
医療・福祉における「優しい嘘」の本当の意味:その人らしさを尊重した支援とは
はじめに
近年、多様性が尊重される社会において、医療・福祉分野における「優しい嘘」の存在が改めて注目されています。しかし、「優しい嘘」は単なる欺瞞ではありません。それは、相手を尊重し、その人らしさを最大限に引き出すための、思いやりのコミュニケーションなのです。
ヨーロッパで実践「バスの来ないバス停」
とあるドイツの高齢者施設でのある対応が話題になっています。認知症の方が「家に帰りたい」と訴える中、バス停で待ち続けることです。それも、「バスが来ないバス停で」です。当然、バスは来ません。待っていると落ち着き、そのうち、なぜ「家に帰りたい」のか忘れてしまうそうです。そのあと、「バスが遅れているので、中でコーヒーでも飲みながら待ちましょう」と提案することで、患者さんの不安を和らげ、落ち着かせることができます。
この方法は、ドイツなどのヨーロッパ諸国では広く活用されており、その効果は実証されています。
その他の「優しい嘘」
例えば、介護費用を気にされて食事を控えてしまう方に対して、「介護保険で無料です」と声をかけることで、食事を促すことができます。また、介護負担が大きい家族がデイサービスの利用を渋る場合、「安くジムに通えるよ、風呂もついてるで」と伝え、デイサービスのメリットを強調することで、利用を検討してもらうことができた例もあるそうです。
「優しい嘘」は「その人らしさ」を尊重すること
大切なのは、相手を欺くのではなく、その人らしさを理解し、尊重することです。そのためには、相手のニーズや価値観をしっかりと把握し、それに合わせたコミュニケーションをとることが重要です。「どんな声かけをするか」「どう支援すると嬉しいか」は相手の「その人らしさ」を尊重するからこそできることだと思います。
リハビリテーション分野における「その人らしさ」とは
リハビリテーションはICFに基づき、目標を設定し、評価・治療をしていきます。活動面・参加面が目標になります。その上で重度の進行性疾患の場合は、
トイレで排泄する
口からご飯を食べる
声で話す
歩いて移動する
人と関わる
などといった、人間としての基本的な欲求を大事にされるケースが多いです。場合によっては家族や趣味などもあります。そのため、どうしたら改善するのか、維持することができるのか考え、提供していく必要があると思います。
だからこそ、
相手の「その人らしさ」を分析し、理解する
その人らしさを尊重した支援を提供する
相手のニーズや価値観に合わせたコミュニケーションをとる
ことが重要だと考えます。
ここで課題になるのは「その人らしさ」とは「人間らしさ」「性別」「性格」「人格」「文化」「自分の知っている自分・自分のしらない自分」など構成要素が多いことです。かなり難しく、完璧な正解はないが、理想に近づくことが大事なのかと思います。
その上で、みなさんが思う「その人らしさ」そして、「優しい嘘」はなんですか??