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日本経済の停滞は日米の社長の違いがもたらしている(ZATSUDANコラボ_堀江貴文&藤野英人①)

ビジネスのプロフェッショナルをお招きするFM番組「ビジプロ」は、今回、堀江貴文さんが運営する音声アプリZATSUDANとのコラボ企画。

レオス・キャピタルワークスの創業者、藤野英人さんをゲストに迎え、堀江さんと三戸政和の 3 人で、日本経済の低迷の理由や、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」への評価、今後の社会の見通しなどについて、縦横無尽に語り合いました。

番組内容を 4 回にわたりご紹介しますが、 1 回目は「日本経済の停滞は日米の社長の違いがもたらしている」という藤野さんのお話などをご紹介します。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの鼎談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。
音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

新しい挑戦を理解してもらうためには体験と共感が必要

(藤野)私は堀江さんとは 20 年来の付き合いで、三戸さんとお会いしたのは、堀江さんの事業であるロケットの 3 号機で一緒にスポンサーをしたときでした。

3 号機は日本の民間会社として初めて宇宙空間に到達したのですが、打ち上げで見たロケット雲には泣かされました。実は僕は、ロケット事業にはネガティブなイメージを持っていましたから、まさかそのロケットで泣くことになるとは思いませんでした。

最初、ロケットには、自分が関わりたいと思える共感がなかったんです。でもそのイメージは、1 号機の打ち上げを見て劇的に変わりました。

このときは、堀江さんから「ぜひ見てくれ、1 回見ると違うよ」と言われて、渋々ながらも見たのですが、実際に見たら、ロケットが打ち上がることのリアリティがすごかったです。

それに、1 号機は失敗に終わったのですが、関係者のみんなが、失敗に悲しみながらももう 1 回やるんだという雰囲気になっているのにも感動して、「僕もやらなきゃいけない」と思うようになりました。

2 号機の打ち上げでもエピソードがあります。打ち上げを待っていたとき、隣に子どもがいて、その子は、「僕も宇宙飛行士になって空を飛ぶんだ」と言いながら絵を書いていました。

しかし、2 号機は打ち上げ直後に爆発してしまい、その子は、わんわんと泣きました。その姿を見た僕は、「この子を泣かせたままにしてはいけない」と、3 号機も引き続き関わろうと思ったのです。

そんな体験から僕はロケットに関わり続けました。人を巻き込むには、どれだけ人に体験してもらえるかがやっぱり大事なんですね。

(堀江)ロケットは 2 号機の頃が一番大変でした。ロケットをやっているとインターネット黎明期のことを思い出します。新しいことへの理解のされなさは、その頃もいまも変わりません。

新しいことが理解されないのは株式市場も同じで、新しいものに高い値が付くと投機だとかバブルだとか言われます。ネットバブルのときは、「ネット企業にこんな株価がつくわけがない」とバカにする人もかなりいました。

でも株式市場というのは、割と頭の良い人が多く関わっていますし、だいたいそういうものを織り込んでいます。いまはさすがに、ネット企業の株価をバカにする人はいなくなりました。

投資の可否は、人のクオリティの見極めで判断している

(藤野)3 号機では新しくスポンサーに加わった SHIFT 丹下大さんと知り合いになりました。話してみると、丹下さんは、40 代の上場経営者としてはトップクラスに頭が良かった。「この人すごいな」と思わせる人でした。それで SHIFT に投資することも決めました(※)。

当時の SHIFT の時価総額は 600 億円くらいでしたが、いまは 3000~4000 億円くらいにまで成長しました。ひょっとしたら丹下さんは、10~20 年後には、NTT や野村総研を超える会社をつくっているかもしれません。

ロケットに参加していろいろなものを得ましたが、その中でも大きかったのが、丹下さんのような人とのつながりです。私は投資家として、丹下さんの会社やロケットなどに投資していますが、投資を決める目線として大切なのは、やはり、「誰がやるか」ということです。

それはアメリカのベンチャーキャピタルの本にも書いてあります。「二流のビジネスモデルで一流の経営者」と「一流のビジネスモデルで二流の経営者」、どっちに投資したら成功するかというと前者なんです。

