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美貌の若君の狂気〰️どんな因果を秘めていたのか

狂気は多重人格のなせる技

 宮部みゆき原作「この世の春」上・中・下の3冊は長編ながらスルスルと短時間で読み終えました。それ位、彼女の魅力的な文章は私の心を捉えました。
 6代将軍徳川家宣の時代、下野の国(現在の栃木県)北見藩主北見重興の押込騒ぎからこのお話は始まります。押込とは、今で言う強制隠居と言うことです。
重興の乱心に困り果てた藩の筆頭家老、脇坂勝隆ほか4席の家老達が事を公にせず重興の
病気を理由に従兄の尚正を新藩主に立て、重興を押込と言う仕義になりました。

重興は何故乱心したのか?

 藩主の別邸である五香苑の座敷牢に閉じ込められた重興は、元江戸家老で五香苑の館守となった石野織部、担当医師の白田登、各務多紀と従弟の田島半十郎など五香苑の温かい人々のおかげで次第に心のうちを見せてくれる様になりました。
特に多紀は、祖母や叔母が霊魂と意思を通じ合わせる技の使い手であった為織部に起用されたが、重興の人格の1人「琴音」と仲良くなり一松(重興)の代わりにこれまで起きた事を話してくれる様になりました。 

事の原因は、父の成興の政策でした

 名君と讃えられた北見成興は、良かれと勧められた政策がある人達の恨みを買い(狭間)と呼ばれる忍者、九蛇(五郎助)と邪悪な娘桐葉により呪いをかけられた成興は、重興の人格の1人羅刹により殺されてしまうのでした。

何故、重興は多重人格者になったのか?

 呪いをかけられた父成興と邪悪な桐葉により重興は、10才未満の頃より非道な目に会わされ周りの誰にも相談できず、内にうちにため込んでしまった為4人の人格を作り上げ、自らは奥に隠れてしまうことになりました。
人格の1人「琴音」は女の子の名前ですが、重興の母美福院が女の子の名前にすると丈夫に育つと言う事で一時この名前で呼ばれていました。また、一松は重興の幼名です。
時々出てくるのが桐葉と怒りの人格羅刹です。
多重人格で日本でも有名な「24人のビリーミリガン」はダニエルキイスの著作にもなっています。ビリーは小さい頃養父のチャーマーミリガンに精神的、身体的虐待を受け、その影響で人格が複数生まれることになったそうです。

結末は如何に

 執拗に重興を襲う桐葉と九蛇を羅刹が殺してしまう事で、黒幕は分からずじまいでしたが一応一段落がつきました。重興に多くの味方ができたので、琴音は安心してあとの2人を連れて消えてしまいます。
結局、重興と多紀が結ばれる事で多紀に想いを寄せていた、白田医師と半十郎の悄気かたが可哀想でした。
でも、原作名の「この世の春」の意味がいまだにわからないのですが、こう言う事はあまり深く考えなくて良いのですね。

【出典】この世の春(上・中・下)新潮文庫
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