見出し画像

シナリオについて #2

 実際に自分の書いたプロットを引用しますので、構成がどのようになっているか推理してください。(0〜8の番号はオリジナルにはないのですが説明のため振りました)

満月をさがして
#26 「伝えたいもの…」
プロット by まさきひろ

0□アバン(ヴィレッジプロ)
 高須から大重に電話。「やるじゃない、大重ちゃん。まさかルートLの若王子さんを引っ張ってくるとはね」
 高須、フルムーンにも、「お互い頑張ろう!」とメッセージ。
 「はい!」と明るく答えるフルムーン。
 (この時、競作は昔はよくあった事を高須に言わせる)
0a□サブタイトル
1□円の部屋(夜)
 音楽情報番組(notワイドショー)で、フルムーンと円の「新曲」競作の話題。
 そのニュースを、グーちゃんと一緒に見ている円。
 「負けられない!」と決意の顔。
2□リアルミュージック(翌朝)
 打ち合わせの時間より30分前に来た円。
 スタッフルームに入ると、高須がデスクで眠っていた。手にはペンを握っている。
 どうやら徹夜で仕事したまま眠ったようだ。
 円は高須に感謝した。これまで、自分のためにこんなに一生懸命になった人はいなかった。
 円はそっと高須に毛布をかけた。
3□SEEDレコード
 宣伝担当、制作進行を含めての打ち合わせ会議に出席したフルムーン、若王子、大重。
 若王子はコンセプトの提示を求められたが、まだ決まってないと言った。
 若王子の意見は、この歌でフルムーンがリスナーに何を伝えたいか。アレンジも衣装も、それがあっての話だ。
 急に話をふられてフルムーンは、「何をって……えーと……とにかく歌を聞いてもらうこと……」
 若王子、もう少し具体的なイメージでないと、自分もわからないし、もちろんリスナーにもわからない。時間をあげるから、それを考えてごらん。
4□満月の部屋
 満月は歌詞の意味を解釈することかと、辞書を取り出すが、その辞書をタクトが取り上げた。
 タクトは若王子の意図をわかっていて、もっと簡単なことだと教える。聞く人の辛い気持ちを慰めるとか、応援するとか、楽しくさせるとか。
 そうアドバイスされ、満月は考える。
 父親はどんな思いでこの曲を書いたのだろう?
 しかし、実は満月は死んだ父親の事をよく知らなかった。断片的にしか。祖母が教えてくれたのは、父親と病弱な母親・葉月が恋に落ち、満月を身籠もって、駆け落ち同然で出ていったこと――くらい。
 満月は父親の事を知りたいと思った。
(中CM)
5□満月の家
 タクト&めろこは曲のコンセプトを考えろと急かすが、満月は両親の事が気になる。
 若王子はゆっくり考えていいと言ったし、両親の事を知るのもあながち道草でもない、もしかしたらヒントが得られるかも、と満月は思った。
 そして、満月は祖母に話を聞きにいった。
 しかし、祖母は「思い出したくもない」と教えてくれなかった。
6□SEEDレコード・スタッフルーム
 若王子に父の事を聞きにいく。
 若王子は(何を伝えるかは別問題として)満月の父と母・葉月のことを話しだす。
 仲睦まじかった満月の父親と母親・葉月。「新曲」はその頃作られた。
 しかし、葉月が妊娠して、事態が変わった。祖母に反対され、二人は恋の逃避行をした。バンドはリーダーを失い事実上解散となった。その時、若王子は音楽の道を諦めた。
 それが二年前、病院に来た満月と出会った。葉月の娘であり、音楽を好きな事を知った。
 養護施設を訪ね知り得た事――葉月は満月を生むと死んだ。父親は満月をかかえ、場末のライブ喫茶で生計を立てていたが、1年後に死亡。その時のバンド仲間により施設に預けられた。2年前、祖母に引き取られるまで……。
 自分の出生の秘密を知った満月。亡き両親に思いをはせる……。
7□満月の家・蔵
 満月はタクト・めろこと蔵に入った。
 何か、両親に縁のある物がないかと思って。
 めろこは蔵探しが宝探しみたいと大はしゃぎ。昔懐かしい玩具を見つけては大はしゃぎ。
 そんなめろこが葉月の子供時代の写真を見つけた。満月にそっくり。
 と、今度はタクトが何かを見つけた。
 オルゴール。
 中に「to Haduki with Love」と書かれたメッセージがあった。
 おそらく、父が母・葉月に贈ったのであろう。
 しかし、どこか壊れていて、音は鳴らなかった。
 それでタクトが神術をかけた。オルゴールは生まれ変わった。(>バンダイ商品)
 その時、大重から携帯が鳴った。
     ×     ×     ×
 蔵の外にたまたま田中さんがいて、携帯の音を聞いた。田中さんは祖母に知らせに行った。
     ×     ×     ×
 大重は急なインタビューが入ったので、すぐ変身して表に出ろと言った。自分は塀の外に車を横付けするから。
 満月はタクトの神術でフルムーンに変身した。そして、蔵から出ようとしたら、蔵の戸がガラッ!と開いた。
 祖母だった!
 祖母にフルムーンの姿を見つかってしまった!
 固まるフルムーン。
 が、祖母はフルムーンを葉月の幽霊と思った。「葉月……」
 祖母は葉月が去って行った時の事を思い出した。(原作4話より)娘が、家出した日のことを。
 あの時反対しなければ、葉月は駆け落ちすることなく、死ぬこともなかったかも知れないと、後悔した。
 と、その時、フルムーンがオルゴールを落とした。音楽が鳴り出した。
 祖母「音楽なんて嫌い……いつも私の大切なもの、奪って行くのですもの……」
 フルムーンは返事に窮した。しかし、これだけは言いたいと思った。
 「音楽を嫌わないで! 音楽は――いい音楽は、決して人を不幸にはしない!」
 そして逃げるように、祖母の前から去っていった。
8□大重の車の中。
 フルムーンは「新曲」で何を伝えたいか、ようやく見つけた。
 「聞く人を幸せにする」事!
 それは父が葉月に望んだ事。満月はそれを祖母に、万人に伝えたいと思った。
                              (つづく)