二流のビジネスモデルでも一流の経営者に任せれば、時間の経過とともにビジネスモデルが一流になっていくのです。

やっぱり、人そのものを見ることが大事です。それは東証 1 部のような大きな会社も同様で、経営者次第で会社は変わります。小さい会社だったらなおさらでしょう。

(堀江)僕も結局は、「誰がやるか」だと思うようになりました。それがどんな事業でどうしたいかといった説明を聞くよりも、「お前がやるんだったら投資するよ」みたいな感じですね。

一流の経営者なら東芝を救えた

(堀江)東芝のような、昔はよかったけど、いまは傾いてしまったという大企業も、経営者が一流だったら、もっとうまくやれていたでしょう。

東芝のような会社にいるのは、きちんとした指示を与えればきちんと動いてくれる人材ばかりですから、経営者としてはすごく楽なんです。きちんとした指示があれば、会社はきちんと動きます。いい人材がたくさんいる会社を見ると、うらやましくなりますね。

僕は、何もないところから人を集めてクエストしますという世界ですから、最初はどうしようもない人材も入ってきます。「この人たち、うまく動いてくれないなあ」「なんか変な動きするなあ」と思いながらもコツコツやるしかありません。でも、会社がある程度大きくなれば優秀な人が入るようになりますし、上場すればたくさん入ってきます。

大企業の人材としては、しがらみみたいなものを断ち切るという、また別の能力が必要なこともありますが、それもリーダー次第です。優秀な人材はリーダーの言うことを聞きますから、リーダーが、「オレはこうしたいんだ」と押し切ればいいのです。

岸田首相のように人の言うことばかり聞くのではなく、小泉純一郎元首相のようにという ことです。小泉さんは何も聞きませんでしたからね。岸田さんという人は、たぶん、自分の考えを押しきれない人だとみんなに思われて、リーダーに担ぎ上げられたんだと思います。

アメリカと日本の社長の大きな相違点

(藤野)日本の社長、とくに大企業の社長さんの大きな問題点は、社長になることがゴールになっていることです。新卒からの出世レースに勝ち上がり、取締役になれば成功者で、親戚やご近所さんにほめそやされますし、社長にまで上り詰めれば、もうゴールだというのが日本人の感覚なのかもしれません。

ですから日本では、社長になった人に対して、「社長になってからがスタートだ」「これからどれだけ会社を大きくするかが大事ですよ」と言う人はあまりにいません。もう目標は達成したので、あとは 2 年から 5 年くらいの間、なんとか会社をつぶさずにやれればいいとなります。

つまり、社長になった後は消化試合になるのです。この 20~30 年間の日本が停滞しているのは、サラリーマン社長が消化試合を続けていたからだと僕は考えています。

でも僕や堀江さん、三戸さんのような人は違います。僕はゴールドマンサックスを辞めて社長になったのですが、「レオス・キャピタルワークス代表取締役社長」という最初の名刺なんて冗談みたいなものです。

立ち上げたばかりの会社なんて、売上もないし実績もないし、社員だってたいしていない、ただの赤字会社です。ですから僕たちにとっては、社長がスタートです。創業者とサラリーマン社長の差はそこにあります。

アメリカの仕組みのすごく良いところは、社長を決めるための指名委員会があり、社内から上がった人と外からの人材を比べて社長が選ばれるところです。

指名委員会で選ばれる社長は、社長として頑張ったら数百億円の利益が得られますが、ダメだったらクビという形で指名されますから、そこから頑張ろうとなります。

日本とアメリカの差は、社長のインセンティブの差だということです。ここを変えた瞬間に、日本も大きく変わると思います。

次回は「日本社会にはアメリカの占領政策がいまもなお影響を及ぼしている」というお話などをお伝えします。

※当インタビューは個別銘柄を推奨するものではありません。またファンドへの組入等を必ずしも約束するものでありません。

※株式会社 SHIFT は、東京都港区に本社を置くソフトウェアの品質保証およびテストを専門とする日本の企業。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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三戸政和(みとまさかず) 事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。
著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。Twitterのアカウントは、@310JPN