知って――愛のこもった食材を丁寧にいただくことで「心も体もほんとうに豊かになるんです」
この記事の元となる音源「Morning House」は、音声SNSアプリClubhouseで毎朝6:50から配信しています。一週間で一人の人生が「劇的」に変わる、新感覚のライフチェンジング番組です。
https://www.clubhouse.com/club/morning-house
Before-Afterのような「劇的な変化」を起こすプロデュースで、一人の人の生き方を変える「Morning House」、今週のライフチェンジャーはあべなるみさんだ。彼女は、「愛のある食」の魅力、また、その豊かさで生き方さえみずみずしく変わるという「食の力」を伝えたいと願っている。ここでは、現状の課題がどこにあるかを確認し、一週間の言葉をつむぎはじめたい。
畑に入り農家の方と交流。その原点とは
「食」をめぐる情報は、世の中にあふれている。どの食品が健康に良いのか、どの栄養素が何に効くのか、いま流行っている食は何か――あまりの情報の多さに「食のリテラシー」ということさえ言われている。ところが、ある種の熱狂がここにあるにもかかわらず、「心身を満たしてくれる食」を追求している人はまだまだ少ない。食の情報は、人びとに届いていないのだ。あるいは届いていたとしても、情報にふれて意識的に食を変える人と、そうでない人との二極化が進んでいる。カオスの雲は、分厚い。そこに雲間をつくり、大地に光を届かせようとするあべなるみさんは今、「愛をお腹へ」とのコンセプトのもとに、さまざまな発信や、農と食、食と人、農と人をつなぐ取り組みをしている。愛のある食の魅力はどうしたら伝わるか? 生き方をも豊かにする食の力はどうしたら伝わるか? 工夫と知恵に満ちた彼女のウェブメディア「ハタケト」はとても秀逸だ(リンクは最下方)。
そもそも、なるみさんはなぜ現在の取り組みを始めたのだろう。
「畑って、もともとは足を踏み入れるところではないのかなって思っていたんです。でも、いつしか食に興味を持ち始めて農学部に進学して、農家の人と交流したり畑に入ったりするようになったんですね。その時に『魅力的なものがたくさんある!(なのに知られていない)』って感じたんです。農業のことや魅力をみなに伝わるように翻訳して、価値化して届けることができたらなあって。それを『私がやろう!』って思ったのが始まりです」
なるみさんは1歳8カ月のお子さんを育てている「ママ」でもある。子どもの体の大切な要素になる「食」への関心は、子育てによってより高まったかもしれない。
ほんとうに思いが乗った食材は、人を幸せにする
彼女のミッションは明確だ。
「複雑化したフードシステムの中で、こぼれ落ちてしまういのちや愛。埋もれてしまう個性。注目されにくい文化的意味。量を動かすことばかりに目が向けられる世界で、それらを掘り起こし、暮らしている方へおつなぎする」(引用は彼女のnoteから。リンクは下方)
この一節にも、なるみさんの原体験が反映されている。
「広告代理店にいたころの私は、それこそ深夜までバリバリ働くような感じで、食がどんどん雑になってしまったんですね。時にハッとして、少しでもいいものを食べようと成城石井に駆け込んだりしたんですけど(笑)、そこから食にこだわるようになって、二つ、気づいたんです。一つは『ほんとうに新鮮で思いのこもった食材を食べると、私自身がまず幸せになる』ということ。もう一つは『ほんとうにおいしい食材なら、あまり手間をかけなくてもおいしい料理になる』ということです」
ほんとうに思いが乗った食材は料理の手間もスリムに
"そういった食材"なら、ちょっと塩を工夫してかけるだけで感動の味わいが口の中に広がるという。これは、料理をしながら時短もしたいと願っている人びとに朗報である。また、農家の方々の思いが感じられる食は、心も体も満たしてくれるし、とてもヘルシーだともなるみさんは言う。
この魅力を多くの人に伝えたい。そこから彼女は、これまで、農家のブランディングなどに心を砕いてきた。
「すでにある魅力について、『ここがあなた(農家や作物)の良さですよ』『それをこう伝えていけばいいですよ』ということは言葉やデザインで表現してきました」
その上でこれからは、「生産者=農家をどうブランディングするか」から「どのように関われば(発信すれば等)、消費者の方々に農や食の魅力が伝わるか」という問いに取り組むフェーズに移りたいと彼女は考えているそうだ。「食べ手(消費者)のみなさんに、『愛をもって育てられた食材で暮らせたら最高だよ』って言っていける人になりたいなって思っています」
食への愛。「小松菜ちゃん」エピソード
なるみさんの話を聞いていると、心の底から食を愛しているのだと感じる。たとえば彼女はこんなことを嬉しそうに語っていた。
