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1.はじめに


(1)この記事で書きたいこと


 これまで、下記の記事で、逮捕時に家族がすべきことや、弁護士報酬についてご説明しました。


 今回は、逮捕された方(被疑者)が直面する問題点について書きたいと思います。


(2)自分は逮捕されない!


 と思っている方がほとんどだと思いますが、

 ① 酔って、喧嘩をしてしまった
   (暴行、傷害)

 ② つい魔が差し、痴漢・盗撮をしてしまった
   (強制わいせつ、条例違反)

 ③ 違法ダウンロード(児童ポルノなど)、

 ④ 酔って運転してしまった(飲酒運転)。

など、(根っからの犯罪者だけではなく、)ごく普通の方も、結構逮捕されています。

 運転もせず、夜の街にも一切繰り出さず、お酒も飲まず、変なコンテンツもダウンロードせず、聖人のように生きている方であれば大丈夫かもしれませんが、普通はそんな人ばかりではありません。

 弁護士、検察官、裁判官、政治家でも(聖人ではありませんので)逮捕される方は、いますよね。私も(お酒を飲む以上は)万が一の覚悟はしています。


2.逮捕された方が直面する問題点


(1)学校、職場に行けない!


 先の記事でも書きましたが、突然、朝に警察官が来て逮捕ということもあります。その場合、学校や職場に行けなくなります。

 夜の繁華街での(暴行、傷害などの)トラブルで逮捕されたときも、同じく、翌日から学校や職場に行けなくなります。

 当たり前ですが、皆さんは想定していませんよね。まさか自分が…。

 そこで、逮捕された際、家族と連絡をとりたいが、そこで第一関門です。


(2)家族や職場と連絡がとりたいが…


 家にいるときに逮捕されたのであれば、居合わせた家族は、逮捕された事実や留め置かれる警察署は分かるでしょう。

 でもそうではない場合、家族は、あなたが逮捕されたことを知らない可能性があります。逮捕されたことは知っていても、どの警察署にいるか分からいということもあります。東京ですと、留置施設のある警察署が多いですからね。詳しくは前述の前回の記事もご参照ください。

 警察から、本人の意思を確認して、家族に連絡を取ってくれる場合もあり、その場合は家族が知ることになります。

 自分から家族や知人に連絡したくても、留置施設では自分でスマホが使えませんから、できません。


 そこで、弁護士の登場です。


 弁護士があなたのスマホの宅下げを(留置施設が預かっているものを弁護士が引き出して手元に持ってくること)し、パスワードなどを聞いて、あなたの代わりに操作して、家族の電話番号を確認します。

 しかし、その前提として中々困難があります。以下は、たとえばのこのような事例です。

 逮捕当日に、警察を通じて弁護士に来てもらうよう依頼し、夜に弁護士到着。

 家族に連絡して欲しいと頼むが、スマホに入っている電話番号を覚えていない

 携帯電話は警察の金庫に入っており、午後5時過ぎ以降は金庫を開けてもらえない。

 したがって、翌日以降にしか対応できなくなる。でも、翌日は1日中、検察庁へ行かなければならない(勾留請求)…。翌々日は裁判所へ1日中行かなければならない(勾留質問)…。

こんなことが頻繁に起こります。

 私の経験ですと、

① 近ければ、その日の夜に家族の居る家を直接訪問したり、

② SNSの情報を教えてもらって弁護士を通じてその人と連絡をとったり、

③ 家族の勤務先などをネットで調べて電話したり、

いろいろと応急処置で対応できることもありますが、時間的制約で対応できないことも多いですし、諸事情によりうまくいかないことも多いです。

 最近は、電話ではなく、(通話もできますし、)Line等のSNSのみで連絡を取っている方も多いのではないでしょうか。そのため、弁護士が電話でダイレクトに、家族に連絡が取れないということも増えてきました。

(3)対応策

 逮捕されたら、まずは、なるべく早く弁護士に来てもらうよう依頼することが大事です。翌日では遅いです。

 夜になると、前述のように、スマホが宅下げできなるからです。

 そうは言っても、知っている弁護士は、夜しか来れないこともありますし、当番弁護制度で弁護士を呼んでも、弁護士への連絡が午前中に来たのであればともかく、午後以降だと、どうしても面会に行くのが午後5時以降となってしまします。

 そこで、万が一に備え、連絡を取りたい家族の電話番号を1人か2人分、暗記しておきましょう(父、母、息子など)。これで、弁護士の初動対応がうまく行きます。

 更に、信頼できる弁護士に早く対応してもらえるよう、前の記事でも書きましたが、日頃から良い弁護士と知り合いになっておきましょう(特に、刑事弁護を扱う弁護士)。弁護士の名刺を財布に入れておきましょう。

 当番弁護でやってくる弁護士や、勾留後の国選弁護人は、残念ながら、あなたのために全力を尽くしてくれる理想的な弁護士とは限りません。

 また、前記の記事で書きましたが、家族が慌てて依頼した弁護士も、あなたのために全力を尽くしてくれる理想的な弁護士とは限りません。

 弁護士は優秀でまじめな方がほとんどですが、刑事弁護を長くやっている中で、上記のようにあまり動いてくれない弁護士がいることを被疑者・被告人から嫌ほど聞かされているので、現実はそうなんだなぁと知りました。

 逮捕される以前から(今から)、信頼できる弁護士を知っていれば、その人に頼めます。是非そうしてください。


 ①知人から弁護士を紹介してもらうなど、弁護士と顔なじみになっておく

②民事でも弁護士の法律相談を受けた際に、弁護士の名刺をもらっておく。  
 ちょっとしたトラブルでも、30分5500円とかで気軽に弁護士とは関われます。そこで、よい弁護士さんと知り合うことが良いです。
 更に、刑事弁護ができるか確認しておく(弁護士が全員刑事弁護ができるとは限りません。むしろ、やらない人の方が多いです。相当なメンタルいりますし、国選はもちろん、私選であっても、(私見ですが)必ずしもわりのいい分野ではありません。でも、知人の先生が刑事弁護を扱っていなくても、その先生から、万が一のときは、信頼できる弁護士を代わりに派遣してくれるかもしれません。)。


3.最後に


 万が一逮捕された場合、家族に連絡し、学校や職場に休む旨の連絡をしてもらう必要がありますが、逮捕されると、留置施設では自分でスマホも使えず、家族とさえ連絡が取れない、取るのが困難こともあります。

 そのために弁護士がいるので、なるべく早く(逮捕直後に)弁護士に依頼する必要があります。

 しかし、前述したように、弁護士からでも家族に連絡を取るのが困難な事態が生じます。対応策としては、以下の2点です。

 ①いざとなったら依頼できる、信頼できる弁護士の名刺を
  財布に入れておく。

 ②1人か2人の家族の電話番号を暗記しておく
  (別居の場合は、家族の住所も覚えておく)。

 私は、過去に逮捕・勾留・刑事裁判になってしまった方には、次の万が一に備えて、私の名刺を財布に入れておくようお勧めしています。

 実際に、警察から電話がかかってきたこともあります…。

 そのようなことは、できれば無い方がよいのですが…。


弁護士 小林 正和

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