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東京近江寮食堂

 寺島妙子が東京下町にある近江寮食堂の賄い婦になったのは偶然が重なった末の事でした。妙子の夫秀一は、仕事に行くと言ったきり消息を絶ってしまったが、今年の夏10年ぶりにはがきが届いた。「生きていた」すっかり諦めていたがはがきの消印が本郷になっていたので調べたら東京にありました。妙子は定年退職前の年休消化を取り、とにかく東京へ夫を探しにやってきました。

 妙子がアメ横で財布を落とし、困っていた所を近江寮食堂の管理人、鈴木安江が財布を拾ってくれた縁で食堂で働きながら夫を探す事になりました。渡辺淳子さんの物語「東京近江寮食堂」を読んで、ごく普通の主婦が寮の住人達から食事が美味しいと救世主のように崇められているのは、妙子がこれまで真剣に料理と向き合っていたからだと思います。私も仕事と家事を何十年とやって来ましたが、恥ずかしながらいかに手抜きをしようか考えてばかりでした。

 寮の住人の池花透さんと奥さんの忍さんには驚きました。忍さんは病気の治療の為、東京へ度々来ているが今回だけでも3ヶ月の入院期間でした。透さんは付き添いで介護も長期間に及ぶが、献身的に忍さんに尽くしています。透さんは初老だけど爽やかで、奥さんを一途に愛してる素敵な人でこんな男性がいたら一遍に好きになると思います。ある日、忍さんを寮に招待した時、住人のみんなは唖然としました。

忍さんは男性だったのです。

 妙子は短い間東京にいるつもりだったので、一旦滋賀の我が家へ帰ったら夫から
のはがきが届いていて「もう少し待ってくれ」と書いてあった。近江寮の住人、光成から管理人安江の母ヨシ子が妙子の料理しか受け付けないので早く東京へ戻って来て欲しいと連絡して来た。このままではヨシ子の身体が危ないと緊急を要した。妙子は仕事を辞めて生活の為近江寮食堂を始める事にした。そこでいつになるかわからない秀一の帰りを待つつもりでした。

 人は「奥さん、10年以上もよく我慢したね、どうして気持ちが続いたの?」と
問うてくるが、その間たぶん自分の時計は止まっていたが、自分にとって、必要な時間だったと思う。果たして、妙子は夫秀一に会う事が出来るでしょうか?

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