見出し画像

小説『パコダテ人』(証言3)しっぽ美少女を捜せ!

小説『パコダテ人』(2)発見‼︎しっぽ美人姉妹‼︎続き。

映画『パコダテ人』のキャスティングが気になる方は調べていただき、脳内で変換するも良し。予備知識なしで妄想キャスティングするも良し。

ネタバレになるので、作品のあらすじは一番最後に。最初に読みたい人は目次の「あらすじ」からどうぞ。証言から物語の全容をつかみたい人は飛ばしてくださいませ。

証言(3)

【函館スクープ・網走の証言】「完売でカンパーイ!」の発声の後に編集局長が「一度完売したぐらいで喜ぶな。シッポ人間をうちの独占スクープにするんだ。見つけたヤツは給料二倍!」ってゲキ飛ばして、乾杯もそこそこに、みんな飛び出したんです。

【函館スクープ・稚内の証言】函館スクープが完売することって、めったいにないです。最後に完売したのは三年……いや四年前かな。函館湾に恐竜発見っていういかがわしい記事、そう、ハッシー騒動。あれ以来じゃないですか。

【函館スクープ・早川登の証言】シッポ美少女は僕が見つけるしかないと思いましたね。僕だけが実物に会ってたわけだし。

【函館スクープ・記事】《早くも過熱! シッポ美少女サイト》謎のシッポ美少女をネットが放っておくわけがない。本紙の独自調査によると、すでに14件のシッポ美少女関連サイトが立ち上がり、24件を超える専用掲示板が確認された。いずれも美少女の正体トトカルチョや似顔絵コンテストなどユニークな企画で大いに盛り上がっている。函館市内在住の高橋さんが運営する個人サイト『はこだて人ひろば』内の掲示板では、シッポ美少女関連のカテゴリを設置したところ、一時間に40件を超える書き込みがあった。インターネットの匿名性に疎い本紙記者が「僕がスクープ写真を撮った記者だ!」と名乗り出たところ、ヒーロー並みの大歓迎を受ける一方、「シッポ美少女のプライバシーを奪うな!」と集中砲火を浴びる羽目に。同じくシッポ美少女を名乗ったニセモノも嘘がバレて即座に追放となった。

画像1

【日野ひかるの日記】最高な気分と最低な気分は、簡単に逆転する。ため息つくと、幸せが逃げちゃうんだよ。みちる姉ちゃんに言われてから、気をつけてたけど、ため息でもこぼさないと、破裂しちゃいそう。

【ぬいぐるみのくまの証言】ホワイトベリーの炭酸水が鳴ったよ。さいあくな気分のときにも、けいたい電話は明るい声でひかるちゃんを呼び出すの。画面に隼人君の名前が出ていたよ。ひかるちゃんは、ちょっとまよってから、電話に出たよ。隼人君の声はちょっと緊張していて、「今、家の前にいるんだけど。会えない?」って言ったと思うの。

【てるてる坊主の証言】ひかるちゃんは窓のとこまで来て、そっとカーテンを持ち上げたの。目が合った瞬間、隼人君が「あっ!」と目を見開いたの。アタシも悲鳴を上げそうだった。ひかるちゃんのシッポ! いつもは、たらんと垂れてるくせに、隼人君に手を振るみたいに、大きく伸び上がってるの。バットのおばけみたいに大きくなった影がカーテンに映って、ゆらゆらしてた。ひかるちゃんはシッポを押さえつけてしゃがみこんだ。だから、その後、隼人君に何が起こったのかは知らないの。

【自転車の証言】ぼくは隼人君の自転車です。いとこのお兄ちゃんからのおさがりで、ちょっとオンボロだけど、隼人君はだいじに乗ってくれてます。心のやさしい男の子なんです。あの夜、隼人君は二階の窓でゆれてる影を見て、後ずさりしはじめました。映るはずのない影だったからです。隼人君はオバケとか大の苦手なんです。夜道を走るとき、草むらから猫が飛び出しただけで、ハンドルから手をはなしそうになったりします。いきなり、黒ずくめの二人組が隼人君にぶつかってきました。地面に四角い平べったい物が散らばって、二人組は大あわてでかき集めました。そして、隼人君にごめんなさいも言わずに走り去りました。でも、とってもあわてていたせいか、一枚だけ忘れていました。隼人君は、それをぼくのかごに乗せて、家に帰りました。

【謎の覆面男Aの報告】大正湯の前で高校生ぐらいの男の子にぶつかりました。顔は見られていません。覆面ですから。回収時には九枚だった気もしますが、持ち帰って確認すると八枚でした。現場には落としてはないはずなので、最初から八枚だったのだろうと思います。いずれにせよ一枚は使われたということです。

【長尾製薬営業マンの抗議メモ】 発売中止ってどういうことですか! 社運を賭けた新製品でしょ! 社長と話をさせてくださいよ!  一日中会議室閉じこもって、何話してんですか!

【まもるの証言】「腰痛でしたら、よく効くシップがありましてね。長尾製薬から今度出る……」って出そうとしたら、ウルトラシップの試供品が消えてたんです。前の日、店を閉めるときまではあったんですけど、おかしいなあって首かしげてたんですよ。

【ぬいぐるみのくまの証言】ひかるちゃんは頭がガンガンしていたの。おねえちゃんがすごいいきおいで服を作っては見せにきて、「これでファッションショーやっちゃう? モデルはもちろん、ひかる! 世界初のシッポモデル!」なんて言ったからだよ。

✒︎続きは小説『パコダテ人』(4)で。続きを公開する励みになるので、コメント歓迎。
✒︎他の作品も読んでみたくなった方は、連載小説『漂うわたし』(毎週土曜21時更新)を。

『パコダテ人』あらすじ(ネタバレ注意)

函館で銭湯を営む日野家は、父まもる、母ちづる、自称ファッションデザイナーの姉みちる、高校生の妹ひかるの4人家族。ある日突然ひかるにしっぽが生え、地元のスクープ紙「函館スクープ」記者・早川登に追われることに。

ついにすっぱ抜かれ、仲良し家族が危機に見舞われるが、「しっぽは欠点じゃなくておまけ。日野ひかるにちっちゃい○がついて、ぴのぴかるになったみたい」とひかるがテレビでカミングアウトしたところ、たちまちアイドルに。ハ行とバ行がパピプペポになるパコダテ語(北海道函館市は北°海道函°館市に)やフェイクしっぽファッションが流行る。

ところが、「パコダテ人のしっぽはキタキツネのしっぽ。キタキツネには寄生虫エキノコックスがいて、命を落とすことも」という学者の発言をきっかけにパコダテ人差別が始まり、アイドルから一転、追い込まれることに。同級生・隼人との恋の行方もしっぽ騒動で振り回される。

一方、男手ひとつで娘のまゆを育てる函館市役所職員・古田まもるにもしっぽが。まゆの担任の文子先生といい雰囲気なのに秘密を作ってしまい、ぎくしゃく。

どうなるパコダテ人たち⁉︎

そして、罪作りなしっぽの原因は一体……⁉︎


目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。