見出し画像

「おかあさんのことをスタッフだとおもえ」と神様に言われている

「『おかあさんのことをスタッフだとおもえ』とかみさまにいわれている」と娘が言ったのは、小学2年生の春のことだった。

日記によると、わたしの物言いが気に入らなかったらしい。何と言ったかは記していないが、お風呂上がりの出来事だったと書いてある。「早く服を着ないと風邪引くよ」とでも言ったのだろうか。

「そんなこというの、あずかってるこどもにしつれいだよ」
と娘が言い返し、面食らった。

「預かってる子に失礼」とは⁉︎

「預かってる子じゃなくて、うちの子でしょ」
と、こちらも言い返した。すると、

「こどもはみんな、てんのかみさまからあずかってるんだよ」
と飛び道具の「てんのかみさま」を出してきた。

そう来たか。

はいはい、よく言われてます。
「子どもは天の神様からの授かりもの」。

授かりものだと思ってたけど、
預かりのものだったのか。

「こどもはみんな」ねえ。
まさか子ども本人から言われるとはね。

「誰がそんなこと言ってるの?」
と根拠を問いただしたところ

「てんのかみさま」
と直球を投げ込まれた。

出どころはそこなのか。
神様が自ら言っているのか。
神様から直接聞いたのか。

すごいな。

「天の神様はどういう風に言ってたわけ?」

好奇心も手伝って聞いてみたところ、

「わたしのこどもたちよ、おまえたちをおまえたちのおかあさんにあずけます。おまえたちはおかあさんのことをスタッフだとおもえ」
と、すらすらとトドメをさされた。

スタッフ!?

子どもを天から授かったにせよ、預かっているにせよ、スタッフだったのか、わたし。

その自覚はなかった。

なるほど。神様がバックについて「おかあさんはスタッフ」だと太鼓判を押してくれているので「あずかってるこどもにしつれいだ」と強気な態度を取れたのか。畏れ多くも神様からお預かりしております。

絶句しつつ、うちの子、わたしより台詞運び上手いんじゃなかろうかと感心してしまった。親バカだ。

「親」ではなく「スタッフ」だと割り切ることで気持ちは軽くなりそうだが、雇い主は神様なので請求書を出せない。ボランティアスタッフだ。

やはり子どもにいいように使われてるな、わたし。
と当時のわたしは思った。

天の神様に雇われたスタッフには「テンペイ」が支払われるのである。知らんけど。

テンペイとは? 連載小説「漂うわたし」をどうぞ。


目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。