A Bit Away from Human
世の中が窮屈である。どうにも窮屈である。
原っぱだろうと雑居ビルの谷間であろうと、北海道にいようと東京にいようと、どうもこの事情は変わらない。
テレビか何かで、マナー講師が誰かのありきたりの振る舞いをファナティックに非難すれば、今度はそのマナー講師を、第三者がネット上でファナティックに非難する。
YouTuber の愚かな振る舞いを叩く。
スポーツ選手の不品行を叩く。
ちょっとそぐわないと我先にと叩く。
叩かれる前に叩く。
叩かれなくとも叩く。
"Wars of all against all" 万人の万人に対する戦い。誰だっけ?『リヴァイアサン』の、確か、ホッブズ、たぶん。誰でも構わないが。
思想とは人格ではない、思想だ。
適応とは、「所与の環境を異常であると感じない程度に、自身を異常たらしめること」である。
いちばん簡単な方法は、叩く世の中ゆえ我も叩くのだ、と日に百遍唱える。叩き方をOJTで学ぶ。ノルマを立てて叩く。対象不問、とりあえずは叩く。
初心者は、大層叩かれている者を嵩に掛かって叩くのがよろしい。スクロールすれば、受ける叩き方のテンプレートには事欠かない。
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と。
私が今週から注入している新薬であるが、エフガルチギモドアルファというものだ。商品名はウィフガート、なかなかよろしい。少なくとも、このように何かを書く気になれる程度には効いているのである。
前に入れていたのは免疫グロブリン、これは人様の血液から抽出した製剤である。人の血を入れまくり、これのお蔭で私はいつ別人格になりおおせるかを楽しみに入院していた。
ウィフガート(エフガルチギモドアルファ)。
先日、つれづれ説明を読んでいたら
とのこと、これは何より私に朗報だ。
もはや、人様の血どころの話ではない。私はもう少しでチャイニーズハムスターになれるのだ!チャイニーズハムスターなのだから、人目も人聞きも気にすることはない。
なんなら、この拙いブログは『ハムスターの考え』だ。
すばらしい。
なんてすばらしい。
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適応のはなしからワープである。
人間は叩き叩かれ生きるもののようであるが、私はハムスターなのでまったく関知しない。
人間のホッブズおよび人間のほうのしりん曰く、万人は万人に対して戦う様子だが、幸いここに万ハムスターは含まれていないようなので、私は別に戦わない。
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次の点滴は月曜日。(ハムスターの世界では「齧曜日」と綴る。豆知識)
私は月曜日ごとに一歩ずつ、しっかりと、ハムスターへと近づけるのである。