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「喫茶ランドリー」の次は「まちのフードコート」をつくってみました!ひとつの空間に3つのお店.その名は「オラ・ネウボーノ!」①

隣の菊川駅に喫茶ランドリーをつくる?

喫茶ランドリーがグランドオープンしたのは2018年1月。田中がグランドレベルを創業して、一番最初のプロジェクトが、広告塔になり、その後全国で実にさまざまなプロジェクトにお声がけいただいて。私たちが喫茶ランドリーで培った設計デザインの理念は、いろいろな場所に活かされていくことになりました。

喫茶ランドリーは、設計デザインだけではなく、運営そのものも自社で行うことになり、その後、森下・両国から、神奈川県の宮崎台、座間と、企業かからの依頼で増えていったわけですが、僕らはカフェ経営のプロではないので、そのスタイルは、3店舗でやめておこうとあるときから決めていました。

そんなある日、連絡があったのは萬富という会社。森下の隣町、菊川駅近くに建てる新築マンションの1階に喫茶ランドリーをつくってほしいという依頼でした。

4店舗目は厳しいなという想いがあった上に、依頼された場所が森下の隣駅、菊川駅近くだったのです。僅か1キロほどのところに、同じお店はなかろうと。

丁寧にお断りしたのだけど、クライアントさんと話続けると、儲けではなく、まちのためにやりたいという気持ちが伝わってきました。マンションはただのマンションではなくて、子育て応援型マンション。1階に住人専用の託児所があって保育士さんがいつもいて、いつでも子供が預けられる。保育士さんが、マンション管理人も勤めると言います。(同じタイプの1つ目のマンションが数年前に完成していて、すでに魅力的な形で運営されていました)

https://www.mitsui-chintai.co.jp/resident/original/neuvono/
(ネウボーノ菊川2)

子育て応援型マンションの1階に

物件の敷地は、錦糸町エリアと東京現代美術館へと南北を抜ける三ツ目通り沿いの1階スペース。通常だったら明らかにコンビニになるような区画を、マンション住人だけではなく、地域の人々も日常的にアクセスする場所にしたい。

そんな熱意に応えたくなっていった私たちは、気づけば新しい施設の発明をしましょう、新しい企画の話をはじめていました。

最初に私たちが考えたのは、とにかく自分たちがスタッフを雇いカフェを運営するようなスタイルはやめようと。それよりも次は、他の市井のひとびとにチャンスが与えられるような場所になるといいな。そんな想いで最初に描いたポンチ絵。飲食とか活動ごとのスペースとか混在するイメージ。この上が十数階建てのマンション。

その後打合せを重ねながら、いろんなコンテンツが盛り盛りになっていって、イメージは膨らんでいって。飲食部分はシェアにしようということは共有しつつ。区画の奥がマンションの中庭とわかったので、そこもツーツーでつながるようにできたらなと妄想したり。でもセキュリティはどうするのか?だとか。

いろいろとイメージや言葉もつむぎながら、一体この場所はどんな場所になるのだろう?ということを、ひたすら自分たちで、あるいはクライアントと議論し、共有していく日々。この頃から、設計者にいつもタッグを組ませていただいている石井大吾さんにも加わっていただいて。

徐々にひとつのシェアキッチンではなく、複数にしようと。そしてそれぞれに特徴を持たせたら良いのではないかと。けど、物販スペースの夢も捨てきれない。安易にブックシェアなんて図面に書くと、世間で流行っているようなあれはいただけないという田中の指摘から議論が深まり、これは物販シェアひとつも新しい発明をしなくてはいけないのか、とか。

お店のフロント周りは法規上の関係で4mもセットバックするというので、そこにポテンシャルを感じつつも、初期状態としてどうつくっておくかという議論とか。数年かけていろいろと話合っていったわけです。

“まちのフードコート”テンション上がる空間

で、ですね。

最終的にどんなプランになったかというと。

内部には、3つのシェアキッチンを置くことにしました。でも、それぞれのキッチンには個性がある。Aは、スタンド型の小さなキッチン。コーヒースタンドやバーが似合います。Bには、ガス式のオーブンを設置するように、中心ある作業台を中心に料理教室もできる。Cは食堂タイプ。キッチン側に座席も用意して、ランチやお酒がゆったり楽しめるように。そして合間のスペースを客席や物販にしてきます。

こんな施設がなかなか内から、“まちのフードコート”って呼ぶことにしました。

できあがった空間はこんな感じ↓。
図面を見てからリール動画を見てみてください。
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3つのキッチンを共存させて生み出したいもの

デザインの細かい説明は今回は省きますが、素敵な空間を立ち上げることができました!

でも、ちょっと頭のいい人なら、上のプラン、シェアキッチンというコンテンツを重ねて、本当に大丈夫なのか、成立するのか?という疑問が起こる人も少なくないと思います。

たとえば3つキッチンがあること、昼と夜の枠があることで、1日に存在するのは6つの利用枠。それが30日あるとすると全部で180枠ある。稼働率100%にならないとしても、そんな枠の運営が可能なのだろうかとか。

つくられる料理のクオリティから、キッチン内の掃除のレベル、また3つのお店が同居する際に最低限必要なコミュニティ力などを、どこまで利用者に求められるのかとか。

どこまでをシステムやルールで固め、どこまでを人的なコミュニケーションでカバーできるのかとか。

そんな不安や検討事項は、設計自から山のようにあったのですが、そんな時は決めきらず、まずは突き進むのが最善です。

私たちがここに描いたのは、ひとつの空間に、3つのキッチンに、それぞれ彩り豊かなお店が、このまちに現れたとき、まわりに暮らす人々の生活は、上階のマンションに暮らす人々の生活は、また利用される出店者の皆さんの人生は、どのように豊かになりうるのか?ということ。

それだけをたよりに、2回に渡る説明会、プレオープを経て、利用者を募り、2024年5月6日にオープンしたのでした。

それからはじまった怒濤の運営の日々。とにかくどんな人でも受け容れて、出店していただく。

そこで見えはじめてきたことが、また面白くて。

それはまた、次回以降少しずつお話していきましょう。

興味のある方は、一度お店にいらしてくださいね!

もちろん出店希望の方もいつでもウェルカムです。

1階づくりはまちづくり。

今日はこのあたりで。

大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリー&オラ・ネウボーノ オーナー。

*まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

http://glevel.jp/
http://kissalaundry.com

(下の写真はプレオープン時の様子)


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