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【環境分析フレームワーク】STP分析
概要
STP分析とは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法です。
「マーケットを細分化し、狙うべき市場を決め、顧客に選んでもらえるようなプロダクトを投入する」ことを狙いとしたフレームワークです。
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マーケットには様々な顧客がいて、様々なニーズがあり、それら全てのニーズを1つのプロダクト(製品やサービス)でカバーするのは困難です。
例えばラーメンでも「こってりした濃い味付けが好きな人」もいれば「あっさりとした味付けが好きな人」もいるわけで、こういった相反する特徴を兼ね備えたラーメンを作るのは不可能でしょう。そうであれば、それぞれのニーズに合ったラーメンを作る方が理に適っています。
STP分析はざっくりいえばこのようなコンセプトに近い分析手法です。
マーケットをニーズによって細分化してみて、その中でどのニーズ(マーケットセグメント)を狙うかを決め、そのニーズにフィットするプロダクトを作って投入する、というのはごく自然な発想だと思います。
留意すべきポイント
STP分析を行うにあたり、5つの留意すべきポイントがあります。
市場規模
セグメンテーションによって細分化した際、そのセグメントに十分な市場規模があるか注意が必要です。
マーケットには様々なニーズがありますが、それぞれのニーズを抱えている顧客の数(市場規模)には違いがあるため、自社が目指す収益が見込めるだけの規模があるかについて把握した上で参入していく必要があります。
市場成長性
上記の「市場規模」にも通づる部分ですが、市場規模だけでなく成長性についても把握が必要です。
たとえ今は市場規模が大きくても規模が縮小傾向である市場は将来的に得られる収益が厳しくなるリスクがありますし、今は市場規模が小さくても拡大傾向にある市場ならば、参入する価値があるともいえます。
市場規模だけでなく将来的な成長性も把握した上で参入するかを決める必要があります。
競合状況
これも「市場規模」と「市場成長性」に通づる部分ですが、市場規模も成長性も十分だったとしても、強力な競合による独占状態だったり、無数の競合がいて競争率が激しかったりすれば、厳しい戦いを強いられることになります。
「自社売上 = 市場規模 ✕ 自社シェア(%)」(詳細) という構造のため、自社シェアへの影響が大きい競合状況には十分注意する必要があります。
到達可能性
そもそも顧客がプロダクトを買いに行くことができなければ話になりません。商品によっては自社の店舗や営業所がないために販売ができないエリアが出てくるかもしれません。また飲食店などであれば周辺エリアから遠く離れたエリアの顧客は来店することは厳しいため、ターゲットになりません。
このような顧客への販売接点を確保できない、または十分に確保できないといったことにならないように注意する必要があります。
測定可能性
最後に重要になるのが測定可能性です。
製品の開発やマーケティングを特定のセグメントに対しておこなった場合に、ユーザーの反応などを測定したり分析したりできるかを示す指標が測定可能性(Response)です。製品開発やマーケティングがもたらした効果を適切に測定したり分析したりできれば、さらなる向上に向けて次のPDCAサイクルを回すことができます。ターゲットが実際にどう動くかという反応が測定できれば今後の方針に反映できるので重要な指標です。
自社だけでコントロールできる話(例 データ記録のシステムを構築する、など)もあれば、コントロールが難しい話(例 販売が代理店のため細かなデータが取れない、など)もあるため、それらのリスクも考慮して参入を意思決定する必要があります。
成功事例
具体的な事例の方が理解しやすいと思うので、PanasonicのノートPC「Let'snote」の成功事例を用いて説明します。
2006年当時、ノートPC市場ではスペック競争が激化している中、Panasonicでは以下のようなセグメンテーションを行い、「法人かつ外回りの営業」をターゲットにしたLet'snoteを展開しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1660292968738-sKaE1VrYDO.png?width=1200)
そして、以下のようなポジショニングによってLet'snoteを開発しました。
軽さを実現するために「薄さ」を捨てた。
当時、各社のノートPCは20ミリメートルを切るような薄さで競っていたが、初代モデルは一番厚みがあるところで、37.8ミリもあった。
外回りの営業に求められる機能にこだわった
長時間バッテリーや野外の太陽光の下でも見える高輝度モニタ、防水性、セキュリティ、アンテナ技術などを重視し、全体のバランスの悪さや拡張性のなさ、小さくて見難いという不満は無視した。
販売後の関係性を重視した
PCコンファレンスやアドバイス会議など、売って終わりとせず、売った時が関係の始まりという施策を実施した(流通コストを削減するため量販店やネット販売に注目していた時期なので逆張り)
その結果、Let'snoteは大ヒットを飛ばし、日本市場のシェアは2013年には38%となり9年連続の首位を確立しました。
この事例に学ぶべきポイントは「特定の顧客ニーズに特化する代わりに、不要なものを捨てた」という点です。
もちろん初期リリース時に、薄型で、拡張性もあり、それなりに大きなディスプレイを搭載した状態で販売できた方が良かったのかもしれませんが、それをやろうとしたらリリースタイミングも遅れたでしょうし、販売価格も上がってしまい、適正価格を維持できなかったのかもしれません。
なによりも「狙った市場」に早期参入してトップシェアをとり、そこで得られた収益を再投資して、後から機能やバリエーションを改善していく方が一般的には有利と言われていますので、この事例はまさにセオリー通りのSTP分析の事例といえるでしょう。