、この手で生かしたり死なせたりできるのだという全能感のようなものではないのだろうか。
紫陽花の葉っぱをめくってみる。
おたまじゃくしの水槽をのぞく。
雨はまだ止まない。
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