編集後記 ”山﨑円城さん”
本日「理想論」にて、山﨑円城さんとの対談が公開されました。
こうして文章で円城さんの言葉を文章で読むと、ある意味で思想家のようにも感じますが、彼の音楽やタギングの作品に触れると、頭で考える余地も与えず、衝撃的に心に迫ってくる。まさに彼はアーティストなのだ。
彼の音楽を初めて聴いたのは、彼が率いるF.I.B JORNALが"紙よさらば”というタイトルのアルバムをリリースした頃だった。
この"紙よさらば”と言うアルバムは、僕なりの解釈では「紙幣との決別」。つまり、貨幣制度へのアンチテーゼである。その後、彼と近い距離で話しができるようになって聞いた話しだが、彼は同時期に詩集をリリースし、それを入手する方法は「等価交換」つまり物々交換にしたのだと。その結果、インドネシアから自作のノートを持って、詩集と交換しに来た人もいるのだと言う。
僕は、自身がやっている事業や創作の本質的な価値を知るために、この等価交換、もしくは投げ銭という方法を試みることは有効だと思っている。ある時、知人の飲食店で「投げ銭デー」を開催した。好きなだけ食べて飲んで、支払は任意の投げ銭にするのである。また別の時には知人のミュージシャンと投げ銭ライブを開催した。その中で気づいたことは、料理や音楽の質はもちろんであるが、その上で最終的な投げ銭を左右するのは、その中で、いかにその人の人間性に触れて、惚れたかということだった。
人は何かに見出す価値は、物質的なものを通じて得られる豊かな時間であって、利便性や経済合理性だけではないのではないだろうか。そして、そういう価値を得られるものこそが、真のオーセンティックになり得るのだと思う。