motoさんが事業売却の金額を公表したわけ(戸塚俊介さん③)
短大卒で年収240万円のホームセンター勤務から、転職を繰り返して年収を1000万円に乗せ、今年春には副業ビジネスを売却して10億円を手にした、「motoさん」こと戸塚俊介さんの話を紹介する3回目です。
前回は、motoさんが「月に5万稼げる副業のコツ」というお話をお伝えしましたが、今回は「事業売却の金額を公表したわけ」をお伝えしたいと思います。
この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組「ビジプロ」で放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」などの書籍や、個人M&A塾「サラリーマンが会社を買うサロン」で知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。
音声アプリVoicyでは、ノーカット版の「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。
信用力~本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力
僕の考える、「本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力」は、「信用力」と「営業力」と「俯瞰力」です。
信用力とは、クレジットカードと似ていて、その人にどれだけ信頼があるかというものです。クレジットカードは、借りたお金を期限内にきちんと返すことで信用力が増えていきます。逆に期限通りに返さないと、信用力は減ってしまいます。約束を守ることが大切です。
これはビジネスでも同じで、約束を守ることが信用を生みます。言われたことをきちんと約束通りにやることで、「あの人に任せておけば大丈夫」という信頼が積み上がっていきます。
その積み重ねが「あの人に任せてみよう」と、新しい仕事の機会に繋がります。日々の仕事の中で信頼残高を積み上げておくことが、後々の仕事においてはとても大切な要素になるのではないかと思います。
営業力~本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力
2つ目の力が営業力です。営業力は「お金を取ってくる力」です。
ビジネスの基本は「相手の役に立つこと」を考えることです。どんな課題があって、その課題にどのように貢献できるかを考える。ボランティアではないので、どこでマネタイズできるかもきちんと考えます。ここでお金を取ってくる力が試されます。
いま展開しているASPのビジネスでは、とくにこの営業力が発揮できています。これは個人でやっているビジネスで、僕自身がフロントに立ち、リクルートやマイナビ、ビズリーチといった大手に電話をして、「いまのビジネスフローのここに僕が入ることで、こんな価値が提供できます」と伝えることで、売上を作ってきました。営業力こそ、ビジネスには欠かせないと思います。
営業に必要なこと
営業で重要なのは、場数を踏むことに尽きます。リクルートではビルに入っているすべての会社に営業で当たっていくという「ビル倒し」という言葉がありますが、そのくらいの気概を持ってやらないと、当たるものも当たらないのが営業です。
数当たっていくうちにヒントも生まれますし、精度の高いところに凝縮もできます。量が質に転化していくみたいなことです。そのためにはやはり、総当たりが必要だと思います。
「ありがとう」が形になったものがお金
リクルートにいたときの上司が「お金というのは、『ありがとう』が形になったものだ」と言っていましたが、まさに僕もそう思っています。価値提供ができなければお金になりません。逆に、自分が相手に貢献すればするほど、お金は増えていきます。
自分の評価の定量的な数字の一つが年収であり、会社の売り上げなので、常に相手のために役立つことをすることが大切なのだと思います。
俯瞰力~本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力
本当は教えたくない3つの力の3つ目は、俯瞰力です。俯瞰力は、ビジネスの構造を知るために必要な力です。俯瞰力がないと、ビジネスフローの中のどこでお金を取ってくるかを考える営業力も発揮できません。
会社員をやっていると「部長にどう思われるのか」とか「自分がいまやっている仕事は評価されるのだろうか」と、自分のことだけに目が行きがちです。しかし、そうではなく、もっと引いた視点で考えることが大切です。「会社としてどこへ向かっているのか」「業界の中でうちの会社の立ち位置はどうか」「業界全体がどこに向かっているのか」「競合は何をしているのか」など、社内視点以外を考えることが大事です。さらには「日本ではどうだけど世界ではどうなっているのか」と、自分の目線をどんどん引き上げていくことで、自分の俯瞰力は高まっていくと思います。
