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山口剛様

 日本テレビ・プロデューサーの山口剛様がお亡くなりになられた。
 山口様とはプロットライター時代、火曜サスペンス劇場でお世話になった。
 『女刑事に花束』をというタイトルの企画書を書いた。刑事だった夫が殉死した後、婦人警官だった妻が刑事になる。そんな彼女に異常性愛を感じたサイコ殺人鬼が、捜査一課の彼女の同僚を次々に殺しながら彼女に迫る、という内容だった。当時としては
珍しいサイコ・サスペンス。通常企画書は5ページくらいだが、これは30ページにもなった。それを山口様は推してくださった。実現はしなかったが、ありがたかった。
 ミステリ小説のこともいろいろ教わった。その中に『キラーバード、急襲』があり、これは後に名探偵コナン『能ある鷹は罪を隠す』の発想の源となった。
 『あなたに似た人』は僕のオリジナル・プロットで山口様のプロデュース。崔洋一監督、山崎努・泉ピン子主演。ところがオンエア後、三池崇史監督の自伝にも出てくるSというパワハラ監督から、制作会社に対して無茶苦茶で理不尽な要求をするよう強いられ、愚かにもそれに従ってしまった。三池監督はSに立ち向かわれたのに僕はできなかった。日本脚本家連盟からも「このままでは仕事がなくなります。撤回したらいいですよ」とアドバイスいただいて、Sにもそう言ったのだが、「俺の言う通りにすればいいんだ」というSに逆らえず、その指示に従った。その結果、仕事を失って、都落ちした。
 再上京した時、山口様にお目にかかった時も、「君もあの件がなかったら……」と言われた。
 本当に、本当に、恥ずかしい……。恩を仇で返すようなことをしてしまった。制作会社のプロデューサー様にも、もしお詫びできるならお詫びしたいのだがはたして許してもらえるか……。
 山口様には小説を出版するたびに贈呈させていただいた。山口様は賀状にその感想を書いてくださった。『量子館殺人事件』については、「文体を小栗虫太郎にすべきだ」とご教示いただいた。20年かけて改稿し読んで頂いた。貴重なアドバイスを頂き、ラストを大幅に変更した。
 最後にお会いしたのは、新宿K's cinemaでの藤井秀剛監督作品(『猿ノ王国』?)上映会の時だった。
 大変お世話になりました。
 心よりお悔やみ申し上げます。

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