「旬の食べ物ってありますよね。夏は夏野菜とか。それが秋になった時に私、『あ! やっと小松菜ちゃんが出た!』ってなるんです。食材との出合いにほんとうに感動するし、料理して、食事でいただく際の『あなた、うちに来てくれてほんとうにありがとう!』って気持ちがもう自然にわくというか。その時の味って――もちろん食材そのもののおいしさもありますが――心と体が『おいしい!』ってなるんです」
「食に関わっていくと、知らない子も出てくるんですよ。いまの時期であれば、『おおまさりちゃん』っていう落花生の品種をゆでて食べるとおいしくて。そういうの、私、知らなかったんですね。でも、食べてみて『マジでおいしい!』ってテンションが上がりました」
これを聞くと、マーケティングもなりわいにしている筆者的には、「なるみさんご自身がもはやコンテンツじゃん!(笑)」と思ってしまう。
実際彼女はこうツイートしている。
……自覚、あるじゃん!(笑)
彼女は、発信の担い手としてInstagramの準備をしているようだ(並行して、食材のセレクトショップ的なものも、リアル店舗にしろECにしろ、視野に入れているともいう)。農家のブランディングを今後も続けるかどうかについては迷っているものの、発信については試行錯誤を開始していると彼女は言う。いいぞー。
まず、なるみさん自らがどんどん露出していこう
現在の農業の生産現場は、どうしても「量」重視になりがちだ。それは都会の食を途絶えさせないという至上命題があるからである。当然、農をめぐる仕組み自体が「量」重視になるよう作られている面もある。ここを打破したい。今日の「Morning House」では、まず、なるみさん自身が「積極的に自分を露出させていく」ことに躊躇していたので、さっそく背中を押した。始まりは、そこからである。
「『量』重視の農家さんが主流にはなっているんです。でも、そんな中でも、愛を込めて、丹精込めて、わざわざ手間をかけて育てている人もいます。そういった農家さんの食材って、ほんっっっっっとうにおいしいんです」
この感激の度合いは、間違いなくコンテンツになる。具体的には、彼女自身が行っている「生産者や食材を知る → 食材を求める → 食材を料理する → いただく」といった一連の流れを「なるみ流メソッド」的にかたちにしてみることだ。どのようにして、なるみさんが食と向き合っているのか。それを要素分解して、「Morning House」のオーディエンスにも加わっていただきながら吟味し、皆がわかるメソッドとして提供できるようにすると面白い。ここにネーミング作業も入るだろう。
新しい"食のセレクトショップ"を作りたい
また、先にしるした「セレクトショップ」という話についても課題を解決したい。いま現在、農家と食材と消費者がつながって、農家から食材を直接買う「食べ手」が増えている。しかし、場合によっては、それによって農家の負担が増えてしまう。たとえば、ただでさえ忙しい農家の方が注目を集めるために自ら発信もして、消費者に向けて梱包・送付までするとなったら……大変になることは間違いない。なるみさんはこの点に関わり、農家の方への負担が限りなく減るサービス、セレクトショップ・物流・倉庫業などを組み合わせたもので農を盛り上げていきたいと考えている。
「食べ物を実際に動かしたり、賞味期限を管理しながら在庫を保管したりといったことって、私、ほとんど何もわからない状態なんですね。そこから学ばなきゃと思っていて……」
セレクトショップをつくるにあたって最初の一歩となるのは
①上記ビジネスモデルの明確化と課題の洗い出しがしたい
②物流や倉庫業といった未知のビジネスについて知りたい
③セレクトショップは、なるみさんOnlyでなくチームで動かしたい
という"要請"に応じることだ。記録として明記しておく。
「愛のある食べ方」を世に定着させたい
その上で「Morning House」としては、いま彼女にとって大切な「食べ手=消費者とつながる」「消費者の実情を知る」「消費者の声を聞く」を支援していく。ここを軸にしつつ、セレクトショップにつなげられるヒントを発掘したい。
だが、あくまで焦点は、いわば「愛のある食べ方」の定着であり、なるみさん流のメソッドをつくって世に広める仕方をかたちにすることだ。おそらくなるみさんは、そこのイメージがわき切っていない(失礼でスミマセン)。イメージが輪郭をまとったら? たぶん、なるみさんは自ら発信したくなるだろう(僕らが後押ししなくても)。今週設ける「消費者とのかかわりの場」は、上記の方向性を決める場にしていく。
メソッドの愛称は――なるみ流「食材の楽しみ方」になるだろうか。なるみ流「食でごきげんになる方法」になるだろうか。言語化の旗手・前刀禎明さん(現リアルディア代表取締役社長、アップル米国本社元副社長)が矢継ぎ早に言葉を発し始めた。
勢いが出る。伸び行く可能性を感じる。今週が、楽しみだ。
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