今回、QUINTBRIDGEで開催された「『アイデアが実り続ける場のデザイン』新たな商品やサービスの創造に大切な視点とは」というテーマのイベントに参加しました。
登壇者は、株式会社MIMIGURI デザインストラテジストの小田裕和氏であり、co-net代表、株式会社MIKKE社外取締役などもされておられ、「インスピレーションを孵化させる、場や道具のデザイン」をテーマに、事業開発から組織開発まで、幅広いプロジェクトのコンサルテーションやファシリテーションに取り組んでおられるようです。
【QUINTBRIDGE hack 1のまとめ】
今までとは異なる新たなアイデアを導出するためには、「哲学アプローチ」や「脳科学アプローチ」に基づく「アブダクション」を活用する必要があることを説明しました。
【QUINTBRIDGE hack 2のまとめ】
「哲学アプローチ」や「脳科学アプローチ」に基づく「アブダクション」の思考プロセスを構造的に捉えた「フレームワーク」について説明しました。
【今回の概要】
「アブダクション」における「哲学アプローチ」「脳科学アプローチ」「フレームワークアプローチ」を踏まえた「思考プロセス」について説明することとします。
【QUINTBRIDGE hack 2で紹介した新たな事例(「水筒」)】
QUINTBRIDGE hach 2で紹介した新たな事例として、コンサルティングファームである「Takram」の「shenu:Hydrolemic System」の事例(「水筒」)を活用し、「哲学アプローチ」「脳科学アプローチ」「フレームワークアプローチ」「思考プロセス」を踏まえた「アブダクション」について説明することとします。
【アブダクションにおける思考プロセス】
「アブダクション」における「哲学アプローチ」「脳科学アプローチ」「フレームワークアプローチ」を活用する上で、一定の思考プロセスを経ることによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出することができると考えます。
【新たな事例(「水筒」)における思考プロセス】
1.解決困難なコンセプトの設定
今までとは異なる新たなアイデアを導出する上で、今までとは異なる視点を得るため、あえて手詰まりの状態を生じさせるなど、想定外の非常識である解決困難なコンセプトを設定することとします。
2.究極的状況の想起
解決困難なコンセプトを強く意識することにより、想定外の非常識である究極的な状況を想起することとなります。
3.固定観念の顕在化
究極的な状況を想起することにより、究極的な状況は今まで当たり前であると確信していた状況とは異なることから、当たり前であると確信していた固定観念が顕在化することとなります。
4.事実探究質問の発信
固定観念が顕在化することにより、今まで当たり前であると確信していた事象(固定観念)と究極的な状況とは異なることから、固定観念に対して懐疑的になることによって、事実を探究する質問を発信することとなります。
5.インパスの発生(手詰まりの状態)
事実を探究する質問を発信することにより、解決すべき事象を検討し尽くした結果、本当に解決することが困難であると認知することによって、手詰まりの状態となることとなります。
6.固定観念からの脱却
手詰まりの状態となることにより、心的制約が緩和することによって、対極となる事象へ転移・反転するなど、問題空間が切り替わることで、固定観念から脱却することとなります。
7.原因究明質問の発信
固定観念から脱却することにより、新たな事実がどうして事実であるのか確認する上で、原因を究明する質問を発信することとなります。
8.新機会の発見
原因究明質問を発信することにより、今まで検討すべき解決策ではなく、今までとは異なる新たな機会を発見することとなります。
9.方法探索質問の発信
新機会を発見することにより、今まで検討すべき解決策ではなく、今までとは異なる新たな機会に基づく解決策を検討する上で、方法を探索する質問を発信することとなります。
10.新機会の具象化
方法を探索する質問を発信することにより、捉えていた抽象的な事象に基づき連想することによって、捉えた事象を具象化させることとなります。
11.新機能の適用
関連する事象へ収束することにより、関連する事象を技術的に実現可能にする上で、新たな機能を適用することとなります。
12.新アイデアの導出
新たな機能を適用することにより、今までとは異なる新たなアイデアを導出できることとなります。
これらのような思考プロセスを経ることにより、「水質汚染等により供給可能な水が極端に限られている」という事象に対して、「人間が一日に排泄・排出する水分を極限まで少なくする」という法則(問い)を適用することにより、「カンガルーの腎臓は体の中の尿を濾過し水分を循環させる」という仮説を形成することによって、「体内から水分を排出せず循環させる『人工臓器』」というアイデアを導出することとなります。(推察)
【アブダクションとクリエイティブジャンプ】
「アブダクション」は、今までとは異なる新たなアイデアを導出する上で、「ひらめき」や「クリエイティブジャンプ」を生むためのプロセスの一部であると考えられています。
今回、紹介しました「アブダクション」における「哲学アプローチ」「脳科学アプローチ」「フレームワークアプローチ」の中にも、「ひらめき」や「クリエイティブジャンプ」する瞬間があり、「テーゼとアンチテーゼを二項対立させる(哲学アプローチ)」「手詰まりの状態となり心的制約を緩和させる(脳科学アプローチ)」「事象を「時間軸」「空間軸」「意味軸」で捉え事象を転移・反転させる(フレームワークアプローチ)」となります。
そして、「二項を対立させる」「心的制約を緩和させる」「転移・反転させる」ためには、「解決困難なコンセプトに基づき究極的状況を想起することにより、顕在化した固定観念に対して、事実を探究する質問を発信することによって、固定観念から脱却する」ことが必要となります。
特に、固定観念から脱却する(問題空間が切り替わる)上で、手詰まりの状態となることが重要であり、例えば、事業の効果を5つ検討する時に、4つ目まで検討できたものの、5つ目がどうしても思いつかないという場合、さらに検討を試みようと強く思考したその瞬間、ふと思いついたということはないでしょうか。
また、ふと思いついた事業の効果の内容は、通常想定する内容とは少し焦点がずれた内容(今までとは異なった内容)になったということはないでしょうか。
これらのように、「検討しよう」「解決しよう」と強く思考したその瞬間、手詰まりの状態が発生することによって、固定観念から脱却する(問題空間が切り替わる)ことができる場合もあり、これらの仕組みを「アブダクション」の中に組み入れることによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出することができると考えます。
【まとめ】
「アブダクション」における「哲学アプローチ」「脳科学アプローチ」「フレームワークアプローチ」を活用する上で、一定の思考プロセスを経ることによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出することができることを説明しました。