5000円のとんかつ定食を食べた話
みなさん,歳末はいかがお過ごしでしょうか.
今日は,食費2万円/月の僕が5000円のとんかつ定食を食べた話を書き残しておこうと思います.
経緯
そもそもなんでこんな身の丈のあってないとんかつに手を出したかというと,全ては同居人の「高田馬場にめちゃくちゃ美味しいとんかつ屋さんがあって,人生で食べたとんかつの中で一番衝撃を受けた.まじでやばかった.そこは今人気が出て予約制やから気をつけてな!」と言われたことがことの始まりです.
揚げ物は油の処理がめんどくさいという理由で絶対に家で自炊しないと決めている僕にとっては,揚げ物は実家か外食でしかありつけないご馳走です.
そんな中でもサクサクの衣を纏ったお肉とモリモリのキャベツが食べられるとんかつ定食は外食時の絶対的なエースとして僕の人生の中では位置付けられています.
そんな中,不要不急ではない理由で高田馬場の幼馴染の家に泊まる用事ができた時同居人の言葉を思い出した僕は,酒を飲みながら「そういえばやばいとんかつ屋さんがあるらしいからいかへん?」と幼馴染を誘ったのです.
お酒飲みに予約なんて高度なことをやらせたのが全ての原因です.
期間限定の文字につられてドンキで購入したレモンサワーを片手に,「高田馬場 とんかつ」で検索して出てきたのが今回お邪魔させていただいた【とんかつ成蔵】さんだったのです.
ここがかなりの難関でした.
今の高田馬場にあるのは【とんかつ なりくら】であって【とんかつ 成蔵】ではないのです.ここで違いをまとめておきましょう.
【とんかつ なりくら】←同居人おすすめ
場所:高田馬場
料理人:とんかつ成蔵のお弟子さん
価格帯:2000円前後
【とんかつ 成蔵】←ミシュランビブグルマン選出・食べログ日本一
場所:南阿佐ヶ谷
料理人:とんかつ成蔵の創業者(師匠)
価格帯:5000円前後(コースのみ)
ここでまぁ同じ店名やし誤植かなんかなんやろと思った僕は,明後日の【とんかつ 成蔵】さんの予約を取りました.
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異変に気づいたのは次の日の朝.
やってしまったと思いました.
普段はほとんど外食もせずに食費2万円/月でなんとかやりくりしている学生が行くお店とは到底思えません.でも,今からキャンセルしてもキャンセル料も5000円かかるし,行ったら5000円でとんかつが食べられる.
ここは予約が取れた幸運な自分を讃え,「食べたいと思ったものは若いうちに食っとけ」と先日人生の先輩に言われたことを思い出しながら,良い人生経験になるだろうと思い5000円のとんかつ定食が食べられるお店に行くことになったのです.
前日編
予約日の前日は胃のウォーミングアップを兼ねて,高田馬場で有名な【豚久】さんにお邪魔しました.
そもそもなんで次の日にとんかつ食べるのに前日に食べんねんっていうツッコミがきそうですがこれにはちゃんと理由があって,『5000円のとんかつの美味しさを語るには,比較対象として1000円のとんかつを知らないと評価が曖昧になる』と思ったのです.
ツイートしたようにここのお店のトンカツがサクサクジューシーでめちゃくちゃ美味しくて「あれ?比較対象のレベル高くない?明日大丈夫?」って思ったのはここだけの話です.
当日編
ついに待ちに待った当日.
12:30からの予約をとっている僕たちは,絶対に遅刻はしまいと12時には最寄駅に待ち合わせし,ドキドキしながら住宅街を抜けると【とんかつ 成蔵】が見えてきました.
一見するとただの一軒家の住宅にしか見えず,看板や佇まいがとても謙虚なので,散歩で通っただけではまさかここがミシュランビブグルマンに選出されているお店だとは誰も思わないでしょう.
近所のセブンで買ったホットレモンを片手に,予約時間になるまで奥にあるベンチでメニューを決めながら待機する形式でした.
僕らはメニューをひとしきり眺めた後,顔を見合わせてふと笑みを浮かべました.ロースカツ定食1000円でもええ値段するなと思ってる学生が来る場所ちゃうな,TOKYO-XってなんやねんX-JAPANの親戚か?など,ようわからんボケをかましながらこれまでの緊張感を解きほぐしていました.
この緊張感は,二郎ラーメンの待機列に接続したときの緊張感とはまた違う緊張感でした.うまく言語化できないのですが,試合前の緊張感というよりは憧れのアーティストの展示会でサインもらう前みたいな緊張感でした.
予約時間の5分前くらいにはバイトの方が注文を伺いにきて,僕は「シャ豚ブリアンかつ3個(180g)定食」を幼馴染は「特ロースカツ定食」を注文しました.今日はTOKYO-Xしか入荷していなかったようです.
12:30ごろには店員さんの案内で店内についに入店.
