贋物とリアル(ブックカバーチャレンジ4日目)
コロナ禍が始まったばかりの2020年春。誰かが始めて広まった7日間ブックカバーチャレンジ。
「7日間ブックカバーチャレンジ」とは?
📕読書文化の普及に貢献するためのチャレンジ
📕参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿
📕本についての説明なしに表紙画像だけアップ
📕毎日1人のFB友達をこのチャレンジに招待
facebookに投稿したものをnoteに引っ越し4日目。教え子で映画監督・脚本家の笹谷遼平さんを巻き込んだ3日目はこちら。
以下、2020年4月に時を戻してお読みください。
それはそれ。これはこれ。
初めてのLINEビデオ通話でバーチャル着せ替えごっこを楽しんでいたら連投が途絶え、1日お休みしての4日目。
いつまで続くかわからないこの災禍、適当さがないと身が持たないよねーと普段から大雑把な自分を正当化。
落語友3人でのビデオ通話は、春風亭一之輔師匠の十夜連続ライブ配信(上野の鈴本演芸場でトリを務める予定だった20:10頃からYouTubeにて春風亭一之輔チャンネルの話題に始まり、配信どころかSNSでの消息不明な師匠方を案じ、
「あの方々は年金があるから生活はなんとかなっているのでは」
「それより厳しいのは二ツ目では」
「デリバリー落語なんてのもやってるけど、身の危険はないのか」
「それもネタになるのでは」
「ネタになるなら良いけどシャレにならんのはあかん」
などとバーチャル井戸端会議。
一之輔師匠のライブ配信は、今夜が九夜目で明日が千秋楽。毎夜、約1万人が視聴し、チャット欄の流れに目が追いつかないほどの書き込みが。
五夜目、六夜目は投げ銭もでき(スーパーチャット呼ぶらしい。略してスパチャ)、何万円という太っ腹が続出。ご祝儀の景気づけもあるかもしれないけど、間を置かずに投げ込まれる金額に落語を愛する同志の存在を感じて気分が高揚するのは、ミニシアター・エイド基金の金額の伸びにときめくのと似ている。
七夜目、八夜目は投げ銭なし。気まぐれでやってますけど、出したかったらどうぞな媚びてない感じが粋。人気を取ろうとして滑っている人が目立つ今日この頃、なおさら粋。
今夜また投げ銭が復活したら、二日の間に溜まった投げ銭欲が発散されるのかも。千秋楽にまとめてボンと払う気満々の人もいそうだし、一晩ですごい額が集まるのではと思う。
五夜目だったか、噺の途中で誰かが「スパチャ30万円越え!」と書き込んでいた。鈴本の夜席で、木戸銭3千円×100人分に相当する金額。鈴本の定員が285席だそうで、満員御礼なら85万5千円。その額をスパチャで稼げてしまう可能性がある。
スパチャがすごいのか、一之輔師匠がすごいのか。
どちらもすごいのだろうけど、オンライン配信の便利さを享受しつつ、「これは別物」という思いも日に日に募っている。
チャットを見ながら落語を聴くのは、ツイッターを見ながらドラマを観るのに似ている。新しい楽しみ方。おまけの楽しみ方。でも、脇に気をとられる分、本編への集中は差し引かれている。作り手にとっては、「落語だけ、ドラマだけじゃ持たないの?」ということになるだろう。
それはそれ。これはこれ。
他人のツッコミやウンチクに引っ張られず、自分の想像力で物語を完成させる体験とは別物。
生と配信の違い
そもそも、生の高座と映像(配信)の高座が別物だ。
その違いを「目の前の料理とテレビで見る料理」に喩えたのは、渋谷らくご(シブラク)キュレーターのサンキュータツオさんだったか。
実際には映像でも落語は味わえるし、うまいものはうまい、まずいものはまずいとわかる。観客のいる映像(過去のYouTubeにワンサカ)には笑い声が入っているけれど、緊張や安堵のため息、うなずき、背中の角度(食いついているか、寝ているか)、メモを取る人、お弁当を食べる人、お酒飲む人それぞれが発するザワザワした音や気配は映像越しでは味わえない。
と考えると、「お店で食べる料理とテイクアウトの料理の違い」に近いかもしれない。
高級レストランの料理を自宅で楽しめると喜んだ人が物足りないと感じ、お店の雰囲気やサービス込みであのお値段だったのだと気づいたというエピソードを少し前にツイッターで読んだ。長年やっていた店を閉めることになった店主が「テイクアウトをして生き残ろうとは思わない」理由に、店に客が入っているざわめきや手触りがやり甲斐だからと挙げているのも読んだ。
