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shift innovation #63 (INFOBAHN×CONCENT hack)


今回、インフォバーンとコンセントが共催する「変化する時代の『組織の力』を育む〜「デザイン態度」の考えと、BtoB企業におけるデザインマネジメント実践事例から学ぶ〜」のセミナーにオンライン参加しました。




【変化する時代の『組織の力』を育む】

変化に富む先行き不透明な事業環境においては、それを乗り越えてなお成長をし続ける、柔軟でしなやかな組織のありようがますます求められることでしょう。

それらを乗り越えるアプローチとして昨今注目を集めているのが、デザイン的な考えや方法論です。そこで、今回のセミナーでは「デザイン」をキーワードとして、組織を変革する具体的な考え方や実践のあり方を皆さんとともに考えていきます。


【デザイン人材に必要な「アブダクション」】

セミナーの冒頭に、前回の共催セミナーで、不確実な環境においては、ロジックと合理的整合性だけでは解決できないことがあり、未知の世界を解決することができるデザイン人材とは、仮説があるから進めるのではなく、仮説を自ら形成する人材であり、その手法として「アブダクション」という仮説を推論する視点が必要であるとありました。

そこで、今回のセミナーでは、「組織の力」を育む上で、デザイン人材に必要となる「アブダクション」について、登壇された井登氏、長谷川氏の解説も踏まえ説明することとします。
(「組織の力」という本論から少し離れたものとなります。)


【「アブダクション」に関する質疑】

今回、セミナー終了後、質問を受け付けていただく機会があり、私が質問した内容に対して、丁寧な回答をいただくことができました。

質問

「アブダクション」は、フレームワーク的に仮説を形成できるものではなく、哲学的思考が重要であり、事象を懐疑的(批判的)に捉える、二元論的にアウフヘーベンするなど、複雑なプロセスを経て、仮説が形成されるのではないかと考えるのですが、それをフレームワーク的に教育するには、どのようにすれば良いのでしょうか。

回答

対比的に布置される演繹、帰納が、事後的に客観的な観点で自称を説明づける正当性を重視するのに対し、アブダクションは現時点から見て新たな可能性(≒価値)を十分に正当性が確保できない環境の中においても見出し、提示する思考であることを示しているのではないでしょうか。

そのためには、もちろん思いつきや当てずっぽうでいいということはありません。Dorst(2011)では、その実践にあたって、新しい枠組みを創り出すこと、を重要なものとして挙げています。

そして、その具体的なアプローチとして、自分たちが見る枠組みを変えたいと考える対象・事象をよく調査し、物事を見るパースペクティブを転換しうる可能性を広げ、視座転換を起こす機会を創り出すことが必要だと述べています。従来、既存の意味のシステム(常識)の枠組みの中で当たり前に見ていたものごとを、様々な角度、視点から捉え直す愚直な探索活動を常日頃から実践することが、手間はかかるけれども数少ないやりかたなのでははないでしょうか。

ここで言っているアブダクションは、デザイナは作ったものからアブダクションを起こしている、ということです。ですので、熟慮を重ねて、ではなく、手を動かしてみるとそこからの気づきがあり、それが思考を深められる、ということです。ですので、考えるよりもプロトタイピングしてみるということを行っていくことでこの学びが得られます。


【「アブダクション」に関する解釈】

回答において参照となる論文を提示いただきましたので、論文の内容を踏まえ、「アブダクション」に関して学んだことを返答させていただきました。

返答

論文では、アブダクションには2つの形式があるとあり、アブダクション(1)の場合、例えば、「朝起きると地面が濡れていた」という事象に対して、「恐らく夜に雨が降ったのであろう」という仮説を推論した場合、ここでは「雨が降ると地面が濡れる」という法則を意識下で適用したものとなる。

一方で、アブダクション(2)の場合、例えば、「朝起きると地面が濡れていた」という事象に対して、「恐らく夜に雨のシーンの映画の撮影があったのであろう」という仮説を推論した場合、ここには「昨日、映画の撮影をしていた」という法則を適用したものとなる。

これらの違いは、顕在的既知(事象)に対して、潜在的既知(法則)が想定内の法則であるのか、想定外の法則であるのかの違いであり、アブダクションにより飛躍的な仮説(未知)を推論するためには、想定外の法則を導く必要があるのではないかと思いました。

そして、想定外の法則を導くためには、「昨日、映画の撮影をしていた」という現場にいないと知り得ない情報を知っている必要があり、これは、ご教示いただいた「既存の意味のシステム(常識)の枠組みの中で当たり前に見ていたものごとを、様々な角度、視点から捉え直す愚直な探索活動を常日頃から実践する」「考えるよりもプロトタイピングしてみる」という内容に基づくものであり、五感(身体性)により新たな情報をインプットする必要があるということを理解しました。
(アブダクションの構造自体を間違っていましたらすみません。)