『満月をさがして』#26「伝えたいもの…」

 おわかりいただけましたでしょうか? このプロットは5つのブロック(A〜E)から出来ています。

A(1〜2)  新曲に対する円の決意。
B(3)    リスナーに何を伝えたいか訊かれる満月だが答えられない
C(4〜5)  悩む満月。
D(6〜7前半)満月、若王子に父のことを訊きに行く。
E(7後半〜8)満月、答えを得る。

 B〜Eは起承転結の構造です。じゃあAは何かというと……落語でいう〝枕〟のようなものでしょうか。AとBをともに「起」と考えてもらっても構いません。
 「起承転結」「序破急」「三幕構成」「五幕構成」といろいろな構成がありますが、その目的は、おはなしを複数の局面フェイズに分けることによって、一本調子になるのを避けるためです。音楽でいうなら〝抑揚〟ですね。
 抑揚がなくても面白い映画はあります。たとえば、オタール・イオセリアーニ監督の映画とか。眠気を誘われますが、それでも映画館なら観客も最後までつきってくれます。しかし、テレビだと「退屈」とチャンネルを変えられるおそれがあります。
 局面の数はいくつでもいいのですが、僕は5を選んでいました。正味20分のアニメであれば、4分毎に局面が変わっていく計算です。そうした理由は、それが視聴者に充実感を与えるのではないかと考えたからです。自分でもそうしたリズムが心地よかったのです。
 このことは誰にも言わずこっそりやっていたのですが気付いた人がいました。脚本家の高橋ナツコさんです。おそるべき分析力!

 構成をどの構成にするかは、ひとつの型に固定するのではなく、内容に合わせて臨機応変でよいと思います。
 とはいえ、据わりが良いのはやはり「起承転結」「序破急」などであるのは確かです。

次回は、回想内回想。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?