やっぱり、本屋をはじめたい。その①
2020年6月、大阪国際空港にほど近い蛍池に小さな書店が生まれました。
その名は「ページ薬局」。そうです、この本屋さんは、調剤薬局さんです。
本屋を併設した、薬局。この組み合わせを考えついたのは、薬剤師の瀬迫貴士さん。瀬迫さんは本も好きだけど本屋が大好き。だけどこの出版不況の最中、残念なことに書店は次々と姿を消していっています。
できることなら、自分が書店を開きたい……。そう願っても、現在、書店を新たに開業するには、たくさんのお金が必要で、手続きも煩雑です。何よりも、書店単体で経営を成立させるのはとても困難であり、儲けを出すのが難しいのです。
悩んだ挙句、思いついたのが薬剤師である自分の強みを活かして、調剤薬局に本屋を作ってしまおう!という考えに至ったのです。
しかし、実際に本屋を開業するにあたっても、どのようにすればいいのかわからない……。その思いを綴ったブログを、私の友達の薬剤師さんが教えてくれました。
私はそのブログを読むや否や、何かを感じてすぐにSNSを通じて、瀬迫さんに連絡をとり「手伝わせていただきたい!」と申し出たのです。
私は書店で勤務する傍ら、ツクヨミプランニングという個人事業を立ち上げており、個人書店のサポートをしています。前年に小さな絵本屋さんの開業を手伝っていたので、そのノウハウも活かせると思いました。
それから、一気にページ薬局開業に向けて動き出したのです。
開店の経緯やお店の紹介はこちらで詳しく紹介していただいております。
開店後は、テレビ、新聞、ラジオなど様々なメディアで取り上げられました。
しかし、話はこれだけで終わらないのです。
ページ薬局を開店してから、1年がすぎ、いくら小さいとはいえ実際の書店運営の厳しさを肌身で感じた瀬迫さん。欲しい本が入荷しない出版流通の仕組み、新規参入するためのハードルの高さ、様々なことに疑問を感じました。
私も何度か質問をいただき、意見交換をしましたが、出版業界に身を置いている自分は、疑問を感じながらも「そういうものだから仕方がない」と思っていました。こんな風に諦めるか、怒るか。書店員の大半はどちらかです。
「難しいのは承知で、書店単体で運営できる方法はないか」と考えるようになった瀬迫さんは、とある取次会社さん(本の問屋さん)に意見交換をしたい、と打診されました。そして、取次会社さんは、場を持ってくださったのです。私も同席させていただくことになりました。
当日は、いろんな意見が交わされました。中でも、「この出版業界、書店員の前で給料の話はタブー」という話を私が切り出したところ、瀬迫さんはびっくりされました。そこで、書店員さんに年収◯◯◯円保証したら、売上は上がるのか?、だったらそれはどんな書店なのか?といった議論になりました。
到底、時間が足りなくなり、取次会社さんは定期的な意見交換の場を設けて、理想的な書店のモデルを考えよう、という話になりました。
「ページ薬局」の開店を二人三脚でやってきた瀬迫さんと私。2020年6月に開店してちょうど1年後、また新たな段階へと入った感覚です。この取次会社さんとの会合は月に1回、今月で5回目になりました。
次回は、その様子をご紹介したいと思います。
読んでいただき、ありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?