テクスファームのフリーペーパー20年
最近、テクスファーム(TEXFARM INC. 新潟市)のフリーペーパーの歴史を話す機会が多くて、整理のためにもザッと書いてました。面白がってくれる人もいるかもしれないので記しておきます。
soda(ソーダ)
SNSが生まれる以前、私がまだ大学生だった1998年にフリーペーパー「SODA」は創刊されました。街の(≒新潟市の)有名人たちを介して遊び方や多くの職業を知るとともに、SODAというコミュニティが形成されていくのを近くで感じていました。当時は「街の有名人」という表現が使われていましたが、今で言うインフルエンサーですね。ラ・フォーレ原宿新潟のカリスマ店員、おしゃれ居酒屋のオーナー、平日は会社員のファッショニスタ、実にさまざま。田舎と言われる新潟でこんなに楽しくカッコよく暮らしている大人たちがいることは、発見であり喜びであり、東京ではなく新潟で大学生活を送っていた自分には、自信になりました。卒業して家電量販店へ就職し、働きながらSODA周辺の人たちに引き寄せられ、コント、DJ、コラム執筆と年じゅう楽しく眠たい3年半を過ごし、その後テクスファームへ転職しました。
新潟美少女図鑑
フリーペーパーSODAの1コーナーだった「新潟美少女図鑑」は賛同者を増やして独立した1冊の季刊紙となりました。かわいい子、おしゃれな子がたくさんいることを伝える美少女図鑑は瞬く間に街で話題となりました(創刊から「女の子のために作っている」メディアだということは大事なことなのでお伝えしておきます。)それと、クーポンの集客じゃなくてセンスの良さを表現したいカメラマンや美容師の作品発表の場となりました。美容学校に通っている学生の中には「就職するなら美少女図鑑に載っているサロン」と決めている子もいて、ブランディングやリクルーティングで差別化になっていたようです。(美少女図鑑の全国展開の話はまた今度)
ブライダルフリーペーパー「Huku:Huku(フクフク)」
美少女図鑑で活躍していたモデルたちもやがて卒業し、就職し、結婚し…大人になっていきます。すると「結婚することになりました!それで、結婚写真を撮ってもらえませんか」と事務所に連絡くれる子が3人…4人と増えてきました。その声に応えているうちに「Bridal Book(結婚写真集)」は生まれました。美少女図鑑編集部が二人のために撮って作る一冊。モデルだった子が結婚して家庭を持つ、記念すべき写真を撮らせてもらうなんて、お父さん涙が出そうな商品開発でした。それから新潟らしい結婚式ってなんだろう?と考えてフリーペーパー「Huku:Huku(フクフク)」を作り、ローカルな式場や地元のドレスショップ、新潟ゆかりの引き出物たちを紹介しました。熱心な読者の結婚式への想いは熱い行動力となって、結婚式場の古い商習慣さえも緩めました(※持ち込み禁止、つまり提携している業者以外の出入り禁止だった式場から、逆に取引しませんかとオファーをもらったりしました)それから「Baby Book」「Family Book」とラインナップが増えたのは自然な流れでした。
ライフスタイルマガジン「CRAS(クラス)」
さて、子供が生まれたら、次は?そう「家」です。
私の周りには全国的な大手ハウスメーカーより地元のセンス良いビルダーを探している声が多く、そういう趣旨の「CRAS(クラス)」という住宅/ライフスタイルフリーペーパーを創刊しました。フリーペーパーなので営業的に は広告売上が大事なわけですが、大手ハウスメーカーは掲載しないと決めていたので何度おいしい案件を断ったか数知れず…。編集部と話が合いそうなセンスよいビルダーを選んで声をかけていました。そういう、広告よりもコンセプトを大事にする編集方針やテクスファームのスタンスを気に入ってくれてか、大きい企業から大きな予算をもらってオリジナルフリーペーパーもいくつか作りました。あとから聞いたら企業の担当者がCRASのファンだったので何度も掲載を依頼したけど、何度も断られたために上司に社内プレゼンして1社で買い切りできる予算を工面してきたらしいです(それはすごい熱量!!)
まとめ
SODA、新潟美少女図鑑、Huku:Huku、CRASと、読者が年を重ねるとともに媒体が生まれ、読者と作り手は離れたりくっついたりしながらずっと伴走してきたような感覚があります。今では親子二世代の美少女図鑑モデルも登場するようになってました。よく冗談で「次は介護か墓石のフリーペーパー作るんでしょ?」って言われたりしますが、あながち間違ってないと思います…。今はまだバリバリ仕事をしている同世代が多くてしばらく後になりそうですが、読者も年を重ねて役職がついて偉くなった会社員や、経営者となった起業家、店舗オーナーになった方たちが、今度はテクスファームのクライアントとなって、事業を手伝って欲しいと経営やデザインの相談をくれるので、しばらくはそちらに力を注いでいます。
そんなわけでテクスファームは、メディアづくりを20年やりながら、SNSのない時代からコミュニティやファンはどう作られていくのか、どんな表現をすると共感を得られるのか、トライ&エラーしながら経験してきました。教科書にはあまり載ってない感覚的なニュアンスを汲んだ編集とデザインは得意なところだと思います。今はSNSがコミュニケーションの主流となっていますが根本のところは通じるところがありますね。
というところで、今回はテクスファームのメディア20年を紹介させていただきました。おわり。