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shift innovation #69 (loftwork hack 1)

今回、「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」が主催する「自然と都市と文化遺産:文化を遺す+生み出す」のイベントに参加しました。



【イベント概要】

本イベントは、「文化遺産」をキーワードに、自然と都市の関わり合い、そして価値創造の源泉としての文化について考えるトークイベントです。後半は、参加者のみなさまを交えて「ラウンドテーブル」形式で共話・ディスカッションの場を設けます。(主催「明日の京都文化遺産プラットフォーム」/パートナー:株式会社ロフトワーク)


【明日の京都 文化遺産プラットフォーム】

「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」は、京都の世界遺産をはじめとする文化遺産のネットワーク化をはかり、将来に向けての持続可能な都市創造という観点から、これらが抱える多くの課題を共有し、都市機能や周辺環境を含む「歴史を活かしたまちづくり」に、行政、市民、社寺城、大学、民間企業等が一体となって取り組んでいます。


【ロフトワーク】

クリエイティブであること。それは特別な人だけが持つ才能ではありません。うちなる想像力や好奇心から「つくる意志をもって行動する人」は誰でも、自身の創造性を発揮する〈クリエイター〉です。私たちはすべての人のうちにある創造性の力を信じています。それぞれの創造性が発揮されれば、明日の社会はもっと豊かになるし、面白くなる。それが、ロフトワークのあらゆる活動の出発点です。


以下に紹介する内容は、スピーカーの方が発言した内容を私が解釈したものであり、スピーカーの方が発言した主旨とは異なる場合があります


【文化と都市】

はじめに、「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」に関する説明がありました。

文化遺産とは、「文化を遺す+産み出す」であり、文化を遺すだけではなく、次世代に文化をつなぐため、新たな文化を創造する必要がある一方で、文化遺産はまちづくりの原動力となるものの、現状では文化遺産をまちづくりに活かせていないことが課題であるようです。

このような課題を踏まえ、今回は、「自然と都市と文化遺産」をテーマに、「文化と経済の好循環」を捉える上で、”すぐれた文化を創造し続ける「永久に新しい文化都市」”(「世界文化自由都市宣言」)を実現するためには、都市の文化と経済を最適化することが重要となるようです。

ここで、一つ目のキーワードとして、「一見さんお断り」があり、都市の文化と経済を最適化する上で、京都の文化の特徴を表す「一見さんお断り」が重要な役割を果たすものであり、「一見さんお断り」には、京都の文化の独自性を持続可能にするためのフィルタリング機能を果たしているようです。

この「一見さんお断り」を平たく表現すると、京都の文化遺産を安売りするものではなく、また、高値で買ってくれるからといって、誰にでも売るものでもなく、京都の文化遺産の価値を適正に評価してくれる人に、適正な価格で売るための役割を果たしている、つまりは、京都の文化遺産を守るための役割を果たすものであるのではないかと感じました。

二つ目のキーワードとして、「ニジリグチコモンズ」があり、「躙口(ニジリグチ)」とは、茶室の入り口のことをいい、躙口では頭を下げ、刀を置いて入る必要があり、身分の差や富の多少に関係なく公平であることを表すものであるようです。

この「ニジリグチコモンズ」を平たく表現すると、一度「一見さんお断り」のフィルタリング機能を通過した人は、茶室というオープンイノベーションの場において、その企業(人)が伝統企業であるのか、新規参入企業であるのか、資金が潤沢にあるのか、資金がないのかなどに関係なく、企業(人)の技術や資産などの価値を公平に評価することを宣言するものである、つまりは、都市の文化と経済を最適化する役割を果たすものであるのではないかと感じました。

これらのように、「文化と経済の好循環」を実現する上で、京都の文化の特徴を表す「一見さんお断り」や「ニジリグチコモンズ」は、京都の文化遺産を遺し、産み出すための思想を示すものであり、これらの思想をエコシステム(プラットフォーム)に組み入れることによって、”すぐれた文化を創造し続ける「永久に新たしい文化都市」”を実現することが可能となるのではないかと感じました。


【自然と文化】

京都には豊かな「森」や「水」があり、京都の文化を産み出す上で、森や水が豊富にある里山が文化の起点となるものの、現在は森や水を育む土壌が枯れ、里山が荒廃し始めたこともあり、良い土壌により京都の実り豊かな産物などを育むことが難しくなっているようです。

このような課題を踏まえ、「文化と経済の好循環」を捉える上で、”人間と自然が共生する社会"をつくる必要があるとの説明があり、水や土壌などの自然を起点に京都の文化を産み出す上で、本来、人間と自然が共生すべきである一方で、自然を単に消費することから守るためには、自然の活用を制限する必要がある中で、「一見さんお断り」という思想がここでも役割を果たしているのではないかと感じました。

そして、京都の文化の起点となる自然である森や水を企業におけるコアコンピタンスと捉えた場合、例えば、京都のコアコンピタンスである水や土壌で育んだお茶、お茶に基づく茶の湯の文化など、京都独自の文化を産み出したものですが、現在の京都においては、京都のコアコンピタンスである水を活用したコーヒー((株)COFFEE BASE)が新たな文化となったものの、あくまでもお茶やコーヒーは表現方法の一つであり、コアコンピタンスである自然を起点にどのように表現するのかということが焦点になることからすると、今後、京都のコアコンピタンスを起点とする参入者の独自の思想や価値観が融合することによって、様々な文化が産み出される可能性があるのではないかと感じました。

