過去生の物語(2)
舞台はフィンランド。ちょっと変わった学生さんの物語。
僕は学校が終わると、大抵まっすぐ家に帰る。寄り道をするとしたら図書館に寄るくらい。図書館といっても本を読むわけじゃない。
僕は地図を見に行くんだ。その地図が細かければ細かいほど、僕は集中して地図を読む。
(眺めるといったほうがいいのかもしれない)
そんな僕をみんな風変りな奴だと思っているようだけれど、友達との関係はとても良好だと思っているよ。学校も楽しい。僕はフレンドリーな性格なんだ。
学校を出て僕がスタスタ歩いていると、みんなが声をかけるよ。
「よう!また図書館に行くの?」
僕は“もちろん”みたいに手をあげて図書館に向かう。
図書館は家と学校から少し外れたところにある。でも、道中すでに僕の頭は地図のことを考えているから、図書館まで歩くのが面倒と思ったことはないよ。
図書館ではお願いすれば、古い大きな地図を見せてもらえる。茶色く変色した地図を司書の人が持ってきて、もったいぶってめくる。
とても大切な資料なんだということはわかる。そのまま貸してくれてもいいのに、子供には渡せないといったふうに1ページずつめくっていく。とても面倒そうに。
そんなふうにされると、自分の好きなペースで見られないのでとても不便。
早く大人になりたいよ。
僕の家族は父と母、それに年の離れた妹の四人家族だ。
妹はまだ小さくて、最近3歳になったばかり。妹のことはかわいくて仕方がない。僕が家に帰ると喜んで僕の足に抱きついてくる。かわいい妖精みたいだ。
僕は妹が生まれてよかったと心から思っている。彼女がいると家の中が明るくなるし、みんなが笑顔になるからだ。
父は設計の仕事をしている。難しいことはわからないけれど、鉄道に関する設計、鉄道そのものを設計するわけではなくて、鉄道をうまく走らせるための計算や、駅舎、線路に関するものを設計したり、計算したりするみたい。
ちょっと特殊な仕事だ。
母は善良な人だ。金色の髪はつやつやしているし、いつもバラ色の頬をしていて、年齢よりもずっと若く見える。(最近少し太ったかもしれない)
父は変わった仕事をしているし、僕は地図ばかり見ているので、母は、うちの男どもは変わり者ばかりね!と言っている。
だから妹と女どうし仲良くするんだって。母は妹が大きくなるのを心待ちにしているみたい。たぶん一緒にお茶を飲んでおしゃべりする相手が欲しいんだろうね!
僕はこの家族を素晴らしいと思うし、とても美しい人たちだと思っているよ。
僕の家は広くないし、物もたくさん置いてあってごちゃごちゃしてるけど、家族が住むには十分だし居心地がいい。
居間の隅に父が作った小さい机が置いてある。僕はいつもそこで学校の勉強をしたり地図を見たり書いたりしている。
将来は海図を作る人になりたいと思っているんだ。
フィンランドの海は地形がとても複雑だ。だから船の航行には海図が必要になってくる。例えばフィンランドに他の国が海から攻め入ったときに、正しい海図があれば国を守ることにもつながるだろう。国を守ることは、家族を守ることでもあるから。
他にも船がスムーズに行き来することができれば、海で働く人が助かるはずだ。事故も少なくなるだろう。
古い地図には古い情報、新しい地図には新しい情報があるというのは、昔の地図と今の地図を見比べてみれば一目瞭然だ。
だから常に新しい情報、正しい情報を得て、それを人々に伝えていかなければならないんじゃないかと僕は思っている。
友達は「君は海軍に行くのかい?」というけれど、僕は海図を作る仕事ができるのであれば海軍でもどこでもいいと思っている。
体力には自信がないけれど、地図の知識があれば僕にふさわしい仕事がもらえるんじゃないかな。
そのことを考えるだけでとてもワクワクするよ。
***END***
この物語のテーマは“家族愛”です。
彼のベースには、いつも愛する家族がいます。彼は自分の将来の夢も家族を守るためにつなげて考えています。
彼は家族との生活をとても楽しんでおり、家族を愛しています。