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【いのち図書館】 胎児が教えてくれた“産んだ後も気持ちいい”お産

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にこやかで親しみやすく、あたたかくて力強いお話をしてくださる女性。胎内セラピストのくろかわさいこさんは、まだおなかに宿る前から胎児とのコミュニケーションをすることで、妊娠、出産、育児という経験をとてもディープに味わった方です。その経験から見えてきたのは、すべてのいのちの可能性を信じるという、生きることそのものにつながる哲学でした。自分自身の子宮、胎児とのコミュニケーション、“産んだ後も気持ちいい”お産と、従来のお産のイメーには決しておさまらないユニークなお話をたっぷりお伺いしました。

(取材日:2018年8月28日 取材者:鯨井啓子)

子宮の声、胎児の声を聞く

―“子宮の声を聞く”ということを、実践し始めた経緯を教えてください
2005年くらいから10年ほど整体やボディケアの仕事をしてきたのですが、その中で、身体の癖だけでなく心の状態とも関連するな。と感じる症状に出会うことがありました。私自身も元々生理不順があって20代の頃には婦人科に通院もしていたんですけど、治療を受けたら生理が来る。やめたらこなくなる。の繰り返し。これは、自分の心の状態と関連しているんじゃないかと薄々感じていました。
その頃の私には、その場での「正解」を探して、自分の本当の思いを我慢してしまうところがありました。合理性を重視した選択をしようとしていたあるとき、身体の中心で「嫌だ!」という叫び声がしたんです。それが子宮の声だと気づいたとき、何かを我慢をしているときに生理が来なくなるという自分の身体のパターンに思い至りました。子宮やそこで起こる生理は女性にとってとても大切なもの。身体の声として訴えてくることがあって当然です。こんなにも強いサインを発してくれていたのに、私はなんで気づかなかったんだろう!?とハッとしました。

ーその後、子宮との対話はどんな風に進化していったのですか?
子宮との対話を自分なりに続けていたのですが、そのうちに、子宮委員長はるちゃんや世野尾麻沙子さんといった、子宮の声について発信している人たちのことを知りました。私が直感的に思っていたことをもっと分かりやすく強く発信されていて、「やっぱり子宮の声ってあるじゃん!」と合点がいって、すぐに会いに行ったんです。そこで自分の身体だけではなく、妊娠したらおなかの赤ちゃんともお話できるし、授かる前のお空にいる赤ちゃんともコミュニケーションが取れるという、胎児との対話を教えてもらいました。そうなのか、やってみよう!と思ってやってみたらできた。(笑)そして、胎児との対話の中で、「(妊娠したければ)ウユニ塩湖に行け!」という声を聞きました。そのときはまだ、これが赤ちゃんの声だ!という強い確証があったわけじゃないけど、行ってみよう!と。まさにその旅行中におなかにやってきてくれたのが、2015年に誕生した第一子、通称ペルたんです。

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ー出産や育児を経験するうえで、子宮や胎児の声を聞くことは役に立ちましたか?
とても役に立ちました。それまでの自分なら、自分の感覚を確かめたり、赤ちゃんに聞いたりするのではなく、世にあふれる子育て論や「妊娠期の過ごし方」を調べては、その中に正解を求めていたと思うのです。けれど、当たり前のように人ってひとりひとり個人差がある。たとえばことばを話すのが遅いとか不安に思うことがあったとしても、目の前にいるこどもを見つめずにどこかから引っ張てきた「正解」に当てはめようとしていたら、余計に不安になっていただろうなと思います。
妊娠期って、新しいいのちを育み、生み出すという、身体にとって最大の使命を果たしている時期なので、胎児の主張は通常時の子宮や身体の感覚よりも強いです。だから従うのもなかなか大変。自分の子宮との対話で練習してなかったらもっと大変だったと思うので、妊娠する前に感覚に意識を向ける練習をしておけたのはよかったです。

産後も“気持ちいいお産”

ー産後も“気持ちいいお産”について教えてください
第一子の出産は、まさに怒涛のよう。かかった時間は短かったものの、陣痛の緩急を感じる暇がないくらいとにかく痛くて、第二子の通称ぺつこを妊娠した時には「またあの痛みを味わうの!?」と怖く思ってしまうくらいでした。ぺつこにはずっと出産の痛みが怖いと相談をしていたんですけど、「怖いからって拒否しないで、痛みや不安からも逃げ出さずに全身全霊で味わうことが大事なんだよ」と教えてくれました。できるなら気持ちいいお産を体験してみたいとも相談したところ、自分のしたいと思うお産を体験した人の話を聞きに行くように言われたので、気持ちいいお産をテーマにした映画の上映会に行ったり、お話会に来てくれた方がしてくれた、陣痛もなくするっと気持ちよく出産をしたという話を思い出したりして、自分の体験したいお産のデータを蓄積したりもしました。
そんな準備を経ていざ出産を迎えてみると、痛みを全身で受け止められたことで痛みの中にもちゃんと波があることが体感でき、一瞬、気持ちいい!という感覚も味わうことができました。これがお産の気持ちよさか!経験できてよかった!と思うと同時に、でもこんなもんか。一瞬だったな。という思いもありました。ところが出産直後、一息ついたときに、頭からつま先まで、自分の身体の中心をまるでパイプが通ったみたいにスコーンと抜けたような感覚が生まれたことに気付いたんです。身体の外側には痛みがあるし、疲労感もすさまじいけど、なぜか身体の真ん中がすごく気持ちいい。気持ちよく感じるエリアは徐々に小さくなって産道のあたりだけになったのですが、ずっと気持ちいい状態は結局2ヶ月くらい続きました。例えていうならば、その感覚はまるで軽いオーガズムです。いやらしい気持ちになっているわけではないけれど、普通に生活をしている中で「はぁ、気持ちいい」という感覚が今でも時折やって来ます。「気持ちいいお産」というと産む瞬間に感じられる気持ちよさだと思っていたけれど、産後も気持ちいいお産があるということがすごく衝撃的でした。