5000円のトンカツ,ミシュランというワードで黒塗りの高級感漂うところなのかなと思って身構えていた僕らを出迎えてくれたのは,綺麗な小洒落た定食屋さんのような店内の雰囲気でした.
身の丈が合わないんじゃないかと緊張していた僕らは,前菜として出され「プルドポークのクラッカーのせ」をいただきました.一口サイズのクラッカーの上には,豚の塊肉をほぐれるまで弱火でゆっくりと加熱した"リエット"が乗っていて塩加減も良くめちゃくちゃ美味しくて,期待値を跳ね上げドーパミンをどぱどぱ出しながらとんかつの到着を今か今かと待ちます.
店内に入り10分後,ついに到着しました.
5000円のとんかつ定食です.
なんなら税込で6000円くらいします.
見てください,この白く光り輝く神々しいとんかつの姿を.
約束された勝利とはこのトンカツのための言葉だと思わせてくれます.
とんかつってそもそも茶色じゃないですか,
でもミシュランのとんかつは白色なんですよ!!!!!
どこぞの田舎者やねんという言われんばかりに「やべーやべー」と言いながら一通り舐め回すように写真を撮った後,冷めないうちにといざ実食.
....
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エッ......
これは....トンカツ...
これは....トンカツ...なの.............?????
なんと形容したら良いのかわからない幸福感に包まれ,思わず笑みが溢れてしまう僕たち.
まず何が美味しいかって衣が僕たちの知っているそれじゃない.
あの神々しい白い衣がまず最初に口の中に入ってくるんですけど,サックサクな衣を口の中に入れて噛んだ次の瞬間にはふわっと溶けるんです.
これは110℃ぐらいの低温で20分ほどパン粉の水分をじっくり出しつつ揚げることで油を吸わずに軽やかな衣に仕上がるという調理技術らしいです.
しかもこの衣,結構時間がたってもべちゃっとしないんです.これは何故なのか本当に見当がつかないのですが低温であげている事が要因の一つなんじゃないかと思います.これなら最後まで美味しく食べられますし,食べるスピードを気にしなくても良く素晴らしいです.
その次に衝撃的なのは,決してジューシーという言葉だけでは済まされないほどに柔らかくしっとりとしたお肉.もちろんTOKYO-Xという育ちの良い豚肉を使用しているというのもありますが,低温調理と余熱のコンボでもうそれはそれは大トロ食べてたっけと勘違いするほどのとろとろな食感と弾けるうまみがもうすんごいんです.
このサックサク→フワッ→ほろほろ→ジュワ〜のこの食感の一通りの流れが最高すぎるんですよ!!!!!!!!!
岩塩で食べるのはもちろん,ごま油を垂らして香りを楽しみながら,付け合わせのマリネやひじきも箸休めにちょうど良いんですよね.
全てが最高のバランスでそこに存在しているような感覚です....
定食ってもしかして小さなコース料理だったのでは....?とつい思ってしまうような計算されたメニュー構成とその中心として文句のつけようがないトンカツが鎮座するこのトンカツ定食はまさに5000円の価値があると思います.
総評
そういえば1000円のとんかつとの違いに関しては,以下の3点に注目して比較してみました. ※1000円のとんかつ,5000円のとんかつと価格帯のグループで比較するにはN数が足りず正確ではないので参考程度までに.
①衣
1000円:サクサクな食感,茶色
5000円:サックサクな食感,白色,時間が経っても食感そのまま
②肉
1000円:肉の脂のジューシさあり,肉感もある
5000円:肉の脂だけでなく肉そのものが柔らかくジューシーで,適度に肉感も残る
③付け合わせ
1000円:お漬物が締めにちょうど良い
5000円:マリネの柔らかめな食感と酸味が箸休めにちょうど良く,キャベツの梅ドレッシングがめっちゃ美味しい.ジューシーなとんかつを組み合わせると無限ループできる.
【とんかつ 成蔵】【豚久】それぞれで光っている点がありました.予約をせずにふらっと入って1000円であんな美味しいとんかつを頂けることも素晴らしいですし,5000円払えば今までのとんかつの概念を変えてくれるような体験を経験することもできます.
自分は贅沢をするのが苦手な人なので,ちょっとしたハプニングから始まるこのような素晴らしい体験をする事ができてとても良い人生経験になりました.クリスマスを一緒に過ごす恋人は見つかりませんでしたが,このようなとんかつ屋さんに付き合ってくれる友人に恵まれたことに感謝しながら,お金がないので今年はもうキャベツだけで生きていこうと思います.
論文は一ミリも書いてないのにとんかつ食レポに4000文字も書いてる院生なんて日本でも僕だけだと思いますが,ひとまず今年は良い締めくくりになりそうです.皆さんも良い年を!
ほんまにこれとんかつ屋の領収書なん?って言ってる図
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P.S. 若い者に美味しいものを食べてレポートしてほしいという大人の方,サポート+コメントを頂ければどこへでも行きます!!!!
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