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【行政版】地域おこし協力隊の募集の仕方

こんにちは、地域おこし協力隊OBで現在地方議員をしている中村です。

地域おこし協力隊を卒業してから、いろいろな隊員の相談を受ける機会がありました。そのなかで問題となるのは隊員と地域のミスマッチです。この双方の思いの違いは、公募の段階というイニシャルですでに発生していることが多くあります。ミスマッチ、とは「こんなはずではなかった」という思いの差であり、行政と隊員の両方に思いの違いは見られます。

今日は行政の募集のあり方、というトピックに絞って考えてみます。行政からすれば優秀な隊員が欲しい、というのは勿論の本音です。一方で隊員からすれば、事前に情報収集を行う窓口はほとんどネットに依存しています。隊員が何を見て応募を決めているのか、そして意思疎通を間違わないために行政は公募情報に何を盛り込んだら良いのかを考えてみたいと思います。

1.募集の窓口〜JOINだけではない〜

地域おこし協力隊の公募は、総務省の外郭団体であるJOINのニッポン交流・移住ナビに掲載されます。

北は北海道から南は沖縄まで日本を大きく9つに分けたブロックの中から隊員は自分の興味のある地方をクリックして公募内容を検索していきます。

JOINのデメリットは、1)レイアウトが同じでどの公募も横並びに見える、2)個々の情報を行政の側も差別化して発信しにくい、3)独自性が把握しにくいため隊員希望者も判断に迷う、という点にあります。

2.隊員は何を見て応募しているのか

協力隊希望者にとっては、ネットが全ての情報の窓口です。そのため、まずは数多くある公募のなかから、実績のある自治体(OB・OGが定住しているか、起業して成功しているか)、協力隊制度を導入してから年数が経っている「ベテラン自治体」かという点を重視します。

それ以外にも、移住定住のポータルサイトも別にチェックしています。具体的には日本仕事百科Greenzのようなサイトです。

賢い自治体はJOINに情報を提供すると同時に、こうした地方での求人に特化したポータルサイトに取材を受けて同じ求人を別のサイトに別の角度から載せています。

3.フリー型かミッション型か、は重要ではない

地域おこし協力隊の募集の要件は大きく分けて、自由に隊員が自分の活動を行えるフリー型と、あらかじめ地域課題の解決を課せられたミッション型に分類されます。

それぞれ一長一短があり、フリー型だと隊員の思う活動が出来るがコンサルティングが他人からはしづらく隊員が孤立しがち、テーマ型だと実力がかなり問われるので隊員の能力が問われ苦しむ場合がある、といったことが挙げられます。

しかし私が知る限り隊員の側が、フリー型が良い、ミッション型が良い、といった仕事の内容だけで地域を選択することはほぼありません。

大切なのは、隊員が人生を変えるライフステージの転換点として地域おこし協力隊という職業を選択しており、それを自治体も受け入れるだけの度量があるのか、という点です。

そう言うと小難しい、深刻な言い方に聞こえるかもしれませんが、実際はシンプルなことです。公募や募集要項には「隊員のことを考えているか」ということが割と簡単に見えるからです。以下では具体的に公募要項にあると、隊員から着任後の活動がイメージがしやすい情報を載せたいと思います。

4.住まいは詳細に説明されているか

協力隊にとって最も大切なのは自分がこれから住む家です。自治体によって、空き家であったり公営住宅であったり、賃貸物件の借り上げで行われます。この際、住む場所の形態はあまり問題ではありません。せっかく田舎に住むのだから伝統的な古民家住宅を、という隊員も勿論いると思いますが、古民家には古民家なりの住環境の欠点(冬が寒い、広いと管理・掃除が大変、小動物が住み着くetc)があり、必ずしもマストアイテムではありません。

重要なのは、公募要件のなかに住環境の説明が詳細になされているかどうかです。空き家なのか公営住宅なのか、という点に加えて、LDKなどの間取り、家の床面積、築年数、水回りが整備されているか、というのはどの公募でも満足に説明されていないことが多く、案外盲点です。