そこで、ロフトワークのスピーカーの方と直接話をした中で、文化を産み出すこととは、自然を起点に産み出されるものであるとした場合、他の都市でも同様の発想により新たな文化を産み出すことができるのかという議論の中で、文化の捉え方として、「一般的に捉えられている文化や芸術という狭義の捉え方ではなく、衣食住などの生活様式、思想、価値観なども含めた広義の捉え方」とした場合、例えば、同じコーヒー豆を使用する場合であっても、自然を含む文化や芸術、生活様式、思想、価値観を起点とする参入者の独自の思想や価値観が融合することによって、異なるコーヒー、異なる体験ができるなど、その都市における新たな文化が産み出されるのではないかと感じました。


【ラウンドテーブル1】

寺社の庭師の方の話の中で、庭を整備する上で、予算が限られているため、十分な整備ができない状況である一方で、このような制約に対して、生物多様性という視点に基づき、自然に対して整備された人工美ではなく、あえて極限的な自然美というように、発想を転換させることにより、庭の整備を最小限にするなど、”自然に近い状態により美しさを極めた庭”という新たな価値を創造するという取り組みをしたようです。

これを実践し受け入れられるためには、美的価値観を変容させる必要があり、このような価値観へ変容させる上で、例えば、寺社周辺の市民は寺社を観光名所ではなく、コミュニケーションのための場であるなど、生活の一部と捉えているようであるものの、寺社周辺の市民が生活をする中で、寺社が市民の生活様式に組み込まれるためには、日々コミュニケーションを図るなど、長い期間がかかるということからすると、価値観を変容させるためには長い期間が必要であり、伝統文化における美的価値観を変容させることの難しさを感じました。


【ラウンドテーブル2】

アーティストの方の話の中で、文化と自然の関係性として、自然の風景自体を文化として捉え、竹林の中で一本の竹の上部に紅葉を取り付けたようであり、竹林の緑に赤い紅葉がひときわ映えて見えていましたが、アーティストの方から、表層的にこの作品を捉えるのではなく、例えば、日本人と外国人の感性の違いにより、同じ作品を見た場合であっても、その捉え方が異なることとなり、特に、この画像を単に見た人と現場で一本の竹を立てるための作業を体験した人とは、作品に対する感じ方が異なるなど、様々な視点により作品を捉えてもらいたいことのようです。

そして、アーティストの方と直接話をした中で、作品を創作する上で、日本人であれ、外国人であれ、鑑賞した人の今までの体験が作品に反映される、つまりは、百人鑑賞すれば、百通りの作品が最終的に作り上げられるなど、作品の中に鑑賞者の体験が反映されるよう余白を作っているということからすると、新たな文化を産み出す上で、例えば、幽玄における想像力のように、京都の伝統文化(作品)と現在の思想や価値観(鑑賞者の体験)の融合を可能にするなど、共創を生み出すことが重要となるのではないかと感じました。


【ラウンドテーブル3】

学生の時に京都で起業した方の話の中で、東京は広域であることもあり、文化拠点が点在している一方で、京都は狭域の中に文化拠点が密集していることもあり、繋がりやすく仲間意識が醸成されやすいことから、文化的活動がしやすい環境にあるようです。

これは、文化拠点が密集しているということは、狭域の中で活動をする上で、競争が生まれるはもちろんのこと、共創も生まれるなど、文化は人々との関係性により築かれるものであるとした場合、文化拠点が狭域であるということは、人々の関係が密接となるなど、人々が共創しやすい環境にあることから、京都は新たな文化を産み出しやすい環境であり、共創を生み出すことができるコミュニティを構築することが重要となるのではないかと感じました。


【まとめ】

これらを踏まえ、「文化と経済の好循環」を捉える上で、”すぐれた文化を創造し続ける「永久に新しい文化都市」”(「世界文化自由都市宣言」)を実現するためには、都市戦略の視点を踏まえ取り組む必要があるとの説明がありました。

はじめに、京都を愛してくれる人を受け入れるための「一見さんお断り」の役割が重要であると共に京都内外において分け隔てなく公平な判断に基づくオープンイノベーションが創発される「ニジリグチコモンズ」の役割が重要となります。

また、京都独自の新たな文化を産み出す上で、京都の文化や芸術、生活様式、思想、価値観などのコアコンピタンスを起点とする参入者における独自の思想や価値観が融合することが重要となります。

そして、京都における狭域という特性による人々との密な関係性の中でも、今までとは異なる視点により、今までとは異なる価値観を受け入れ、そして、人々が集まるコミュニティの中で共創が生まれ、新たな文化を産み出しやすい環境をつくるなど、これらの仕組みを踏まえた京都独自のエコシステム(プラットフォーム)を構築することが、京都の都市戦略において重要となるのではないかと感じました。

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