13年前の漢字連想ゲーム
日記はつけておくものだとつくづく思う。
本人の頭からすっかり抜け落ちている(実際には地層の奥深くに沈んでいる)記憶を呼び覚ましてくれる。脳みその外付けハードディスク。
13年前の日記に、こんなことを書いてあったのを見つけた。
¥→羊→美
¥→辛→幸
美しい羊には¥(円)がある。高く売れるのか、はたまた、お金がかかるのか。
幸せの中には辛さがあり、その中には¥がある。お金と試練の先に幸せがあるのか、人生山あり谷ありを意味するのか。
記号的な分、いろんな解釈ができて哲学的。漢字連想ゲーム。面白い。
それから13年。中国語を学ぶ今は「¥→关」を連想した。簡体字の「关」は「関」から門構えを取ったもの。
¥→关→美
お金の関係は美しい、はたまた、美貌は金絡み!?
ツイート(Xとはまだ呼ばない)を掘り起こすと、「¥→辛→幸」を気づかせてくれたのは、脚本家仲間の阿部桃子さんだった。
「辛+一=幸」の漢字足し算は、脚本を書いた映画『子ぎつねヘレン』の終盤に登場させた。映画から生まれた絵本『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』にサインをするときは、「辛さを幸せに変えるのは、たった一人の強い味方」と書いている。
いまだ重版はかからないが、amazonでは中古本が11円から。希少本ということで5000円を超える出品も。
見た目で韻を踏む
そう言えば、少し前、「細腕」を「細胞」と読み違えたのが面白く、メモ帳に書き留めた。「細腕繁盛記」が「細胞繁盛記」となっていても、脳内では正しく変換できてしまいそうだ。「ほそうで」を「さいぼう」あるいは「うで」を「ほう」と打ち間違えることは、キーボードの距離感的になかなかなさそうだが、見た目がご近所なので、OCRで読み取ると間違いやすい。
OCRとは光学文字認識(Optical Character Recognition)のこと。テキストの「画像」を「文字コード」に変換するので、文脈度外視で形状が似た文字をしれっと出してくる。「偏」や「つくり」のどちらかが違ったり、雰囲気は似ているけど全く違う成り立ちの漢字や時には記号に化ける。見た目が韻を踏んでいる状態。
子どもの頃、「品川」駅への切符を「Three boxes and three lines, please」と伝えた海外からの観光客の話を読み、漢字を形で捉えるとそうなるのか、と感心したのを思い出す。OCRのソフトウェアも、そんな感じで読み取った漢字を分解して変換しているのかもしれない。
文字が別なものに化けたると、意味が変わって誤解を呼ぶこともあれば、新たな解釈から妄想をかきたてられ、物語が生まれることもある。
「藤本」が「脚本」に見えたというTwitterでのやりとりから膨らませたのは、「流しのMCフジモト 脚本家をヨイショするの巻」。「藤」と「脚」、どちらも「月」が入っているけど、普通はなかなか見間違えないし、OCRだって混同しないだろう。「藤本」が「脚本」に見えてしまうのは、かなりの重症だ。
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2023.8.26 こもにゃんさん
2023.8.28 宮村麻未さん
2023.9.4 宮村麻未さん