見出し画像

地域活性化企業人とは

こんにちは、地域おこし協力隊OBで現在は地方議員をしている中村です。今日は、協力体に関連した新しい制度「地域活性化企業人」についてまとめます。

同制度は令和2年度までは「地域おこし企業人交流プログラム」という名称で実施されていました。令和3年度からは名称を変更し、自治体要件も緩和されました。総務省が所管する協力隊事業は、令和3年度から「地域プロジェクトマネージャー」「地域おこし協力隊インターン」という新制度も始まっています。併せてご参照ください。

1.制度概要

地域活性化企業人は、専門的な知見を持つ人材「地域おこし企業人」を都市部から地方へと派遣する制度です。自治体は企業で活躍する専門人材をスカウトし、行政の現場での仕事を委嘱することが出来ます。派遣される企業人は、自分の在籍する企業に籍を置いたまま、地方で働くことになります。この派遣事業に対して必要な経費を国が交付金で助成するというものです。

・企業人の定義:三大都市圏に所在する企業等の社員
・補助期間:6ヶ月以上3年以内
・交付税措置:1人年560万円、受入前経費&事業経費に100万円

2.制度を活用できる自治体

令和2年度までは条件不利地域を要する市町村に限定されていましたが、令和3年度からは要件が緩和されました。現在1429市町村が対象となっています。

これにより、たとえば都市部でも条件不利地域を有する場合は県庁所在地でも実施出来るようになりました。全国の8割以上の自治体で採用が可能です。詳しい自治体リストは以下のリンクをご参照ください。

■「地域活性化起業人(企業人材派遣制度)」受入可能団体一覧(R3.4.1時点)(PDFファイル,2021/10/04閲覧)

3.交付税措置の対象となる3つの経費

地域活性化企業人は国の特別交付税の対象となります。具体的には次の3つの経費について補助額と補助率が定められています。

a)受入期間前の経費 年間100万円/50%補助
b)受入期間中の経費 年間560万円/1人につき
c)事業に対する経費 年間100万円/1人につき/50%補助

a)の受入期間前の経費とは、地域活性化企業人の募集のために必要なPR費や企業との協定締結のために必要となる経費です。たとえば都内の企業から企業人の派遣をお願いする場合、自治体職員が上京に必要な交通費や宿泊費などの半額補助が受けられることになります。

b)の受入期間中の経費については、相手先企業に支払う人材派遣の負担金や起業人の受入に要する経費が対象となります。「受入」という表現のため、企業人の家賃などはここから支出することになると思います。もともと受入に要する経費は350万円が上限でしたが、令和元年度に560万円に引き上げられました。実際は、自治体が自治体が独自に上乗せする必要がありますが、

c)の事業に対する経費は、派遣された人材が発案・提案した事業に要する経費です。具体的には、事業に必要な資材費・交通費などはここから支出する必要があると思います。地域おこし協力隊の活動費に似ていますが、本制度ではbとcに活動費が振り分けられている点に特徴があると思います。

4.採用自治体の実績

令和2年度までは地域おこし企業人交流プログラムという名称で実施されていたことは先に述べた通りですが、制度そのものは平成26年から行われています。受入自治体数と企業人の推移は以下の通りです。

総務省HPより総務省HPより

また、令和2年度の活用事例としては以下の取組みが挙げられます。
・福岡県伊達市
派遣元:イオンリテール(株)
業務内容:オンラインで地場産品のPR

・岩手県釜石市
派遣元:(株)LIFULL
業務内容:空き家マッチング

・三重県いなべ市
派遣元:(株)ベネッセ
業務内容:教員へのICT研修

出典:令和2年度総務省地域力創造施策(PDFファイル,2021/10/04閲覧)

5.まとめ

総務省HPからは各自治体の募集状況を確認することが出来ます。9月時点で企業人を募集するのは73団体88人となっています。制度を実施する場合、1)実施要綱を作成、2)公募、3)業務委託契約締結、4)負担金を交付税対象の560万円から支出、5)企業人を受入、という流れになると思います。

令和2年度では98団体で148人の導入実績がありました。20代16人、30代43人、40代33人、50代48人、60代8人という年齢内訳です。20〜40代が全体の62%で、比較的若い世代に採用が集中しているといえます。

各自治体の公募内容を見ると、負担金の金額については年560万円のうちから負担金を捻出している例が見られます。たとえば契約金を300万円として、残りの260万円は企業人の受入に必要な家賃等に充当する、という使い方がされています。

これまで企業人の要件については「三大都市圏に本社機能を有する企業等については派遣時に三大都市圏に勤務することを要しない」という分かりにくい表現でした。令和3年度からは「在籍派遣」という文言が明記されました。

なお、地域おこし協力隊とは異なり、移住や住民票の異動について明確な規定はありません。都市圏から人材を期限付きで呼び込む、地域課題を解決する、という制度設計は地域おこし協力隊に近いものがありますが、関係人口の創出という点でより効果をもつと考えられます。協力隊は比較的地域に縛られることが多い制度ですが、フリーな立場で上手に地域課題を解決するために企業人制度を活用してもらいたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?