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編集後記 “飯高悠太さん”

僕がきちんとマーケティングというものと向き合い始めたのは2010年頃。それまでは自分で作った化粧品を地元で手売りしていたような状況で、2010年にフィールドを東京に移し、いわゆる広告代理店の方々からマーケティングのイロハを指南されました。

Windows95が発表されインターネットエクスプローラーが搭載されたことがインターネット民生化の起源とすれば、2010年はインターネットが普及し始めて15年目。WEBマーケティングの成長が目まぐるしく注目を浴びていて、CPA・KPI・LTVなどなど広告がデジタルになることで効果が定量的に数値化され、アルファベットの羅列によるマーケティング用語について行くのに必死でした。今考えれば、その当時はびっくりするほどWEB広告の費用対効果が良好で、ルールにしたがってやれば、誰でも事業が成功できるような錯覚をするほどでした。

そこに暗雲が漂い始めたのが2011年の東日本大震災以降。それまで2,000円くらいの広告費で1人のお客様に商品を買っていただけたのが、8,000円でも厳しいという状況に変わっていきました。その背景にあったものは、震災によって人との繋がりを大事にする風潮が強まり、WEB広告の信憑性を疑う人が増えたと見解を述べているマーケッターが多かったように思います。

その後、「メーカーはどうせ広告では良いことしか言わないし、信じられない。」そういう価値観の醸成から、信じられる誰かからの情報を求める人が増え、SNSマーケティングへとシフトしていきました。コロナ禍にピークを迎え、多くの人がSNSでモノを買いましたが、実際届いてみると思っていたモノと違うという体験を多くの人がしました。結果としてもはやSNSマーケティングに対する信頼も損なわれているのではないかと思います。

世の中の人は、メディアに対して情報の鮮度やユニークさを求めていると言われますが、それらの情報に信憑性がある前提であって、信憑性が失われたメディアからは、何も収集しようとは思いません。マーケティング=手法と捉えてしまう大きな落とし穴がここで、結局、世の中の人に対して、誠実でない手法は一過性で終わってしまうということです。まずは、きちんと必要とされる商品やサービスを開発して、それを中心に置き、実際のそれと乖離のない言葉で伝えるということでしかなく、マーケティング効果を高めるためには、その中心となる商品やサービスの質を高め、それが率直に伝わる方法を考えることなのだと思います。そこが誠実にできていれば、複雑な手法の議論にはなりませんし、例えば代理店の方々と、複雑な手法の議論になるのだとしたら、商品やサービスの質を見直してみることの方が、答えに対する近道のようにも思います。

モノで溢れる時代、もう余分なモノは必要ありませんし、スペック勝負も限界を迎えていると思います。世の中から評価を受けるのは、誠実な姿勢に尽きるのではないかと、飯高さんとの対談を終えて実感しました。

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