なぜ採用したい人材が見つからないのか?
はじめに
この記事では主に以下について解き明かしてみようと思います。
最近良く見るツイートの風潮
こんな感じのもの多くないですか?
こういう類の話、別にIT企業・エンジニア界隈に限った話では無いと思っています。これらは「これから成長する為に多くの人材が必要なベンチャー企業」において顕著に現れる傾向だと思いますし、大概のベンチャー企業は、所謂「IT系」に属する傾向が高いので、「ITベンチャーでは人が足らない!」と顕著に言われるのだろうと思います。
まぁ兎にも角にも、我々が欲しいと思える「いい感じの人材」ってのが見つからない。全然いないわけです。
「いい感じの人材」とは
だいぶ丸め込んで「いい感じの人材」と表現しましたが、おそらく以下の3要件くらいを満たしている人材は、概ね皆が皆「いい感じだ」と業種・業界を問わず共通認識が持てるだろうとして話を進めます。
先に紹介したツイートにもあるように、極論、専門的なスキルや能力は必要ないと思います。上述の要件を満たすような人材であれば、専門的スキルは必要に応じて勝手に自走して身につけてしまうだろうから。
何故「いい感じの人材」が見つからない?
以下の様な理由があるのではと考えています。
「もう転職市場から『いい感じの人材』は枯渇したから」
まだまだ伝統的な日系大企業の終身雇用がメジャーな日本では、転職が誰にでもあたりまえな状態とは言えませんし、そもそも日本は労働人口が減り続けている為、今後もその傾向(いい感じの人材不足)は加速する一方でしょう。
ちなみに、あくまで「転職市場には『いい感じの人材』が枯渇した」と思っているだけであり、「日本の労働者市場全体から『いい感じの人材』が枯渇した」とは思いません。それこそ、日系大企業にだって「いい感じの人材」はたくさん居ると思います。しかし流動性が失われつつあるだろう、という見立てを持っています。
この様な「転職市場に『いい感じの人材』が枯渇した」問題についてはどういった解決アプローチが考えられるでしょうか?
転職しないとヤバいぞ!と煽る
ひとつは「大企業にロックインされている『いい感じの人材』に対して転職を煽る」です。これは既に多くの、特に転職エージェンシー会社を中心としたプレイヤーによって日々行われているでしょう。都内の電車に乗っていて、転職関連の広告を見ない時は無いでしょう。
TVを見ていると、「ビズリーチ」や「リクルートダイレクトスカウト」のCMもよく見ますよね。
転職エージェンシー業界としても、転職者の流動性がなければ儲けの源泉もなくなりますので、兎にも角にも「転職しないとヤバいぞ!」と囃し立てるわけです。
転職エージェンシー業界のプレイヤーを中心に行われるこうした「転職煽り」の是非は置いておくとして、転職市場に出てくる人間を増やす為に、自分たち人材を採用する側が主体的にできることはほぼありません。
誤解なきように補足しておくと、もともと転職希望を持っている人に対してアプローチする施策はいくらでもあります。オウンドメディアやnoteを使って自社の魅力を発信したり、それこそ上述の様なサービスを使ってダイレクトスカウトを実施する等。しかし、まだ転職市場に出てきていない人に対するアプローチ、転職市場に出てくるように促す施策は事業会社にできる事はありません。よって、そうしたアプローチは諦めます。
もう枯渇した市場に対して「いい感じの人材いないかな〜」とビズリーチを眺めたり転職エージェントに相談してなんとかしようとするのはさっさと諦めて、別の対応策を検討したほうが合理的です。
「いい感じの人材不足」問題の解決策
ここからは具体的な対応策を示します。
1. 素人を徹底的に鍛え上げる仕組みの構築
もう我々が欲しい人材(出来上がった人材)は転職市場には枯渇したっぽい、とするならば自分たちで造るしかありません。業界未経験者や新卒・第二新卒者など、「そのままでは『いい感じの人材』たり得ない人」を教育し、我々が所望する「いい感じの人材」に鍛え上げるしか無いのです。
つまり、人材育成・教育の仕組みの構築にしっかりと投資するということです。人に投資できない会社、人材育成の重要性が認識できない会社は、早晩に成長限界にぶち当たるでしょう。
2. 競合他社から高い報酬で奪い取ってくる
もし我々の会社に「競合他社」がいるなら、その会社でいま活躍している社員さん達は「我々も欲しいと思っている『いい感じの人材』に該当する」と言ってもいいでしょう。そうした人々に対して、競合他者から得ている報酬を超える高い報酬で奪い取ってこれるとすれば、手っ取り早く「いい感じの人材」の補強が可能です。こうした人材獲得策はプロ野球やプロサッカーでは頻繁に行われていますよね。
逆に言えば、「高い報酬は提示できないけど『いい感じの人材』は欲しいなぁ〜」といった都合のいい事にはなりません。即戦力が欲しいにも関わらず高額報酬が積めない会社、これもやはり近い将来に成長限界に達します。
ここまでに示した「1.」「2.」は、いずれも「人材に投資する」という点で共通しています。つまり時間とお金と労力を掛ける必要があります。
しかしそれができない場合はどうしたら良いでしょうか?
3. フルタイム勤務での募集を諦める
どの企業からも欲しがられる「いい感じの人材」に対して、自社にフルタイムでコミットしてもらうことを諦めます。つまり、副業先やパートタイム労働先としての選択肢を提示するのです。そうすれば、部分的であっても「いい感じの人材」のメリットを享受する事が可能です。
しかし、その為には勤務内容や職務についての明文化が必要です。つまりJob Descriptionの策定です。「いい感じの人材」に対して「あなたはこれこれこうこうこういうコミットメントをお願いします」と示せなければ、副業先やパート先として選んでもらえません。
しかし、そもそもこのジョブ型雇用のご時世、全従業員に対してJob Descriptionを定義できない会社は、従業員に対する期待も、それを達成してもらった場合に与える報酬もよく分からない状態ということです。そんな会社は早晩、成長限界に達します。
とはいえJob Descriptionの定義も難しい場合、最終的に救いの道はあるのでしょうか?
4. 自社をより大きな資本の傘下に入れてもらう
つまり買収されるということです。自社をもっと大きな企業の子会社にしてもらう、もしくは企業自体を吸収合併してもらうことで、大きな資本側が持つ「いい感じの人材」を投入してもらえるでしょう。その結果自社が営んできた事業のさらなる成長が期待できます。
自社単独での存立は諦める事になりますが、「いい感じの人材不足」問題からは逃れる事ができます。
人材に投資できない会社の未来は…
「無い」というのが答えかもしれません。自社でしっかりと人材育成する気も無い、しかし高額報酬を支払ってヘッドハンティングもできない。その様な会社は早々に今働いている従業員からも見限られます。
正直、日本企業が「いい感じの人材不足」問題に関してとり得る本当の意味での解決策は、「1. 素人を徹底的に鍛え上げる仕組みの構築」だけだと思います。今や日本の転職市場は日本企業の為だけのものではなく、日本法人を持つ外資系企業ものさばる戦場です。そして彼らは昨今の円安も相まって「2. 競合他社から高い報酬で奪い取ってくる」を是として、肉食系の人材獲得に邁進しています。高額報酬での人材獲得の応酬に終わりはありませんし、日系企業がその点で外資系企業に勝てる見込みも薄いです。であれば、やはり「人材育成・人材教育に徹底的に取り組む」しか「いい感じの人材」を増やす手立てはないでしょう。
おわり