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恋愛備忘録|彼とわたしの言葉たち
事実は小説よりも奇なり。
信じてもらえないようなことがいくつも重なり、
時間を共有するようになった彼とわたしの備忘録。
信じてもらえなくても、すべてノンフィクション。
ちなみに彼とわたしは付き合っていない。
不思議な話だけれど、彼とは知り合った当初から旧知のように仲良くなったし、出会って数ヶ月とは思えないほど馴染んでいる。
彼とわたしにしか通じない言葉も多く誕生した。
「ハグ会」や「ハグ友」のネーミングも然り。学生時代エンドレスで聴いていた音楽が同じだったため、今の気持ちを曲名で伝え合ったりもする。
デートの待ち合わせ場所を「じゃない方」と呼ぶのも、デートを「使者殿が来訪中のため」と言って断るのも、いつの間にか始まって定着した。そういう暗号のようなものが、多数存在する。
何の気も遣うことなく、緊張もせず、素のままでそばに居られる関係というのは、なんて心地良いのだろう。
仮にも心から慕う異性である。そんな相手にドキドキしない。ただひたすらの安心感がある。少しでも良く思われるための猫かぶりも一切せず、素の状態で接することができている。
なんとも有り難い存在だ。だからこそ、わたしは彼を大事に大事にしていきたいと思っている。
ところで、わたしは人の口の動きから言葉を読み取るのが苦手である。言葉を聞き取るのも上手ではないから、聞き間違いがとても多い。
上司や後輩と仕事の話をしているのに、全く関係のないやたらと物騒な言葉に聞き間違え、大笑いされることも日常茶飯事である。上司に至っては、最近聞き間違いを訂正することを諦め「うん、そうだね」と全肯定し始めた。
けれど彼とは、聞き間違いや言葉が聞き取れないという状況が全くない。
それどころか、ふたりで並んで歯を磨いているときでも会話が成立する。
「んーんー、んーんーん、んんんんんんんんん」
「んー、んんんんんんんんんんん?」
「んん、んんんんんんんん」
「んんんんんんんん、んんんんんんんん」
なぜ会話が成立したのか不思議なレベルである。
訳としては「コスプレ衣装を着てほしい」「いやだ、あなたが着て」「需要ないよ」「わたしが楽しい」的なことを話しているのだが、聞き取り能力が低いわたしには、奇跡的な会話成立だ。
しかも、知り合って半月、二度目のハグ会での出来事である。
それどころか、ハグのタイミングも、キスのタイミングも、それ以上のことに進むタイミングも、不思議なくらい悉く合うのだ。
自分の聞き取り能力が低いことを理解し、それに上手く折り合いをつけて生きてきたけれど、彼が相手だとそれを気にしなくて済む。笑ってしまうほど、心地良い。
だからと言って、百パーセント通じ合えているわけではないのは当然のことである。会話は大事にしたいし、気持ちもちゃんと伝えなければならない。
特に彼は自己評価が低くて「俺より良い相手なんていくらでもいるよ」「優さんはモテるからすぐ良い人が見つかるよ」とよく言う。会う度に言う。もういいよ、と思うほど言う。
その度わたしは「あなたが大事だよ」「あなたと一緒にいるよ」と何度も何度も伝えている。
そうやって、色々な言葉を使い分けて、わたしたちなりの関係を育んでいければな、と思う。