そこで、飛躍的なアイデアのための想定外の法則を導くためには、ご教示いただいた「物事を見るパースペクティブを転換しうる可能性を広げ、視座転換を起こす機会を創り出す」というように、視座転換を起こし新しい枠組みを創り出す上で、五感(身体性)にあわせて思考する必要もあるのではないかと思いました。

例えば、「商品が倉庫に入り切らない」という事象(小前提)に対して、「倉庫を大きくする」「新たな倉庫を借りる」という結論を導き出すとした場合、「大量の商品には大きな保管場所が必要である」という法則(大前提)を意識下で適用するなど、演繹的に解決することとなります。

一方で、「商品が倉庫に入り切らない」という事象に対して、「倉庫を使用しない」という仮説を導き出すとした場合、「物がないと保管場所はいらない」という法則を適用したものとなります。

その結果、「受注生産により完成品在庫を持たなければ、完成品在庫の倉庫は必要なくなる」という解決策を導くこととなります。(妄想)

ここでは、「商品が倉庫に入り切らない」という事象に対して、「そもそも、倉庫自体必要であるのか」と問うなど、「倉庫が必要である」という前提、固定観念から脱却することにより、「一層のこと、倉庫を使用しないということはできないのか」(法則)と問うた結果、「そういえば、DELLは受注生産により完成品在庫をなくすことによって、倉庫を最小限にしている」という仮説を類推することによって、思考を繰り返すことで、視座転換を起こし新しい枠組みを作り出すことができる場合もあると思いました。(妄想)

そして、商品特性や現場のオペレーションなど、現場の実情を五感(身体性)により理解している必要があり、また、他社のケースなどの情報を理解しているなど、ご教示いただいた「手を動かしてみるとそこからの気づきがあり、それが思考を深められる」という内容に基づき、五感(身体性)により様々な情報をインプットした上で、思考を繰り返す必要があると理解しました。


これらのように、新しい枠組みを創り出すためには、五感(身体性)により様々な情報をインプットした上で、思考を繰り返す必要があり、そして、飛躍的なアイデアを閃く上で、情報をインプットした瞬間に閃くのか、熟考することにより閃くのかの違いがあるとした場合、情報をインプットした瞬間に閃く場合は、恐らく演繹的な発想やアブダクション(1)のような常識的な法則を意識下で適用するなど、事象に対して結論や仮説をすぐに閃くことによる常識的な解決策になるのではないかと思いました。

一方で、新しい枠組みを創り出すためには、常識となる固定観念を理解し、固定観念を疑い、そして、固定観念から脱却するなど、事象を一つ一つ紐解いていく作業(思考)が必要となるのではないかと思いました。

そこで、ご教示いただいた「もちろん思いつきや当てずっぽうでいいということはありません」というように、飛躍的なアイデアを閃くとは、直感的なものではなく、その前提として、現場を観察することをはじめ、プロトタイピングする、ブレインストーミングをする、コンサルタントなど他業界の人を入れる、リベラルアーツなどを学ぶというように、自業界の固定観念を排除することができる情報をインプットした上で、固定観念から脱却することができるよう思考を繰り返すことによって、ご教示いただいた「その実践にあたって、新しい枠組みを創り出す」ことができるのではないかと理解しました。

※「アブダクション」の構造は個人の解釈によるものとなります。


【まとめ】

「アブダクション」により新たな解決策を導く上で、はじめに、事象に対して、「結論」や「仮説」に気付く(閃く)のではなく、今までとは異なる「法則」に気付く(閃く)ことが重要となります

例えば、「商品が倉庫に入り切らない」という事象の場合、「倉庫を大きくする」「新たな倉庫を借りる」という「結論」に気付く(閃く)のではなく、「受注生産により完成品在庫をなくす」という仮説を導くための「倉庫を使用しない」という今までとは異なる「法則」に気付く(閃く)必要があります。

この「倉庫を使用しない」という「法則」に気付く(閃く)ためには、「倉庫の賃借料が高騰している」「資金調達が困難である」「ニーズの予測が困難である」など、経営の視点、財務の視点、マーケティングの視点などにより、現場における解決が困難な様々な課題五感(身体性)に基づき理解する必要があります。

そして、現場における解決が困難な様々な課題を五感(身体性)に基づき理解した結果、解決が困難な現状(固定観念)に対して、懐疑的に捉えることにより、「受注生産により完成品在庫をなくす」という「DELLの受注生産」のケースを類推することによって、「倉庫を使用しない」という今までとは異なる「法則」に気付く(閃く)ことができることとなります。

これらのように、「アブダクション」により今までとは異なる「法則」に気付く(閃く)ためには、五感(身体性)と思考(言語性)が共に機能する必要があり、特に、固定観念から脱却するためには、多様性に基づく様々な情報を取得し、思考を繰り返すことにより、「アブダクション」において重要となる今までとは異なる「法則」に気付く(閃く)ことができるのではないかと考えます

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