薪を燃やす

　この時期には珍しくひんやりとした風が吹いていた日、仕事が終わって夕暮れ時から、友達と河原のキャンプ場で焚火をしました。
　自宅から車で２０分ほど走った通称「乙女河原キャンプ場」は無料で利用できるキャンプサイトです。無料なのにトイレはウォシュレット、その上に親切に薬箱や生理用品まで自由に使えるように置いてあります。

　プラネタリウムのような満点の星空の下で、持参したお弁当を食べて、最近ハマっている「満月紅茶」という満月の日に収穫された熊本の紅茶を飲んで、焼き芋を焼いて食べました。

　行きに河原まで「うんしょ」と運んだ数キロの薪は、炎の中でどんどん燃えて、火が消えるころには小さな炭のかけらになっています。あんなに重かった薪が、炎と共にあっけなく消えていくのはなんだかとても不思議です。
　「肉体」って、この薪みたいだなと思いました。
　薪という形をとっていたエネルギーが、燃えて、燃えて（生きて、生きて）また形の無いエネルギーへと還っていく。薪は「在る」とも言えるし「無い」とも言える。
　ただひとつのエネルギーが、形として現れては、無形に還っていく、その永遠の循環があるだけなんですね。
　帰り道の荷物の軽さは、肉体が燃え尽きたあとに感じる、心の軽さかもしれません。

　今日は仕事がお休みだったので、いつもの江津湖の公園にコーヒーを持って出かけました。
　子どもたちが学校の出し物なのか、ダンスの練習をしていたり、くちばしがオレンジ色の小鳥たちが芝生に降りて餌をついばんでいたり、犬が飼い主が投げたおもちゃを夢中で取に走っていたり。
　「燃えているなー」と思いました。こうしてみんな薪を燃やしている。
　じっとしていても薪は燃えるし、動いていても薪は燃える。
　何かに向かって進んでいても薪は燃えるし、迷って迷って動けなくても薪は燃えていく。
　なんだか、それで、そのままで、いいんだなと思うのです。
　どんなことをしていても、しなくても、喜んでいても、悲しんでいても、満足してても、後悔してても、命の循環の中で、薪は着々と燃えている。
　そして薪という形は、いつか必ず燃え尽きて無くなりますね。でもそれはぜんぜん終わりなんかではない。薪を現わしていたエネルギーは永遠に生き続ける。

　最近ますますものが考えられなくなって。でもただ、この薪が燃えていくような感覚をリアルに感じることがよくあります。燃えて燃えて、どんどん軽くなっていけるかな。
　仕事終わりに夕暮れからの「焚火活」はなかなかいいものでした。こんどはいつ行こうかな。

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