俯瞰して分かることはたくさんあります。全体の状況を知って仕事をするのと、何も知らずに目の前の仕事だけやるのでは、成果を出すプロセスなどが全然違います。自分の頭で考えるためにも、この視点を持つことが大切です。
情報取りの大切さ
俯瞰をするためには、情報取りが大事になります。僕は会社や業界のキーマンを見つけ、そうした人たちと、無駄話も含めてコミュニケーションをすることで、いろいろな情報を仕入れていました。
社内の情報にはノイズも多いので、きちんと事実と照らし合わせて考えることが重要です。
失敗を回避するための入社前の準備
試用期間の3カ月で会社を辞めてしまったことがあります。そこはエスエムエスという会社で、転職して入社したのですが、すぐに辞めてしまったのです。
僕はずっと営業をしてきましたが、この会社では人事として採用されていました。人事という仕事に対して自分が思い描いていたことと、会社から求められる能力にギャップがあることを感じ、人事の仕事は向いていないと思うようになりました。
僕は自分の力で事業を伸ばし、それがダイレクトに売り上げとして見えるのが好きなんだと思います。人事では、あくまで裏方であるため、どれだけ売上に貢献したか分かりづらかったのです。
また僕自身、キャリアを重視する人間だったので、採用で面接をする度に相手のキャリアを考えてしまい、余計な心配をするようになりました。そうしたことも重なって、試用期間内で退職してしまったのです。
求められる能力や自分のできることをきちんと見極め、入社前にしっかりコミュニケーションすることが大切だということを学ぶことができました。
副業を売却した話
副業としてやっていた転職アンテナを売却するときは、いろいろな企業からオファーをいただきました。資本があり、きちんとした会社に売りたいと思ったので、上場企業に絞って交渉を進めていました。
M&Aではその中身を公表しないことも少なくありません。しかしこの売却は僕自身のキャリアとしてオープンなものにしたいという思いがあったため、金額などもオープンにできる会社を選びました。
まぁオープンにしたことで、大量の営業の電話やメールが来るようになりましたが。
ベタなこともやっています
スケジュールの管理は、スマホのGoogleカレンダーを使っています。自分が好きな仕事をしていることもあって、ほぼ毎日仕事をしています。隙間時間もあまりないです。移動中はTwitterをやっていますが、Twitterも仕事の一環です。
何か新しいことを考えたりするのも、誰かと話をする中でアイディアやヒントが生まれてくるので、ひとりでじっくり考える時間を作るよりは、人と会う時間を大切にしています。
オフィスを構えているので通勤はしています。オフィスで何をしているかというと、結構ベタなことが多いです。秘書やマネージャーなどがいないので、銀行や郵便局での手続きなどをやることもあります。通帳の記帳や郵便物を出すなどです。このような業務はホリエモンのような人は一番嫌うところだと思いますが、人を雇ってやってもらうほどのことでもないので、いまはまだ自分でやっています。
40歳で100億円を目指すビジネスキャリア
今後の野望は、ASPのビジネスとmoto株式会社を成長させることです。30代で10憶円を手にしたので、次は40代で100億円を目標に頑張りたいと思っています。大きなお金を作るには、これまでとは違う戦い方が必要です。個人としての戦いはもう終わりにして、次は組織として挑むつもりです。
副業禁止や税金などは稼いでから考えれば良い
「独立したい」「副業でビジネスを充実させたい」と考えている人は、自分がやりたいと思ったり、気になっていたりすることがあったら、とにかくやってみることが大切だと思います。やるかやらないか、それだけで結果は変わるものだと思います。
副業をやりたいと思ったら、まずはやってみましょう。儲けたら税金はどうなるのかとか、会社にバレないかなどは、お金を稼いでから考えましょう。まずはお金を生み出す行動を起こすことが大切です。
※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組「ビジプロ」の内容をまとめています。
三戸政和(みとまさかず)事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。
著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。Twitterのアカウントは、@310JPN。