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いのちの力を信じる

ー妊娠、出産を通じて得た、いちばん大きなものを教えてください
私が妊娠、出産を経て学んだことは「いのちの力を信じる」ということです。お産というのは、生まれてくるいのち、そして生み出す側のいのちを信じるための、最大のきっかけだと思うんです。世の中にあふれている情報の中から正解を探し出す、あるいはその子をその正解に当てはめるのではなく、その子の「いのち」そのものの可能性を信じる。そして、その子を信じている自分自身のいのちも信じるということです。みんなもともとは子宮から生まれてきているので、このしくみはこどもだけではなく、すべてのいのちが「生きることそのもの」につながります。たとえばパートナーに対して、相手をコントロールしたくなってあれこれ口出ししてしまうことがありますけど、まずは相手の可能性を信じると決めていれば、本当は必要のない不安を抱えることがなくなって気持ちが楽になります。

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ー育児の中で印象的だったことはありますか?
ある日、楽しく遊んだお友達の家から帰りたくないと、ペルたんが大泣きしたことがあったんです。その夜、日中に起こった出来事を寝る前に振り返っていたら、彼は「“さびしい”、楽しかった~。」と言いました。さびしいとか悲しいとかいう思いを、大人はできるだけこどもに体験させたくないと思ってしまうけれど、それすらもこどもは楽しんでいるんだなと気づきました。振り返ってみるとおなかにいたころから、ペルたんはよく「どんな感情も全部味わえばいいんだよ」と伝えてくれていたんです。彼とのコミュニケーションはおなかにいたときからずっと積み重ねてきたもの。ことばを話せるようになってその子のパーソナリティがよりしっかりと見えてくるなかで、私が感じていたことは妄想じゃなったんだなという実感を持てるようになりました。

ーこれからやっていきたいことはどんなことですか?
胎児とのコミュニケーションや、そこからつながる気持ちいいお産のお話を伝えていきたいと思っています。胎児や子宮とのコミュニケーションは、運動神経のように素質に個人差はあれ、練習すれば誰にでもできます。やり方の正解もないですし、得意な方法はそれぞれ異なると思うので、それぞれに合った方法で取り入れればいい。また、「お産は痛くて大変なもの」というステレオタイプを持ち続けていたら、私のお産もそうなっていたんじゃないかと思うんです。自分がしたい体験をした人がいるということを知ると、その体験は自分の中でも「あり得ること」になる。だからこそ、気持ちいいお産の体験を是非多くの方に伝えていきたいなと思っています。
胎児や子宮とのコミュニケーションは、身体の感覚を拾うもの。身体ががちがちになって鈍くなっていたりすると受け取ることが難しく、ゆるんでいて、あったまっていて、ホッとしているときがいちばん受け取りやすいんです。感覚を受け取りやすい身体のケアや身体づくりには、実際に試してみてよもぎ蒸しやとよもぎ温宮がすごくいいなと感じました。それも、自分の身体の声を聞きながらやることが大事。そんな方法もお伝えしていきたいです。

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―この記事を読んでくださる方にメッセージをお願いします
胎児がよく伝えてくれるメッセージがあるのですが、それは「とにかく軽くなろうよ」ということです。私は出産前に、産休中に仕事がなくなってお金が無くなったらどうしよう。と不安に思っていたことがあったのですが、ペルたんはおなかの中で「お金がないってウケるー!」って笑ってました。(笑)決してふざけているわけでもないんですけど、大人の感覚からするとまさに「軽っ!」って感じです。そんな声を聞くたびに、本当はもっとシンプルな出来事を、自分が重たくして背負ってしまっているんじゃないかということに気付きます。だから、重くなっているなとか迷っているなと感じるときには、いったん荷物を降ろしてみて、ちょっとでも自分の感覚を軽くする方を選ぶようにしてみています。その方が生きるのが楽しくなるから。
胎児は本当に全部知っているなと思うし、私はすごいなあとも思っているけれど、神様ではないし、胎児を畏れ敬えということではありません。この子も素晴らしいけど、自分も素晴らしい。みんながみんな、それぞれに素晴らしいんです。 “八百万の神”というように、すべてのものにいのちが宿ると考え敬意をもって接するということは、昔から多くの人たちがしてきたこと。ことばだけでとらえるととても壮大なお話のように思えるし、実際にとても壮大なお話なのですが、それと同時にとても身近なことです。人間が元々持っていたそんな感覚を思い出すと、肩の荷を下ろして楽になれる人が増えるんじゃないかと思っています。

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◎くろかわ さいこ info

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