シナトレ3 おんぶに抱っこで申し訳ありませんが企画書をどう書けばいいかさっぱりわかりません
不定期に書いているシナリオ・トレーニング、略してシナトレ。前回はこちら。
企画書は自分を売り込む広告
昔の日記を読み返していたら、企画書は自分を売り込む広告だ!という言葉が目に飛び込んだ。
2010年1月21日(木)の日記のタイトル、「シナトレ13 企画書は自分を売り込む広告だ!」。
脚本を勉強している人のために始めた日記内連載「シナリオトレーニング」略して「シナトレ」の13回目で、12回目はこじつけ解釈で発想を鍛えるというタイトルで2008年10月28日(火)に書いている。
連載と呼ぶには、かなり間が空いている。
そこで14年前のわたしは《メールやらmixi(懐かしい)やら「いまいまさこカフェ」掲示板(当時はあった)やら多方面からの質問に個々に答えたものをシナトレのネタにすれば、他の人とも共有できるし、連載のペースも上げられる》と思い立ったのだった。
以下、2010年に書いた「シナトレ13 企画書は自分を売り込む広告だ!」の内容を一部加筆しつつ再掲。
セミプロ脚本家さんからの質問
質問者は「コンクール受賞作など作品のいくつかは形になっているけれど一本立ちはまだできていないセミプロの脚本家」(※2010年当時)さん。
プロとしてやっていく実力は十分お持ちで、あとは企画出しでアイデアが目に留まればレールに乗っかれるというところにいる。
たしかに脚本の書き方を教えてくれる学校は多いけれど、実践になったときのイロハが抜け落ちていることが多く、かといって今さら恥ずかしくて人には聞けず、「企画書ってどう書くの?」「プロットとあらすじはどう違うの?」「ハコ書きって何?」には駆け出しならずプロだって悩む。
わたしの場合は、仕事を重ねながら、こういうものであろうという自分なりの定義や書き方を得つつある。デビューして10年(※2010年当時)経っても、「こんな書き方があるのか!」と驚かされ、先人や先輩のワザを盗ませてもらうことは多々ある。
試行錯誤しながらスタイルを作っていく柔軟性も脚本家には求められる。これが企画書だと提示されて、それをそっくり真似たまま固まってしまう人は向いていないとも言える。
デビュー10年ちょい脚本家からの回答
企画書の書き方、実はわたしもよくわかっていません。わたしの書き方と、他の脚本家の書き方も全然違うし。
大事なのは「何をやりたい」かがはっきり伝わるものにすること。
極端な話、A4一枚でもいいのです。だらだらと多く書いてなくても、まずは「つかみ」ができればいいので長くても3枚ぐらいでいいと思います。プロデューサーが食いつけば、もっと詳しく書けばいいのです。社内フォーマットをA4一枚にしているテレビ局もあります。
書き方としては、わたしは、自分の企画を売り込むコピーだと考えています。だから、テーマが直球でわかるキャッチコピーがあって、小見出しで見どころをまとめて、細かいところはボディコピー風に小見出しに続けて書きます。
映画やドラマなどのチラシやパンフ、あるいはサイトの「作品紹介」もけっこうこの形になっているので、そういうものを研究して、「この書き方、見たくなるぞ」と思ったスタイルを真似てみるのもいいでしょう。キャッチのつけ方などは参考になりますし、思わせぶりな書き方なども盗めると思います。
企画書の書き方も個性のうちなので、あえて基本フォーマットを意識せず、どうやったらこの一枚でプレゼンできるかを考えるのがいいと思いますよ。小見出しをつけるのも、相手の読みやすさへの配慮です。
プレゼンと同じと考えれば、書けたものを友人などにまず見せて「人が読んでわかるか」のチェックはしたほうがいいでしょう。
という2010年の回答を再掲にあたってまとめると
✔︎「何がやりたい」が伝わることが大事
✔︎「作品紹介」のワザを盗め
✔︎出す前に「人が読んでわかるか」チェックを
一行にまとめると、タイトルの企画書は自分を売り込む広告だ!に集約されると思う。
わたしは元々広告代理店のコピーライターで、担当クライアントの一つがFOXチャンネルだった。雑誌広告やメルマガで番組紹介を書いていたのが企画書の練習になっていたと思う。
とくに「Xファイル」の長文あらすじを短くまとめるのは、物語の骨をつかむ勉強になり、とても良かった(英文だったので、英語の勉強にもなった)。「作品紹介」のワザを盗むの、ほんとおすすめ!
自称「おんぶお化け」のセミプロさんは今
セミプロ脚本家さんの質問は、こんな風に締めくくられていた。
本当に、「お前は、おんぶお化けか!」と言われるくらい、おんぶに抱っこで申しわけありません。
こういうチャーミングな表現ができる人は、脚本も面白いのではと期待させる。
逆に、自己紹介もなしに「脚本だけで食べていけますか?」などと想像力もサービス精神もない質問だけを送りつける人がどんな脚本を書くか、推して知るべし。
メールでやりとりできる便利な時代だからこそ、メールの第一印象は大事。
と14年前のわたしが書いたことに、今も同意する。
時は流れ、今はDMでの問い合わせがほとんど。文章が短く、素っ気なくなった分、より第一印象がパキッと見えやすくなった。
企画書をDMやLINEで送る人もいるだろう。出し方は多少変わったが、今、「書き方」を尋ねられたら、やはり同じようなことを答えると思う。というか、このnoteを読んでもらう。
質問者のセミプロ脚本家さんがどなただったのか思い出せず、メールフォルダを掘り返すと、下書きにメールの文面のコピーだけが残っていた。
「自信作ができたら◯◯さんに送ってください。提出するときにプロフィールをあわせて送ると親切です」とプロデューサーの名前を書いている。「このプロデューサーが企画を募集しているから出してみたら?」と声をかけたら、「企画書の書き方がわかりません」と聞かれた。そんな流れだろうか。
個人的にやりとりしていた脚本家さん。あの人かなという心当たりが何人か思い浮かぶ。
全員、今はプロの脚本家として書き続けている。
一方、シナトレは‥‥?
質問に個々に答えたものをシナトレのネタにすれば、他の人とも共有できるし、連載のペースも上げられると思いついてQ&Aを公開することにしたが、その後どうなったのか。
日記内検索をすると、「シナトレ13」で終わっていた。
それっきりかーい!
シナトレ1から13のラインナップは以下の通り。
1 採点競技にぶっつけ本番?
2 頭の中にテープレコーダーを
3 盾となり剣となる言葉の力
4 言業遊びで頭の体操
5 プロデューサーと二人三脚
6 「原作もの」の脚本レシピ
7 紙コップの使い方100案
8 コンクールでチャンスをつかめ!
9 ストーリーを面白く(おいしく!)する5つのコツ
10 ラジオドラマってどう書くの?
11 台詞の前後を考える
12 こじつけ解釈で発想を鍛える
13 企画書は自分を売り込む広告だ!
1と2はnoteに転載している。
今回のnoteに13をつけると間をすっ飛ばしてしまうので、つけないで出すことにする。
企画書舞うタイトル画像
noteの「みんなのフォトギャラリー」にて、デザイナーときどきイラストレーターの「さんの」さんのイラストをお借りしました。ありがとうございます。
「企画書」でタイトル画像を探すと、絞り込みすぎてイメージに合うものが見つからず、「書類」で探したところ、出会ったイラスト。シンプルゆえに想像をかきたて、A4コピー用紙が舞っているようにも見える。色味もとても好き。
目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。