編集後記 “宇佐蔵べにさん”
usabeniさんの活動は、実に多岐にわたる。アイドルであり、アーティストであり、DJであり、デザイナーであり、ショップオーナーであり。僕自身も好奇心旺盛で、若かりし頃は「何かに集中して極めなさい」と親や周りの人からよく言われるほどだったので、usabeniさんのようなスタイルには非常に共感が持てます。
日本では"守破離"という言葉があり、何かの道を極めることが美徳とされる風潮が強いと思います。そういう影響もあるのか、日本の小学校・中学校の教育はこれまで、職業について、例えば”作る仕事”と”売る仕事”のように局所的なものしか子供達に伝えて来れていないように思います。ですが、実際の社会においては、作ると売るの間にマーケティングのような職業が存在し、そのマーケティングの中にも、作るに近いブランディングのようなものから、売るに近い広告のようなものまでグラデーションのように複数の仕事が存在しています。
その作るや売るの間に位置する仕事は、何かを集中し極めるスキルで成立するものなのでしょうか?実際は作る人の気持ちも、売る人の気持ちも、もっと言えば買う人の気持ちもわからなければならないのだと思います。経営者という仕事もそうかも知れません。何か局所的な知見だけでやれる仕事ではないのです。
これからの時代は、そういうマルチな知見を活かした仕事の価値にもっとフォーカスし、子供達にも伝えていくべきだと思います。ある意味、マルチであることに集中し、マルチを極める価値を。もちろん、一つの道を極めることも非常に価値のあることです。ですが、人の能力や好奇心のあり方は多様なもので、そういう色々な個性があって社会は豊に回っているのだと思うのです。
usabeniさんのような世代の多様な活動が、これから社会に出る人たちの、一つの希望になることを願って。