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きれいな空
年末に恒例の餅つきを手伝うために実家に帰った。実家に本がたくさんあるのをいいことに、自分で買ったけどあまり読まないなぁと思う本をこっそり持って帰って本棚に入れておいたりする。
手放すには惜しいので、帰ったときにまた読めるという感じになり、便利なのだ。
読み返したいなぁと思っていた本があった。『戦争の教室』という本だった。
ジャーナリスト、編集者、戦死者の家族、戦争経験者、様々な立場から書かれたエッセイ集のようなものだ。何年か前に読んで、その中の記事に付いていた忘れられない写真があり、それをもう一度見たいと思っていた。
こたつに入りながら本を開く。
あった。
市橋とし子さんという人形作家の作った人形の写真だった。
空襲の合間の青い空を見上げる3人の親子。
表情がすべてを物語っている。
最近、友人と造形の話をしていてふいに思い出し、どうしても見たくなった。
心の中に灯る小さなろうそくの火のように、忘れたように感じていても覚えているものがある。
揺らぎながら、消えそうになりながら、それでも再び出会ったときにまた光になるような。
こういう作品に多くの言葉は要らない。
たぶん。
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