今週のTop Tier VCニュース!#117(2024/5/20週)
先週(#116)に続きサンフランシスコ出張中であったこともあり、今週ピックアプした投資案件は1件のみです。AI関連スタートアップの巨額資金調達の話題が続いていますが、今週もScale AIが$1Bを調達し、評価額は$13.8Bに達しました。約2週間のサンフランシスコ滞在で様々な刺激を受けましたが、日本に戻ってくるとやはり日本の良さも感じます。が、今の日本のVC/スタートアップ市場はあまりにも小さく、かなり遅れていることも改めて痛感したため、微力ながら何らかの形で少しでも貢献できればと思います。
投資先の米国VCは「AIはある種のブームなのか?」という問いに対し、「AIは、PC、Internet、Mobile/SNS、Cloud/SaaSに続く時代を変革する基盤であり、その市場は今後も大きくなる」という回答が中心です。AI関連スタートアップの評価額が他業界を大きく上回っているのはデータでも明らかで、確かに一部のAI関連スタートアップ評価額の異常な高騰が永続的に続くかには疑問が残りますが、「AI is eating services」と言われるようにAIがソフトウェアサービスをDisruptすると考えると、その市場規模はとてつもない規模となります。
AIが注目を集め続けていますが、2024年になって増加しているメガラウンドと呼ばれる$100M超の資金調達ラウンドでは、AI関連スタートアップが大半を占めるのかと思いきや、HealthcareとBioTechが中心で、この領域はSeries A資金調達の大半も占めています。ただそのHealthcare、BioTechスタートアップもAIは当然ながら活用しており、AIはあらゆる領域で浸透が進んでいます。
今週の投資先ハイライト
■ AIのためのデータファウンドリーである"Scale AI"がSeries Fで$1Bを調達し、評価額は$13.8Bへ
主な投資家
Accel
Founders Fund
Spark Capital
Index Ventures
概要
Scale AIは、Accelがリードし、既存投資家のY Combinator、Index Ventures、Founders Fund、Spark Capital, NVIDIA, Tiger Global Managementや新規投資家のCisco Investments、DFJ Growth、Intel Capital、Metaなどが参加したSeries Fで$1Bを調達し、同社の評価額は$13.8Bに達しました。
AIのためのデータファウンドリーであるScale AIは、OpenAI、Meta、Microsoftなどの企業のデータ課題を解決してきた深い実績があります。今回の新たな資金調達により、Scaleは企業顧客や米国防総省とのモデル評価業務や、ホワイトハウスが発表したDEFCON 31のレッドチームイベントでの取り組みを基に、官民両方の評価に対する能力と提供を深めることも可能になります。
AIモデルが進化するにつれて、フロンティアデータ(パフォーマンスを駆動し、保証するために必要なデータ)の質、量、複雑さは指数関数的に増加しています。AIのためのデータファウンドリーとして、ScaleはエンドツーエンドのAIライフサイクルの背後にあるデータを強化し、モデルビルダーも企業も同様に、AIを自信を持って導入するために必要なデータを確保します。
「データの豊富さはデフォルトではありません。そのためには、エンジニアリング、オペレーション、AIの最高の頭脳を結集する必要があります。私たちのビジョンは、フロンティアLLMをさらに何桁もスケールアップし続ける生産手段を持つ、データの豊かさです。GPT-10に到達するためには、データに制約されるべきではないのです。」とScale AIの創業者兼CEOは述べています。
「Scaleは初日から、AIのためのデータの可能性を解き放つことに注力してきました。彼らのビジョンは、我々が最初に提携した理由です。AI業界が可能性の限界を押し広げ続ける中、高品質なデータに対する業界の高まるニーズに対応する上で、彼らの専門知識が最も重要であると私たちが信じ続ける理由は、彼らのビジョンにあります」とAccelのPartnerは説明します。
Scale AIについて
ScaleはGenerative AI革命に拍車をかけています。高品質のデータと人間の洞察力を基盤に構築されたScale独自のData Engineが、世界最先端のモデルを支えています。あらゆる主要モデルビルダーとの長年にわたる深いパートナーシップにより、あらゆる組織がAIを適用するためのロードマップを提供することができます。Scaleは、Meta、Morgan Stanley、Microsoft、米陸軍、国防総省国防イノベーションユニット、OpenAI、General Motors、Toyota Research Instituteなど、業界のリーダーから信頼を得ています。
投資環境
● $100M超のメガディールが増加
スタートアップの資金調達は停滞しているように見えるが、$100M以上のラウンド、つまりメガディールは今年爆発的に増えており、米国を拠点とするスタートアップは5月中旬までに115件のメガディールを獲得
昨年のこの時期に調達された73件のメガディールと比較すると、58%の急増
もちろん、これは2021年と2022年の280件には遠く及ばない
AI関連スタートアップが多数を占めると思われがちだが、バイオテクノロジーとヘルスケアが多数となる38社
● 米国のSeries A資金調達の大半はHealthとBioTechが占める
今年は、HealthcareとBioTechのスタートアップが米国のSeries A資金調達の大半を占める初めての年となりそう
2024年のこれまでのところ、BioTech企業は110件のSeries Aで約$5.6Bを獲得しており、Series Aでの資金調達全体の53%を占めている
しかし、資金調達額は2022年よりも減少しており、スタートアップ投資全体にとって記録的な年であった2021年よりもはるかに少ない
● AI関連スタートアップの評価額が他業界を大きく上回る
2024Q1の米国VCバリュエーション・レポートによると、Early stageおよびLate stageのAI企業のバリュエーションは、他の業種を大きく上回っている
2024Q1において、Early stageのAI企業の評価額の中央値は$70Mを超え、Late stageでは約$100Mだった
長年にわたり、FinTechがEarly stage、特にLate stageの両方でバリュエーションのチャンピオンであったが、金利の変動など経済環境の変化とAIへの熱狂が相まって、FinTechは両ステージとも評価額で2位に転落した
しかし、一部のVC投資家は、このような超高額評価の持続可能性に警鐘を鳴らしている
● Crypto/暗号資産領域が漸く立ち直りつつある
2024Q1のディール額が2021年以来初めて上昇に転じて、暗号通貨はようやく立ち直りつつあるのかもしれない
2024Q1は518件のディールで$2.4Bが創出され、それぞれ40.3%と44.7%の増加となった
2024Q1は、主に1月11日に米国でビットコインのスポット上場投信(ETF)が承認され、運用が開始されたことをきっかけに、暗号業界で多くのポジティブな動きがあった
ETFは120億ドル以上の純資金流入を集め、ブラックロックのiシェアーズ・ビットコイン・トラストは177億ドルを集め、ETFのローンチとしては過去最高の成功を収めた
このようなビットコインへの資金流入により、ビットコインの価格は3月中旬に史上最高値の73,000ドル強まで上昇した。この上昇により、暗号市場の時価総額はピーク時の2兆9,000億ドルに達し、前四半期比29.2%増の2兆3,000億ドルで当四半期を終えた