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noteで「今日のあなたに」と入試関係のnoteをおすすめされるようになった。

受験noteってこんなにあったっけ。
増えたのか? 今まで知らなかっただけなのか?

特に東大受験についてのnoteを勧められる。

東大受験noteってこんなにあったっけ。
増えたのか? 今まで知らなかっただけなのか?

それとも、このnoteを書いたから?

去年東大で行われた七大戦での応援団演舞演奏会のことを書いたnote。長らく塩漬けにしていて、公開したのが今年の春だった。


トウダイを落語に

「東大と応援」といえば、「東大を目指す子を応援する親」の脚本を書きかけていた。

シナリオ講座の講師をやったとき、落語台本募集への応募を受講生に呼びかけたのだが、その「書き方の例」として。

当時講座で使ったパワポ原稿を掘り出してみると、

課題 「第20回落語台本・脚本募集」
400字詰め15枚まで  6/30締切
プロット→ハコ書き→脚本
【プロット】入口と出口、描きたいことが伝わる筋書き。
【ハコ書き】 シーンや時間飛ばしの場合は柱を立てる。ワンシーンの場合は転換点を箇条書きに。
【脚本】 400字詰め3枚まで(講座内で打ち返せるよう提出は短めにとリクエスト)

と書いてあった。

さらに赤字で
展開
省略と飛躍
凝縮
と強調していた。

コンクールに出す作品を書くことで「プロットからハコ書きに進み、脚本にする」という基本の流れを実践してもらいたいという意図だった。

参考に「プロット」と「ハコ書き」と「脚本の出だし」を書いて、講義で紹介した。書きかけの脚本を最後まで通し、このnoteを公開する。

創作落語「トウダイ」

プロット

中国から日本に移住した母親と小学生の男の子。日本語をすぐに覚えた息子は「トウダイに行く!」と宣言。日本語が不自由な母親はトウダイがよくわからないが、「イイネ」と応援する。息子が夢を叶えたとき、母はトウダイを灯台だと勘違いしていたことがわかる。知らずに応援していたのかと驚く息子。意味はわかっていなかったが、目標を持って生き生きしている息子を無条件に応援していた。息子は「お母さんは行き先を照らしてくれる灯台だった」と感謝を伝える。

ハコ書き

○ヤンの家・居間
小学3年生のヤン、母親に「トウダイに行く」と宣言。
母親「イイネ」

○同・同(6年後)
中学3年生のヤン、第一志望の高校に入学。
「お母さんと二人三脚でトウダイに行く」 
母親「イイネ」

○同・同(3年後)
高校3年生のヤン、母親に「4月からトウダイに行く」と宣言。「二人三脚で行ケルカナ」と母。「東大」を「灯台」だと勘違いしていた。
「あんなに応援してくれてたよね?」
「ヤンが楽しそうだったから」
「お母さんは行き先を照らしてくれる灯台だったよ」

脚本

語り「このところ、生まれ育った国から日本に移り住む人が増えています。子どもはすぐに日本語を覚えますが、親のほうはなかなか、そうもいかないようで」

ヤン「お母さん! ぼくトウダイに行く!」
母親「トウダイ?」
ヤン「うん。学校の先生がね、しっかり勉強したら、トウダイに行けるって言ってくれたんだ」
母親「イイネ。ガンバッテ。ジャーヨー」

語り「ジャーヨーというのは中国語で『頑張って』。漢字で『加える』に『油』と書きます。まさに燃料をくべるというわけです。トウダイが何だかわかっているのかいないのか、お母さんの応援を受けてますます張り切るヤン少年。やがて第一志望の高校に合格しました」

ヤン「お母さん、ぼく、このまま東大に行く! お母さんと二人三脚で!」
母親「二人三脚、大丈夫カナ」
ヤン「二人三脚っていうのは、たとえだよ。お母さんと一緒に頑張るってこと」
母親「イイネ。ガンバッテ。ジャーヨー」

語り「そして3年後。ヤン少年、いやヤン青年は、ついに幼い頃からの夢だった東大に合格しました」

ヤン「お母さん、ぼく、4月から東大に行く!」
母親「どこのトウダイ行クノ?」
ヤン「東大は東大だよ」
母親「どこの海のトウダイ?」
ヤン「海を照らす東大じゃなくて、東大っていう大学だよ。試験がとっても難しいからガンバッテって応援してくれてるんだと思ってた」
母親「お母さん、知らなかった。お母さん、間違ってた。ヤンが楽しそうだったから、ガンバッテたから、イイネ。ガンバッテ。ジャーヨーって言ったよ」
ヤン「お母さんは間違ってないよ。お母さんは僕の行き先を照らしてくれる灯台だったから」

脚本に補足

書式について

戯曲やラジオドラマではセリフを「」に入れず、

今井  なんということでしょう!

のように、話者とセリフの間を空ける形をよく見る。わたしも舞台やラジオを書くときはそうするが、シナリオ講座では映像脚本を中心に教えていたので、テレビドラマや映画などの脚本の書式にした。ただし、「柱」は「カメラの位置と照明を指定」するものなので、脚本には入れず、語りで時間飛ばしを説明している。

設定について

何度も聞いてきた同音異義語の「東大と灯台」。わたしの故郷、堺では大浜の灯台を指して「うちの子トウダイ行ってきた」などとよくネタにされていた。

堺かるたの「く」の札になっている大浜灯台。

【く】 苦労して市民が作った大浜灯台
青い海と空を背景にそびえる白い六角錘の建物―堺旧港の入口に立つ旧堺燈台は、明治10年(1877年)に完成しました。燈台の築造費は、当時のお金で2,125円20銭5厘を要しましたが、その多くは市民の寄付によるものでした。旧堺燈台は、周辺の埋め立てが進んだ昭和43年(1968年)に、燈台としての役割を終えましたが、昭和47年(1972年)、現地に現存する日本最古の木造洋式灯台の一つとして国の文化財(史跡)に指定されました。

堺市立図書館便り「ゆづりは」第30巻(平成26年3月発行)

映画『嘘八百』にも登場。

則夫(中井貴一さん)と佐輔(佐々木蔵之介さん)を前に学芸員・田中四郎(塚地武雅さん モデルは堺市博物館の矢内一磨さん)が暑苦しいまでに熱く語るシーン。あの灯台。武正晴監督が撮った美しい夕景の勇姿をどうぞ。

大浜の灯台を撮った写真で一番好き。青空より曇り空のほうが似合うかも。

ついでにわたしが撮った一枚も。これも曇り空。

キャラクターについて

東大と灯台。ネタはベタだし、日本語のたどたどしい母親が東大は知らないけど灯台は知っているというのはご都合だけど、トウダイが大学だとわかってなくて応援する母ちゃんが、わたしは好きだ。

いい大学だから応援するんじゃない。あんたが楽しそうだから、頑張ってるから、いいね、頑張ってねと言う。

無条件で無償で無邪気な母ちゃん。理想の二人三脚。

もしも届かなくても、頑張ってたね、楽しそうだったねと母ちゃんは言うのだろう。そっちのバージョンも書いてみたい。

学校といえば、こちらのnoteもぜひ。




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脚本家・今井雅子📻聴き逃し配信中「世界から歌が消える前に」📚11/30座・高円寺リーディングフェスタ
目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。