協力隊の隊員となる人物は、基本的に三大都市圏から移住をして来ます。そのため、家財道具などが置けるだけの広さがあるか、自分のプライバシーが確保される家なのか(地域の会議所の一区画とかではなく)、仕事のon/offが切替えられてリラックスできそうか、という点を考慮します。これらは都市的な論理かもしれませんが、そもそも地域おこし協力隊は都市部から地方への人の流れを創る、という制度のため、いままで都会に住んでいた隊員がどういった住環境を望んでいるのか検討することは、公募のPR力を高める上でかなり大切なことです。

5.隊員の離職率はどうか

自治体が積極的に隊員の定住率や離職率を公表することは少ないと思います。しかし協力隊が新規着任した場合、かならずネットニュースのログが残ります。こういった地方紙の過去のニュースも協力隊希望者はGoogleで検索をしています。何年か前に新しい協力隊が着任した、という華々しいニュースを目にしても、その後の動向を伝える記事が一切出てこなかった場合、危険な匂いがする(離職率の高い)自治体と捉えられても仕方がありません。

裏を返せば、OB・OG紹介をホームページで積極的におこなっている自治体は好感触です。卒業した隊員も含めて、積極的に定住者のアピールをしていくことは、後に続く新規隊員へも道を作ることになります。

6.説明会を開きインターン制度を活用しているか

地域おこし協力隊のノウハウを蓄積している自治体は公募に先行して隊員希望者に対して地元での説明会を開催しています。加えて、地域おこし協力隊のお試し版であるインターン制度も創設されました。これらはイニシャルの段階で、地域と隊員との思い違いを防ぐ緩衝材としての役割をもっています。雇っては見たものの思っていた人物像と違った、移住しては見たもののイメージしていた活動が出来ない、ということがないように事前にコミュニケーションを取る機会を設けるのは両者にとって利益があります。

7.任期後の居場所

地域おこし協力隊の任期は3年間しかありません。着任した初日から隊員の時計の針は進んでいきます。そのため先行事例がある地域ほど任期後の自分の姿がイメージしやすい分、有利であるといえます。

かといって、事例が少ない自治体が不利かといえば、そうではありません。あくまで前述の隊員希望者への配慮をおこなっているか、という熱意の問題です。簡単に始めようと思って公募をかけたのか、熟慮を重ねて工夫を凝らした公募なのかは、見る人が見ればきちんと分かります。

8.まとめ

JOINでの公募要件はどの自治体も没個性的になりがちで差別化はしにくいでしょう。隊員の側もそうしたことは百も承知です。そのため、仕事ポータルサイトやネットニュースなどのクロスチェックを行って、自治体の安全度と本気度を見定めています。

しかし隊員にとっては、ネットを介して見る情報はほぼ100%が活字です。そのため、地元説明会やインターンなど「実際に目で見て触れる機会」を提供していることは、かなり親身になって隊員に寄り添っていることとして映ります。インターン制度を活用した場合、隊員が現地に来るまでの交通費を支給することも制度上可能です。(実際、その辺りは折半でも良いと思います。この場合、熱意は両者に必要なことだからです)

そして隊員もまた人間です。どちらかというと、バイタリティがあり、それを持て余している型にはまらない人物が多いですが。つまりはじゃじゃ馬を受け入れる負担も当然自治体には発生し、担当課も相応に大変な思いをします。協力隊とは国の地方特別交付税とともに来てくれる無料の労働力「鴨ネギ」ではありません。煮ても焼いても食えない「じゃじゃ馬」である、と捉えるべきです。

しかしそういった人物ほど私は地域に貢献すると思います。一般の公務員とは違った目線と、活動力を要求される職であるため、毒にも薬にもなる人物というのが地域おこし協力隊の本質であると思います。そのため、受け入れる側の熱意も同時に必要なのだと多くの自治体関係者に知ってもらいたいと思います。

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