そう。その感じ。「生でしか味わえないもの」の存在が、映像を見ることで意識され、恋しさが募る。
落語だけでなく、映像である映画も、映画館のスクリーンと椅子とまわりの観客の反応があるから没頭できるんだと気づく。
もちろん演劇も、音楽も。
国内外のプラチナチケットの舞台やコンサートを自宅でパジャマ姿のまま楽しめてしまう。
ありがたい。でも、何かが足りない。
曲の合間に誰かが小さく咳払いをしたら、それが連鎖して、「取り合えず今出しとこか」という感じで、あちらこちらからコホコホ聞こえる。あれも劇場でしか聞けないと思うと、懐かしい。
そして、この物足りなさを、いつ終わるかわからない自粛期間が明けるまで、持ち続けていたいと思う。
課金にも壁があるらしく(YouTubeの場合は、チャンネル登録数1000以上、過去12が月の公開動画の総再生時間4000時間以上)、課金したくてもできなかったり、この機会に知ってもらおうと先行投資のつもりで無料配信しているものも多いけれど、「無料で消費できるコンテンツ」に慣れないでいたいと思う。
本屋さんで本を買うのとネットで本を買うのも、生の高座と映像の高座の違いに通じるものがある。平積みの本から一目惚れの一冊を選ぶ楽しみを我慢している人も多いなか、本の説明なしに表紙だけアップするブックカバーチャレンジは、オンライン「ジャケ買い」促進効果があるのかも。という話も昨夜のLINE通話で出た。
堺を熱くする松永友美さん
というわけで、気がつけば、「だ・である」調になっている4日目の本は、ある意味「別物」についてのお話。
そして、4人目に巻き込むのは、「熱い人」多めな友人の中でも温度、熱量ともにずば抜けていて、故郷から熱き堺愛と古墳愛で焚きつけてくれる松永友美さん。
二人で酔っ払って「堺はまだまだやれるのにもったいない!」と息巻いていると、うちらが世界でいっちゃん堺のこと想ってるんちゃうん?と錯覚するほど、人を熱くする巻き込み力もハンパない。
直感、実感で行動する松永さんは「生もの」の人。生で会って、生ビール飲んで、堺しっかりせぇや生会議したい!
と愛を込めてバトンを。
松永さん、頼んだで。
1人目、六本木「さかなのさけ」の田中秀嗣さん、2人目、ハーブ料理コンシェルジュの小早川愛さん、3人目、シナリオ講座の教え子で映画監督・脚本家の笹谷遼平さんと来て、松永友美さんで4人目。今日で中日(なかび)。
FBに顔を出して本棚に風を通すきっかけをくれた落語友で一之輔師匠愛が止まらないビューティライターの前田美保さん、ありがとう。
ここから先は2024年12月に追記。
堺の手触り
ブックチャレンジの少し後、松永友美さんをnoteに誘った。キナリ杯に出してみない?と。
自身のnoteの他に「ちりんさん」というnoteを始めた。
堺スタイル開運着物コーデ知輪-chirin-。
《堺好き着物好き古墳好きな変態店主 松永友美が「ただただ好きなモノを広めたい!」という一心から立ち上げた体験事業》とある。好きが高じて突き進む松永さんらしさあふれる紹介。
コロナ禍の打撃は大きかったと思う。でも、松永さんはソーシャルディスタンスにひるまない熱さで周りを巻き込んでいた。
堺の和体験&ゲストハウス「知輪」(chirin)をオープンさせたのは2022年9月。2023年には堺かるたを広めるクラファンを実施。
堺かるたと今も続く児童文芸誌「はとぶえ」を作った別所八十次先生は、わたしが通った堺市立高倉台小学校の校長先生だった。小学校時代の大半が別所校長時代で、堺かるたと「はとぶえ」に物書きの根っこを育ててもらった。堺の宝を守る松永さんの存在はとてもありがたく頼もしい。
海外からのお客様向けの和文化体験事業も。「地元ならではの食・体験でおもてなし」「人数・日程・時間によって様々なツアーコースをカスタマイズ」とのこと。
堺でいろんな人に会うと、必ずと言っていいほど名前が出てくる松永友さん。「あんたも知ってるん?」と驚かれることもなく、知っていて当たり前というくらい浸透している。堺のすべての道は松永さんに通じているのか。